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原罪  作者: 梨藍
Overture
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第六節:まじわるとき⑤

誓いを立てるは


誰が為のツルギ

「キリエ、あなたの考えは正しい。そう、僕がユグドラシルの化身。心配はいらないよ、今すぐに消えてしまうわけではないから。


レヴィ、“無心”にしようとしても僕の前では無意味だよ?怖がらないで……ああ、志杏椶に聞いてはいるんだね。僕は“全ての心と繋がっている”と」


そして、最後に志杏椶に視線を向ける。


「志杏椶、ありがとう」


その言葉に、志杏椶が笑顔で応える。


「こんなこと、造作もないことです」


何を感じたのか、言葉を発していないはずの淘汰と視線があった。


「マナは大丈夫。二日間は、きっと目覚めない。もしかしたら“声”も失ってしまったかもしれないけれど……本来あるべき“姿”に戻っただけ。」


その言葉に、淘汰は改めて腕の中に視線を落とした。

しかし、何がどう変化したのか皆目検討がつかなかった。


―― だが……


「淘汰!マナの背中!」


キリエが言うのに従って背中を見る。

すると、先ほどまでは確かにあった三対の羽が一対にになっているではないか。


「見た目の変化は、それくらいだよ。本題はそこじゃない、力だよ……」


「力?」


レヴィが聞き返すのに頷くと、羅候は言葉を続けた。


「僕が昔、預けた力。マナから“自由”を奪った力」


「まさか……」


何かに気が付いたのか、桔梗がはっとしたように言う。


「そうだよ」そう短くキリエに肯定の意を示してから、ポツリと呟く。


「“破壊の力”を僕に戻した。今マナにあるのは“創造の力”だけ。これだけは、マナに持っていてもらわないと」


そう、マナの本来の存在意義。


無意識のうちに羅候は世界を“造った”。


そんな自分の力を恐れ、分散させることで“造る”事を終わりにした。


創造の力

破壊の力

再生の力

浄化の力


この四つが揃わない限り“造られる”事はない。

羅候はその為に、自らの意思で“精霊王”を、自らの半身を創造した。

そして、自らの半身に“創造の力”を託した。


だが、ユグドラシルは違った。

この場から動けない自分達に代わって、世界に制裁を与えられるものを欲した。

ユグドラシルは“破壊の力”も半身へと託したのだ。


「僕は、そんなこと望んでいなかったはずなのに。でも、ユグドラシルは“僕自身”だから。心のどこかで、望んでいたんだろうね。でも、それの今日でお終い……マナにはもう、“裁く力”はない」


―― 僕が、本来望んでいた“カタチ”


「今日、マナと淘汰がここに訪れ、僕と“出会うこと”は判っていた。でも、キリエ、レヴィそして桔梗。あなたたちがここに“今日”来てくれる確立は、限りなく0に近かった」


その言葉に、4人は互いを見合った。


「キリエとレヴィを連れてきて欲しいと、志杏椶に頼んだのは僕だよ。でも、それもあなたたちの選択次第では、無意味なものだった。そう……」



―― あなたたちが、“マナの存在”をラスティに言わない


―― 言わなくても、“淘汰”に知らせるべく東域に行く



「この二つの条件が満たされなければ、“ここに来る”事はなかった。あなたたちの“心”を信じてよかった」




ねえ、マナ……


“人を想う心”の


何と温かいことだろうね?


絆の、何と強いことだろう




今は、淘汰の腕の中で深い眠りについているマナに視線を向ける。

そして順繰りに顔をみながら、羅候は一言彼らに言った。


「今日、ここで交わった“定め”に“未来”を託したい」


返事はなく、代わりに力強く頷く彼らにマナの言葉が蘇った。



『羅候!彼がこの前話した、淘汰とその友人の桔梗。2人とも信頼できるんだ!ボクたちの味方だよ!』



そうだね。彼らになら預けられそうだよ



――…… マナ……



そう、羅候がマナに応えたことに気付いたものは、残念ながらこの場にはいなかった。




<第六節:了>

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