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世界最強になりたくて  作者: ちも( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
9/9

新たな地へ

「っとまあこれがこの世界の魔王の話よ。ほんとかはわかんないけど。」




「喰われた?それは一体どういうことだ?続きはないのか?」




「うーん。わからないんだよね。私小さいころにお父様とお母様から聞いて気をつけなさいって言われてただけだから…それに私あそこから出てないし…。」




イヴはこれ以上の力にはなれないからか少し申し訳なさそうな顔をしてしまう。




「いや、大丈夫だ。それだけ知れただけでも十分助かるよ。」




「それならよかった。」




イヴは力になれたのならよかったとにこっと笑う。




「それはそうとあなたたちすぐに出ていくの?」




「そうですね、明日にでも出ようかと。そこまで急ぐ必要はないんですがこの街に居座る理由もないので…」




「そう…。じゃあ旅の準備もしなくちゃね!っといってもこの街でそろえるくらいなら向こうでそろえたほうがましだと思うけど。」




「メインさんはここ以外の場所にも詳しいんですか?それと何でこの街はこんなに寂れているのでしょう…。中央都市なのに。」




この街に来た時から思っている疑問をぶつけてみる。




「中央都市だからよ。」




いったいどういう意味なのだろう。イヴもわからないようで二人して頭にハテナマークを浮かべているとメインさんが話を続ける。




「ユグドラシルが存在する中央都市っていうのはね、結界のようなものが張られていてモンスターたちは入ってくることができないのよ。」




(なるほどだから街がボロボロでもモンスターは襲ってこないのか。)




今までこんな状態の世界にいたことがなかったナルにとっては初めて知る事実だった。


それと同時になぜメインのような女性がこの街にいるのかも納得した。




「これでも10年も前までは賑わっていたのよ。でもモンスター達が強くなりすぎてね。数多くの冒険者や勇者たちが逃げ込むようになったの。でもそこからは…ね。」




当時の状況を思い出しているのか悲しそうな顔になる。




メインの話を要約するとこうだ。




モンスター達から逃げるようにこの街に訪れた勇達は始めは普通に宿などを利用していたらしい。しかしそれがいつしか「もう俺は戦わない!」と言うものや「俺たちがこの街を守ってやってる。」などと言い街の設備を使いあさる者そして最後は人間同士の争いにまで発展してしまったそうだ。




「まあ結局ボロボロになったこの街では生活すらできなくなって皆出ていったってことさ。」




「その出ていった人達はどうなって…」




「死んだやつもいれば権力者や力ある勇者たちに頼って街を開拓したりいろいろさ。」




「そうですか…。」と話を聞き終えるとイヴが横で「死んだ人たち…。」と申し訳なさそうな顔をしてぼそっと呟いた。


おそらく自分が殺してしまった人たちのことを思っているのだろう。自己防衛とはいえ人の命を奪ってしまっているのだから。




「気にすることじゃないよ。向こうは殺す気で来てたんだろう?だったらお互い様さ。それに後にも先にもモンスターや魔族に殺されてしまうものが大勢さ。」




と、意外にもメインさんがそういってイヴを慰める。




(死んでいった人たちの中には自分のお客さんもいたと思うのに。やっぱりメインさんは優しい人なんだな。)




「そうだよ。イヴだって同じ人間なんだ。命を狙われるほうが間違ってるさ。


それに俺たちはこれからそういった人達を無くすために旅に出るんだ。そこで恩返ししていこう。」




「うん。ありがとう。ナル。メインさん。」




「さぁ!暗い話はここまでにして晩御飯にしようじゃないか。」



メインさんはそう言うと飲んでいた紅茶を片付け台所に消えていく。そういえば何も食べていなかったから腹ペコだ。



「ぐぅ~~~」



っと横からかわいい音がするとイヴがお腹を押さえて顔を真っ赤にしていた。



「あっはっは!すぐ用意するから待っててね。」



メインさんが笑いながらそう言うとイヴは恥ずかしそうに「すみません…」と呟いた。


まあイヴも今日はずっとご飯を食べていないはずがお腹もすくだろう。



そのあとは3人仲良くご飯を囲んだ。メインさんが作ってくれたいろんな種類の料理を食べるたびにイヴが「おいしい!食べたことない!」なんて言うものだから食卓はすごくにぎやかだった。メインさんは終始笑ってた。


ご飯を食べ終わるとよほど疲れていたのか「眠い。部屋で寝てる…」というと奥のほうでドアの閉まる音が聞こえた。



「で、どうなの。意中の女の子を手に入れた気分は。」



メインさんがニヤニヤとしながら聞いてくる。


 

「変なこと言わないでください。僕は助けただけですよ…」


「ふーん。まあいいけど。それでこの世界でほかに聞きたいことは?

とはいってもこの街周辺のこと以外はあまり詳しくないけどね。」


「いや…大丈夫です。あとは旅しながら調べていきます。ありがとうございます。

それじゃ僕もそろそろ休みます。」


「はいよ。あ、最後に一つ。ここから先気を付けなよあの子のこと。」


「気を付ける?」


「そ、この街はこんな感じだからまだいいけど。次の街ではあの子のことを知ってる人が多いからね。

あの子は゛氷の魔女″…だからね。」


「そう…ですね。」


「ちゃんと守ってあげなよー?」


ニヤニヤしながらメインさんに言われる。


「当たり前ですよ!」


「あっはっは!まああまり気を張りすぎないほうがいいよ。それじゃおやすみ。」


俺はメインさんに「おやすみなさい」と返事し自室にもどった。


(メインさんはああいっていたけど対策を考えないと。街中で急に狙われたんじゃたまったもんじゃないかな…)


「ふあぁ…眠い。明日考えよう。」





----------------------



「よし。行くか。」


準備を終えエントランスに向かうとメインさんと同じく準備を済ませたであろうイヴがいた。


「いろいろとお世話になりました。メインさん。」


「いいのよ。お客様の力になるのが宿屋の主人の務めってものよ。

 イヴちゃんも。この世界はたくさんの危険があるわ。気を付けてね。」


「はい!メインさん…ありがとうございました。また会いに来ます。」


「うん!いつでも帰ってきなさい!」


メインさんに別れの挨拶を告げ俺たちは次の街『ガルテン』を目指し始めた。


「メインさん…いい人だったなぁ。」


「そうだな。最初は変な人かと思ったけど。」


「なんだかママを思い出しちゃった。」


イヴはどこか懐かしそうな悲しい顔をしていた。


「そういえば…お母さんとお父さんって…。」


言いづらいのか沈黙が続く。


(しまった!話しにくい内容だったか!)


「あ…」


「もう…死んじゃったんだ。私がちっちゃいころ」


「話さなくてもいい」そう言おうとしたところでイヴが話始める。


「殺されちゃったんだ…人間に…。パパとママ。森の中で…3人で…暮らしてたのに…。幸せだったのに…。私を守って…。」


思い出したくない記憶なのだろう。彼女は歯を食いしばりながら震えていた。

その姿を見て俺は軽々しく聞いてしまったことを後悔した。

それよりまさかとは思ってたけどやっぱり魔物ではなく人間に…。

あれだけ人間に対しての嫌悪感があったんだ…。

俺は震える彼女の手をそっと握った。



「え…」


「ごめん…思い出したくないこと思い出させた。」


「ううん…大丈夫。」


俺は興味本位で聞いてしまったことを後悔した。

彼女にとっては忘れもしない壮絶なことだっただろうに。


「それにね…」


不意に彼女はこちらを向くと笑顔でつぶやいた。





「守ってくれるんでしょ?これからはナルが!」





彼女の言葉に俺は何があっても彼女だけは守ろうと誓った。


























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