親ガチャ失敗の僕は多重人格の束東さんでガチャをする
朝、マンションの一室で目が覚める。
ここには同居人がもう一人住んでいる。
同性の相手ではない。
異性の、それも同じ15歳だ。
なるほど、彼女は君の親戚なのだろう。
だから一緒に住むのを許してもらったんだなと。
そう思う人が大半のはずだ。
しかし、それはハズレだ。
僕は親戚じゃない少女と一緒に暮らしている。
ならば同棲相手かと問われれば、僕は少しだけ当たりだと返すだろう。
その少女は、僕の彼女の『日』もあれば、彼女じゃない『日』もある。
だから寝室も分けられている。
今日が彼女の『日』でも、明日は彼女じゃない『日』かもしれないのだ。
そうしたら、朝起きて彼女じゃない相手と寝てしまうことになって、浮気したことになってしまう。
しかし、同じ人間なのに、日によって彼女の『日』と彼女じゃない『日』が別れているなんておかしいと思うのが普通。
そう、彼女は普通じゃない。
つまり、一日置きに人格を変える多重人格者なのである。
僕の好きな彼女は、そんな彼女の中の一人でしかない。
残りの六人は僕を嫌っている人格だ。
大アタリは7分の1。
小さなアタリも、小さなハズレもなくて、残りの7分の6は大ハズレ。
まるで絶望だらけの中に一つだけ希望の残されたパンドラの箱だ。
つまり、今日も今日とて、僕が寝室から出る時に思うことは一つ。
今日の束東さんの髪色が『赤』でありますように、と。
束東さんは、ウィッグの髪色で人格を主張する。
だから、今日は『赤の彼女』だといいなと僕は思うわけだ。
親ガチャ失敗の僕を救ってくれた彼女を。
さて、扉の先にいる彼女は果たして何色の束東さんなのだろうか――。
今日も僕は現実でガチャをする。
親ガチャ失敗の僕は、多重人格の束東さんでガチャをする。