第五節:いたみのなかで①
追憶の果てに
揺らめく残滓
最近、毎夜のように夢を見る。愛しい彼の人と同じ姿形をしているのに、最近別人だという事を知った。最初は、“会いたい”という想いの見せる幻影かとも思ったが、どうも違うらしい。
―― ―誰なんだろう?なあ、どうして泣いているんだ?
泣いているのは、マナなのか?いや、違う、マナとは違う。それに、涙を流している訳ではないのに、泣いているように見えた。
別人と判った今でも、それでも見間違うほど、そっくりな容姿をしたその人は、いつも同じ事を訴え続けていた。
……マナを、どうか僕の大事な半身を守って……
深い悲しみから、救って
教えてあげて欲しい
まだ、このセカイには“希望”があることを
孤独ではないことを
そして、マナを捕らえて放さない呪縛から開放して
その結果が、
例え、僕を忘れてしまっても構いやしない
僕を憎む事になっても、良いから
消えてしまう僕に、これ以上心を奪われないように
これ以上、心を悼めないように
声が遠ざかるのに比例して、周りを濃霧が覆っていく。
「待ってくれ!」
マナが、危ない……狙われている……
マナを助けて
「それ、一体どういう!?……っ……」
淘汰は、必死で追いかけようと右手を伸ばす。届いたと思った瞬間、眩しい光に遮られ見慣れた天井と虚しくも空を掴む拳が視界を支配する。
最近の日課になりつつ、淘汰の朝の風景だ。決まって、朝目覚める時に見る夢。ただの“夢”だと思い込もうとすればするほど、言い知れない不安が胸を過ぎった。
「一体、誰なんだ?どういう事なんだよ」
その問いに対する答えを、淘汰は思わぬ形で知ることとなる。




