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ダブスタ上等!騎士団長殺しの生存戦略〜異世界で父親を殺した俺は何故か国王からも反乱軍からも頼られてます〜  作者: 麦チョコ★@新作『ダブスタ上等!騎士団長殺しの生存戦略』投稿中
騎士団長殺し
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第14話 どうしても笑いが止まらない

 だが、俺が親父の顔を確認したということは、親父もまた俺の顔を確認したということだ。


 ならば、ここは義理とはいえ父親と息子の浅からぬ縁でお目こぼしを……なんて期待にすがる事が無理筋だということは俺にも分かっている。


 何故ならこの父親は、夫を亡くし傷心の渦中にいた俺の母親をかどわかし、俺を子供として引き取った時から――ただの一度たりとも俺と目を合わせたことが無い。


 だが、どうした事だろう。


 俺は今――頭上からまるで俺を見下すように見つめる義父の冷ややかな眼差しに射すくめられている。


 俺は初めて見る義父の瞳の奥の……その冷淡な殺意を無意識のうちに感じ取っていた。だからこそその瞬間。俺は形だけの親子という関係――言わば無理筋に思わず縋ってしまっていたのだ。


「お、親父……。」


 思わず俺の口から出た言葉は――自らも予想しなかった、そんな言葉だった。

 

 しかし――


 俺がその『親父』と言う言葉を口にしたほんの一瞬。鉄仮面と評されるほど何があっても顔色一つ変えないこの男の顔が……醜く歪んだ。


「はて、誰が親父だって?」


 目の前の男のその言葉には、抑えきれない怒気が込められていた。


 そう言えば、この男は俺から『父親』と呼ばれることを昔から嫌っていた。咄嗟にそれを思い出した俺は慌てて言葉改める。


「す、すみません……団長……。」


 今度は、顔色を伺いながらゆっくりと……そう言い直したものの――。男の静かな怒気に押されてそれ以上言葉が出ない。俺の身体はこの時既に、王国第一の剣士の発する覇気に飲み込まれていたのだ。


 だが、それでも俺は、寝そべったままの無様な状態からなんとか上体だけは持ち上げることは出来た。とは言っても寝そべった状態から少し起き上がっただけ。今の体勢がみっともない事にさほど変わりはない。


 そしてそんな俺の背後には、案の定尻もちをついたままの姿で固まっているワイズがいた。


 もちろん今のこの状況で騎士団とは無関係のワイズは何に怯える必要もない。しかし――この気の弱いお坊ちゃんが、今の緊迫した状況に肝を冷やさない分けが無いだろう。


 俺は体を持ち上げるついでに、そんなワイズに軽く視線だけを移す。しかしそれはほんの一瞬の出来事。瞬きをするほどの時間だったはずだ。


 だが、俺が視線を再び目の前の男に戻したその時。


 俺の目に映ったものは――



 冷酷無比な鉄仮面でもなく、殺意を押し殺した青い瞳でもなく……ただひたすら鋭利に研ぎ澄まされた金属の尖端であった。




「ま、まじかよ……。」


 脳内で発したつもりの声が、思わず口から漏れていた。


 だって、あり得ない。たかだか見習い隊員が訓練をサボっただけなのだ。いくら規律の厳しい騎士団だったとしても、見習いに抜身の剣を突きつけるなど度が過ぎている。


 何故なら、この王国の騎士が剣を抜く時――それは、もう後戻りの許されない状況なのである。


 騎士団員にとって剣を抜くと言うことは、その剣を向けた相手を殺すと言う意識を示すことと同意であり、そしてその意志を示したが最後――誇り高き騎士にとって失敗は絶対に許される事では無い。



 突きつけられた剣を眉間に受けて、思わず俺は尻もちをついた様な格好のままで数歩後ずさった。


 このままでは殺される……状況からそんな事実だけが理解出来た。

 

 青ざめた俺の顔を見て、目の前の男の顔が再び醜く歪む――。いや、違う。これは歪むというよりもむしろ笑っているのだ。俺は今まで一度たりともこの男が笑った場面を見たことがない。この男には笑顔を作る為の表情筋がまるっきり欠落しているのだ。

 だからこそ、彼の笑った顔はいびつでゆがんだ表情にしかならない。


 「お前にとっては残念な話だが、この場所で私に出会ってしまったことが不運であったな。私はお前を殺さなくてはならなくなった――。しかしどうした事だ……俺は今、お前を殺せると思うとどうしても笑いが止まらないのだよ。お前の……その赤い目、そして黒い髪。俺はお前の顔を観るたびに俺からアリエスを奪っていったあの薄汚いこそ泥の事を思い出す。そして、その度にお前を殺したい衝動を必死に抑えていたのだ。だがしかし――それももうお終いだ……。もう我慢をする必要は無いのだからな!」


 男は、高ぶる感情を抑えようともせず、上ずった声でそう語ると、まるでしゃっくりでもするかの様な不快な笑い声を上げた。


 引きつった笑顔に、引きつった笑い声。


 あまりにも異様なそれを目の当たりにして、俺はまた数歩後ろへと後ずさった。

  

ここまで読んでいただきありがとうございます。


せっかくのシーンなのに少し間を開けてしまって申し訳ありません。


少々仕事が立て込んでいたというのもありますが、ストーリーは出来上がっているのに、見せ方がなかなかまとまらなくて少し筆が止まっていました。ごめんなさい。


もしかしたら書きたいシーンほど筆が止まりやすいのか?


などとつまらない言い訳はさておいて、再び一日おきの更新を目指して頑張りますw

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