Stage1 闇堕ち勇者、最凶の遊び
一話目、グロ注意です!
真っ赤な空。
焦土と化した街。
辺り一面を埋め尽くす死体。
濃密な血煙の中で、少年はただ、立っていた。
「剣と魔法の世界って感じだったから、それなりに強そうなのもいると思ったんだけどなぁ。・・・期待ハズレ。何なのこのヌルゲー。雑魚しかいないじゃん。・・・魔王が一番マトモだったとか、狂ってんなこの世界。」
つまんねぇとぼやきながら、大きな欠伸を一つ。
「さてと。楽しい復讐タイム!・・・あのクズ国王も生かしときゃよかったわ。どんな顔するのか見ものだっただろうに。」
少年が徐に両手を広げる。
すると、その動きに合わせるように大量の死体が宙に浮いた。
「山登りでもやるか。文字通り材料は山ほどあるわけだし。」
楽しそうな声に反して、少年の目には何の感情も浮かんではいない。
中に浮かんだ死体は、少年から十メートルほど離れたところで積み上げられてゆく。
空を覆う死体の群れは、日光を遮り地面に影を落としている。
遥か上空を運ばれていく骸は、鳥の群れのようにも見えた。
「やっぱ数が多いと時間かかるなぁ。・・・どれくらい殺したんだっけ?何億?いや、何兆?・・・暇だわ。」
ひらめいた、とばかりに手を打った少年は右手を銃の形にする。
そして、その手を死体に向けて構えた。
「バン」
少年の指先から射出された濃密な魔力が、音も無く空に消える。
一見すると米粒ほどの影にしか見えない死体。
しかし少年の良すぎる目には、小さな魔力の弾丸が幼い少女の額を貫き爆散させる様子がはっきりと見えていた。
「ヘッドショット成功!ガキの頭だけ狙ってみるか。」
左手も銃の形にすると、今度は両手で撃ち始めた。
時間差で降り注ぐ血液や脳の欠片、頭蓋骨の破片を浴びながら、少年は一心不乱に撃ち続けた。
「雪菜、見てるか?俺とお前を騙したクズも、お前を襲ったクズも、お前を殺したクズも、見て見ぬ振りをしたクズも、全部俺が殺したぞ。ごめんな。もっと早く魔王を倒していればお前を守ってやれたのに。こんなクソみたいな世界も、こんな世界を創って俺らを拉致した神も、全部お兄ちゃんがぶっ壊してやるからな。」
少年は撃って、撃って、撃ち続けた。
幼い子供の頭部に命中する度に、中身が飛び散って周囲の死体を汚染する。
血の雨が降り注ぐ中、少年はケタケタと嗤っていた。
数時間後、少年の目の前には巨大な山が完成していた。
骸の山は、世界中のほぼすべての人間を使っていることもあって、富士山と見紛うほどの大きさだ。
勿論その重量は途轍もないもので、半分より下の死体は薄く潰れている。
少年は、敢えて顔を踏みながら登山を開始した。
少女の顔。老人の顔。若い女の顔。少年の顔。騎士の顔。王女の顔。
少年が踏みつける顔は、どれも恐怖や苦痛に歪んでいる。
途中跳ねて死体の骨を折りながら、淡々と骸の山を登っていく。
山頂付近で発見した国王の死体を山から引っこ抜き、少年は遂に山頂に辿り着いた。
「さすがにここまで登ると空気も澄んでいるな。・・・どうだ国王。テメェの国はこの世界ごと、俺が地獄に変えてやったぞ。いい歳したおっさんのくせに、俺の妹に手を出したお前が悪い。死んだくらいじゃ許さねぇから。」
そう言うと、少年は国王の爪を剥がし始めた。
メリメリブチブチと音を立てて剥がれる爪を見ながら、少年の唇は薄っすらと弧を描いている。
生きていればさぞ良い声で鳴いてくれただろうと思うと、少しだけ後悔した。
「折角だから、国王に餌を食わせてやろう。」
少年は山頂の死体をいくつか蹴落として、ちょっとした空間を用意した。
そこに国王の死体を横たえると、どこからともなく現れた日本刀で腹を切り開く。
縦に深く入れられた切込みは腸をも両断していたようで、溢れ出た排泄物と肉の腐臭に顔を顰めた。
「臭い。・・・まあいい。国王、まずはアンタの爪な。」
少年は国王の腹部に毟り取った爪を投入した。
それから両腕を肩から切断して、再びねじ込む。
腕はさすがにつっかえてしまったので、内臓を潰しながら押し込んだ。
続いて足を切り落とす。
足は股関節と膝と足首で三分割した。
どうしてもふくらはぎの部分と足首から下が一個ずつ余ってしまうので、足首から下は断面を下にして口から押し込み、ふくらはぎの部分は細い方から肛門にねじ込んだ。
「でーきた!・・・国王、自分の味はいかがです?益々ふくよかになりましたね。まるでダルマみたいだ。・・・最期の晩餐、楽しんでくださいね。」
餌やりを終えた少年は、死体の山を軽やかに下りていく。
ついでに王女の死体を回収した。
王女は金髪碧眼の美少女であったが、少年にとってそんなものは無価値だった。
まして王女が雪菜の殺害に関与していたともなれば、少年にとっては蛇蝎のごとき存在でしかない。
王女の頭部を力任せに引き千切ると、少年は後片付けと称して骸の山に向かって投擲した。
並外れた膂力で投擲された王女の頭は、高速回転しながら骸の山を吹き飛ばして破壊した。
「チッ。上三分の一しか削れなかった。流石に王女の頭じゃ軽すぎたか。」
今度は残っている王女の胴体から手足を引き千切り、立て続けに投げる。
ドゴッと鈍い音を立てながら、今度こそ死体の山は四散した。
「よっしゃ成功!」
余ってしまった王女の胴体を右足でグチャグチャと踏み潰し、少年は無邪気に笑う。
しかしぴったり十秒間笑うと、少年はストンと表情を消し去った。
「はぁ飽きた。もういいや・・・いっそ隕石でも落としてみるか?・・・俺がこんなことやってるって知ったら、雪菜は泣いて怒るかな?」
少年の脳裏には、彼の妹の顔が浮かんでいた。
頬を膨らませて怒っている顔だ。
元気で底抜けに明るくて、どこまでも他人に優しかった雪菜は、もう少年の記憶の中にしかいない。
もう「カイ兄」と呼ばれることはないのだと思うと、少年は寂しさを覚える。
「雪菜、この世界に隕石を降らせたら俺も会いに行くから、もう少し待っていてくれ。」
そう言って少年が人差し指を立てた時、ソレは現れた。
読んでいただき、ありがとうございます(`・ω・´)ゞ