第11話 ちょっとした探検みたいだね
それは、あまりにも突然の呼び出しだった。
もし今日、南西の風が吹かなければこの手紙はいったいどうなっていたのだろう。
使いの子供が手紙を持って待っていたことといい、それはまるで今日俺達がこの場所に来ることをあらかじめ知っていた様な……そんな事を感じさせる奇妙な手紙だった。
それに――もう一つ……。
「立夏だなんて珍しいな……。」
俺は、手紙の最後のその言葉が、妙に引っかかった。
「えっ、どういう事?」
ワイズが首を傾げた。
「いや……。普通さ、こういう時って何月何日って日にちを指定するものだろ。例えば約束をする時に夏至とか冬至とかそう言うのってあんまりない気がするんだよな。」
「たしかにそう言われるとそうかも。もし今日を指定したいんだったら普通に4月9日って書けば良いもんね。ぼくもそういうのはあまり聞いたことが無い。」
「だろ? なのになんで立夏なのかな〜って。単純にそう思っただけ。」
それは、ただ単にロウの爺さんが年寄り臭くてそう言う言葉を使いがちなだけだったり。それが大人のマナーに則った手紙を書く際の高等テクだったり。そんな、特に気にするこなど無い些細なことなのかも知れない。
でも……もしかして何かあえて立夏と書かなければならない他の理由があったとしたら……。
しかしまぁ、いずれにせよ。
結局はワイズの言葉通りなのである。
「それはロウさんに直接合ってから聞けば良いんじゃない? 立夏にて待つって言ってるんだもの。もちろんエル君も行くでしょ? この地図の場所。」
つまりはそういう事。そんなこと、考えるより聞くが易い。もとより俺もそのつもりなのだ。
「そうだな。せっかく爺さんが用意してくれた『遊び』だしな。それに今日は夜までいけ好かない親父は帰ってこない。時間は充分にある。」
「じゃぁ決まりだね。」
言うやいなや、嬉々とした表情でワイズが椅子から立ち上がった。
「あぁ。決まりだ。」
日はまだ頂上までは登りきっていない。昼飯にはまだ少しぐらい時間がある。そして地図に示された場所は、王都の西側。俺達のいる西門からさほど遠い場所では無い。
席を立った俺達は、そのまま門からまっすぐに西へと伸びる大通りを進んで行く。目印は大通りの北側に見える黒い門。
おそらくその門は、このエーデル国の王都が円夏の都であった時代の遺構であろう。地図には黒く巨大な木製の楼門が描かれていた。
「なんだか、ちょっとした探検みたいだね。」
はずんだ声。ワイズは少し浮かれていた。
それは、まるでかくれんぼ。それとも宝探し。
爺さん――確かにこの『遊び』なかなかに楽しそうな遊びじゃないか。
ここまで読んでくれてありがとうございます。1000文字……今日は少し短めでした。 ちょっとゆっくり過ぎますかねw
それと、少し遅くなりましたが応援やブックマークをくださったかた。ありがとうございます。
ご期待に添えるように頑張ります