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ダブスタ上等!騎士団長殺しの生存戦略〜異世界で父親を殺した俺は何故か国王からも反乱軍からも頼られてます〜  作者: 麦チョコ★@新作『ダブスタ上等!騎士団長殺しの生存戦略』投稿中
王都
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第4話 白猫って俺は呼んでいる


 でもやっぱ、弟に言われたぐらいで親父のいないこの好機を逃すわけにはいかないでしょ。


 それがいったい何の好機なのかはさておいて。俺は兎にも角にも目立たないようにこの訓練場をそっと抜け出すのです。


 いつもの如くサボりです。


 言い訳なんか弟に忘れ物を届けに行くとかなんとか言っておけばいいんですよ。またか……なんて思われたって気にしません。俺は本気で騎士を目指しているわけじゃないんですから。


 さて。そうと決まれば、暑苦しい騎士団の隊服なんかさっさと着替えちゃって、そして途中どっかの屋台で昼飯(ひるめし)でも買って行こう。そいつを土産に持って行ってやれば……あの爺さんも喜んでいつもより多く魔法を使ってくれるに違いない。そりゃ、出血大サービスってやつですよ。


 

 騎士団詰め所のある東門から西門までは、まぁ結構な距離がある。王城の裏を回るか、正門のある表を回るかで少し距離は変わって来るんだけど、今回は爺さんに手土産を持っていくから繁華な正門前を通ることにした。


「でもその前に……そう言えば、こいつがいたんだっけか……。」


 今さらだけど、訓練をサボるにしても遠慮や気配りはそれなりに必要だよ。やっぱ詰め所を出て行くにしても流石に正面玄関はまずい。ってことで、俺はあまり目立たないように、こっそりと建物の裏口から抜け出したんだけど。


 まるで、そんな俺を待ち伏せしていたかのように、一人の少女が俺に向って駆け寄ってきた。


 それは物売りの女の子。背丈はちっちゃくて、お世辞にも裕福とは言えない様な身なりをしているけれど、いつからか俺はこの物売りの少女から良く物を買うようになっていた。


「お兄さん。今日も買ってくださいな。」


 いつも彼女はどこからか俺を見つけて駆け寄ってくる。


「なんだよ。なんで俺が裏口から出てくるって分かったんだ?」


「だって、弟さんが正面から出ていくのが見えたから。じゃぁ今日はサボりの日だなと思ったんです。」


「チェッ。そんな事もお見通しかよ。」


「そりゃそうですよ。お得意様の行動をしっかりと把握しておくのは商売の基本なんですから。」


 なんて――ちょっと得意気な彼女。


 ボサボサの灰色い髪がその顔を隠して表情はよくわからないけど、この娘はいつも明るい声で話す。もしかしたらポンポンと物を買ってやる俺をカモだと思って愛想を振りまいているつもりなのかも知れないけれど……。


 正直、この娘とのちょっとした会話が俺は嫌いでは無い。いやどちらかといえば好きなのだ。


 だから、俺が()()かどうかなんてそんな事はどうだって良いんだよ。なんせ俺は騎士団長の息子。小金(こがね)なら腐る程たくさん持ってるんだから。


「で、今日は何を売ってくれるの?」


 そう言って俺は懐から財布を取り出す。


 結局、売り物が何かわからないうちから財布を開けてしまう俺は、この娘に対してはたぶんそうとうのお人好しなのだろう。よくよく考えれば俺はこの娘の商売を断ったことが無い。


 だって――


 すごく不思議なんだけど、いつもこの娘はちょうど俺が欲しいと思っている物を売りに来るんだ。


 その証拠に今回もまた――


「今日は()かしたサツマ芋です。一個銅貨3枚。今ならまだ()かしたてなんでホカホカですよ。」


 そう言って少女が見せてくれたのは、言葉通りせいろに入った蒸かしたてのサツマイモ。


 ちょうどいい。そう言えば、あの爺さんが嬉しそうに芋を頬張っていたのを見たことがある。


「じゃぁ銅貨9枚ね。」


 俺は少女の手に一枚ずつ数える様に銅貨を置いた。


「じゃぁ三つですね。まいどあり~。」


 そう言いながら少女は俺が手渡した硬貨を懐へしまって……。それからふと気がついた様に言葉を続けた。


「――って、お兄さん一人で三つも食べきれるんですか? けっこう大きいんで一つでもけっこうボリューム有ると思いますけど?」


「大丈夫だよ。一つは俺が食べるし、もう一つはお土産にする。そしてもう一つは……君の分。」


 なんて言うのは、少しお節介だったろうか。


「君って……私の分?」


「そう。だってもうそろそろ昼飯時だろ。だったら君も一緒に食べようよ。俺のおごりだ。」


「えっ? いいんですか私も。私は人の驕りは断らないタイプなんです。でも……一応言っておきますけど芋1個くらいじゃ私に恩は売れませんよ。」


 チェッ。素直に喜んでくれりゃいいのにね。この娘は時々会話に憎まれ口を挟んでくるんだ。


 でも、俺がそんな連れないことを言う少女に――


「わかってるって。どうせ君は俺にこの芋を売ったら表通りに出るんだろ。だったら一緒に行こうよ。俺もそっち側に用事があるんだ、一人で芋を食べながら歩くってのもあれだからさ、君も付き合ってくれよ。」


 そういった時。


 ボサボサの前髪の隙間から、やっぱり嬉しそうな少女の顔がチラリとだけ見えた。


 時々見え隠れする鼻や口元。もしかしてこの娘……身なりさえ整えれば結構な美少女じゃないのか?なんて思わないことも無いけれど……。

 この娘にはこの娘の生活というものがある。どうしてこんなみすぼらしい格好をしているのかなんて、そんな事を知ったところで俺がどうしてあげれるでも無い。


 だってさ、俺はまだこの少女の名前すら知らないのだ。


 でもそれでいい。この少女には俺がつけてやったあだ名があるのだ。


 白猫って俺は呼んでいる。――だって、何処からともなく俺に近寄ってくる感じとか、小さくて可愛らしい姿とか、見た目によらずすばしっこい所とか……。あと、カールがかった白っぽい髪の毛とか……。本当にそれっぽいんだもの。


 でも、もともとこの土地の言葉では『白猫』と書いてパイマオと読むらしい。だから最近俺は彼女の事をそのままパイマオとか、ちょっと略してパイとか呼んでいる。


 そして目の前の白猫は、彼女の身体にしては少し大きめの荷物を背中に背負い、どうやら店を移動する準備が整ったようだ。


 そして俺は少女に声をかける。


「じゃぁ行こうか。パイマオ」


 その言葉に反応して、少女は飛び跳ねるように先に歩き始めた俺の後を追いかける。


 そんな姿が、俺にはやっぱり白猫の様に見えた。



ここまで読んでくれてありがとうございます。


まずは女の子ってことで。新キャラ白猫(パイマオ)です。


これから先、この白猫が魅力的なキャラクターに育って行きますように。


頑張りますw

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