月夜の晩に。
仕事の帰り道、何気なく見上げた空にはポッカリと満月が浮かんでいた。
「あぁ…今月はストロベリームーンだったっけ。」
誰もいない夜道で誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
どうしてだろう?君の顔が浮かんだ。
あの優しい笑顔と優しい声。
明るくまんまるな月を見ていたら、胸がキュッとなって今すぐ君に会いたくなった。
思わず取り出したスマホで写真を撮る。
きっと君は疲れていて空なんか見上げてないだろう…。
そっと写真とメッセージを送った。
「さぁて。帰って私もゆっくりしますか。」
家に向かって一歩を踏み出したその時、ポケットがブルッと震えた。
暗い夜道に私の顔だけがほんのりと浮かび上がる。
『凄い偶然!たまたま俺も見てて写真撮ったよ。』
そこには同じまんまるで明るい月の写真。
なんだか離れてるのに繋がってる実感が湧いてふとニヤけた自分に気づく。…ハッと周りを見回して誰もいない事を確認してホッと息を吐いた。
(たぶんとんでもなくニヤけた顔をしていた気がする。…危なかった。)
などと考えながら君への返事を書く。
『今夜は月が綺麗ですね。笑』
まぁ、よくある定番のやつだ。でもきっと君は意味を知らないだろう。けれど、それでいいのだ。私からの短いラブレターは私だけが答えを知っている。
すぐに返ってきた返事は…
『そうだね。今夜は月が綺麗です。笑』だった。
クスッと笑い、どこからともなく湧いてきた温かさに足取りが軽くなるのを感じた。
「やっぱり私、君が好きだなぁ。」
再び声になるかならないかわからない程の小さな声で呟き、暗い夜道を歩き出した。