第五節:いたみのなかで⑥
追憶の果てに
揺らめく残滓
“名前がなくては、不便ですよ?”
そういって、“羅候”“マナ”とそれぞれに名前を付けてくれた代弁者。彼女以外、誰にも“声”が届く事はなかった。
―― でも……
「彼には届いた。カナン、貴女の息子が、どうやら僕らを助けてくれるみたいだよ」
そう呟きながら、空を仰ぎ見た。
「ヒトとヒトの出会いは、“定め”られたこと。“定め”は変えられない」
これから先にある未来は“運命”は多分の危険性を孕んでいた。だが、その中のたった一握り垣間見える“希望”を、羅候はまだ信じていた。
「“運命”を動かす“定め”が、今日ここで交わる」
予言めいたその言葉を聴くものは、だがしかし一人もいなかった。
「僕が消える事もまた、運命。でも、僕が消えない運命を辿ってしまったら、マナ、キミは……」
絶対に、避けねばならない“運命”がある。運命を回避する事こそ、運命を知る者の定め。
「ユグドラシル。僕の望みはそんな事ではない。僕は、回避してみせる。」
たった一人の世界を守るために
その罪は、この身をもって贖おう
それは、自分自身への宣戦布告だった。
<第五節:了>
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