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原罪  作者: 梨藍
Overture
49/54

終 節:おもうゆえに①

ゆずれない想い


胸に秘めて


突き進むは茨の道


もう、一緒には居られないと判っていた。

この場所に縛られるのは僕だけで充分だと、そう思う。


……だから……


ごめんね?


傷付けてしまって


もう一緒には居られないのなら

いっそ嫌われた方が良いと思った。


僕の事を“独り”ここに残すことに

あなたはきっと罪悪感を覚えるだろう


僕が消えることに

きっと涙するだろう


でも忘れてしまえば


思い出したとしても


僕を嫌いになってくれれば


マナ、あなたは泣かずに済むだろうか?



※※※※※※



それは、ある程度予測していた申し出だった。

羅候の頼みはこうだ。


―― マナを連れて、地上に逃げて欲しい


志杏椶は予め羅候から聞いていたのか、別段驚いてはいない。


「確かに、マナの中には“創造の力”がまだ残っているけど、僕が封印したから、問題ないよ。但し、代償として“声”と“一部の記憶”も一緒に封印されてしまったけれど。ああ、心配はいらない。淘汰のことは、ちゃんと覚えているから」


封印を施したことにも、理由がある。


「確かに、今現在狙われているのは“狩神”の方だわ。でも、本来の目的は違う。あくまでも“狩神捕獲”は手段に過ぎないの」


現在、理由は異なれど、東西両域において内密に、れぞれが“狩神”を捕獲しようと事を企てていた。


―― 東域は、天帝の与り知らぬところで

天帝補佐である焔摩天 焔祁が玉座を狙って“神の力”を欲している。


―― 西域では、理由は定かではないが

神聖王ラスティの指揮のもと、“精霊王”捜索隊が組まれて明日から動き出すという。


「東も西も、“狩神”の先にいる“精霊王”そして、その先にいる“神”を狙っているのでしょうね」


―― もしかしたら、もう既に動き出しているかもしれない


その言葉は、敢えて飲み込んだ。


「個人の手に羅候様の力が渡ってしまえば、この世は滅茶苦茶になってしまうわ」


羅候の……神の力が“欲”に囚われた者の手に渡ってしまえば、その先にある未来は“破滅”以外ほかにない。


「でもね、真武にしても、ラスティにしても“太陽の王”と呼ばれる精霊王の存在は知っていても、“月の女神”と呼ばれる僕……ユグドラシルの化身が実在することは知らない。僕は、ここから出られないし、彼らはここに来たことがないからね」


―― しかし……


薄々は感じているのだろう。


“世界樹”に隠された秘密を。

“世界樹”が、隠している存在を。


――“神”の存在に……


「だから、彼らにとっては“精霊王”の“記憶”が手に入れば良いんだ。特に、西域の王ラスティにとっては……」


ラスティは、“戦禍の種”となりかねない“神の力”を無に……世界に還すために、動いている。


そのことは重々承知していた。

それに羅候自身、そんなラスティに賛同すらしていた。


「だからといって、マナを犠牲には出来ない。力を失ったといっても、マナ本来の力である“精霊王”の力は健在。“僕”のことを覚えていても、身に危険が迫ることは判りきったことだから」


だから“創世の力”と共に“精霊王”としての力、そして“羅候”に関する“記憶”を封じたのだと、そう言った。


そこまで黙って聞いていたキリエが、思わず口を挟む。


「きみは、どうするんだ?まさか……」


「僕に“死”は存在しない。ユグドラシルに戻るだけ。もともと僕は、世界樹の一部だから」


そう言いながら見上げる先にあるのが、世界の柱である世界樹 ――……ユグドラシルだ。


「マナは、でもマナは、それを阻止したかった。その思いはどうなる?」


淘汰が今度は羅候に問う。


「僕とユグドラシルの同化はね、これから起こる“戦渦”を避けるためには……マナが幸せになる為には、必須事項なんだ。それに、早くても遅くても僕は“消える”定めにある。逆らうことは、赦されない」


「でもっ!」


言い募る淘汰を視線で制し、羅候は続ける。


「大地の嘆きはいづれ、ユグドラシルを枯らし、天の叱責はこの世を滅ぼす。僕はね、その叱責を受け止める為に……ユグドラシルの受ける痛みを代わりに受ける為に、存在するんだ」


―― それに……


「あなたたちのように、僕を信じてくれる人がいる限り、僕は消えはしないよ」


何故か、そう言って微笑む羅候は今にも消えそうで。淘汰、桔梗、キリエ、レヴィの四人は胸が痛んだ。


「そんなに悲しまないで。僕は、本当にうれしいんだ」


マナは、この世界に“絶望”していた。希望を捨ててしまっていた。


「でもね、淘汰……あなたが“共に生きること”を。そしてキリエ、桔梗、レヴィ……あなたたちが“信じる心”をマナに取り戻してくれた。ありがとう」


そう言って、羅候は深々と頭を下げた。

そんな羅候への対応に戸惑う四人に助け舟を出したのは、それまでじっと静観していた志杏椶だった。


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