歩
時々、道に迷いそうになる。どこを目指しているのか、自分はどうあるべきなのか、分からなくなる。
それはすごく心細くて、僕はいつもむなしい気持ちになる。
そこでいつも、一筋の光が僕の目の前に現れる。だから僕はほっとする。再び自身の目指す道を思い出し、歩き出す。
でも、光はいつも見えている訳ではない。気付くと見えなくなってしまうことが多い。僕は再び道に迷いそうになる。
そして、心もとなく歩いているうち、再び光が現れる。
「つまり、その繰り返しな訳ね」
彼女はそう言って微笑んだ。僕は頷く。
「正直、光が消える度、不安になるのに疲れてしまった。もう歩くこと自体やめてしまいたいと思っている」
「どうして?」
彼女はその丸い目を僕に向けた。
「どうしても何も、光に振り回されるのはもうごめんなんだよ」
「振り回されてなんかないじゃない」
彼女は、なぜそんなことなど聞くのだろうといった顔をする。
「光はどんな時もいつもあなたの前に現れるんでしょ?あなたを振り回してなんてないわ。むしろ、見守ってくれているんじゃない?」
僕は思わず言葉を失う。そんな僕に彼女は微笑んだ。
「何を不安になっているの?何も心配せずに歩き続ければいいじゃない」
そうか。
僕は気付いた。
この考えの違いが、夢を叶えた彼女と僕との差なのだ、と。