Catch96 都心にサファリ?
少しは和む話題を、と思いまして。
剣道や柔道など、日本武道の“聖地”となっている「日本武道館」。収容人数1万4千人を越える我が国有数の大型施設ですが、構想段階ではその3倍以上の規模を予定しておりました。
今でも武道館の通路に胸像が飾ってありますけど、武道館を作ったのは正力松太郎という人です。帝国憲法時代には悪名高い特別高等警察のお偉いさんとして朝鮮人や共産主義者を弾圧しまくり、敗戦後は読売新聞社の社長や野球チームの「巨人」のオーナーとして活躍した方です。あ、衆議院議員という肩書きもありました。大臣だか長官にもなっていた記憶があります。
この人が敗戦でしょぼくれていた日本に誇りを取り戻そうとぶち上げたのが「世界一のスタジアムを造ろう」、日本武道館建設計画でした。当初は収容人数50000人くらい(←!?)を希望していたらしいのですが諸般の事情で現在の様な物になりました。
正力氏は前述した様にロクでもない経歴を持っている一方で、こうしたある意味で「豪快」とも言える事業を残している中々興味深い人物です。
新宿区を南北に走る明治通り沿いに『日清本社前』という都営バスのバス停があります。以前は『新田裏』という変な名前でした。
「新田」も「旧田」も見渡す限り田んぼなど1枚も見当たらないビル街ですが、日清本社の裏側に不思議な一画がありました。今は再開発でおしゃれなビルのミッドタウンとなってしまいましたけど、ゴルフ練習場と研修施設の複合体みたいな広大な「何なのかよく分からない」敷地です。
一応看板があって『日テレゴルフガーデン』と書いてあったのですが、やはり「日テレグループの何か」らしい事が察せられるくらい。これも正力氏の「飛んでも構想」の跡だと知ったのは、幾つか建っていた建物が更地になり現在の『イーストサイドスクエア』になり始めた頃でした。
この一帯に正力氏はなんと『サファリパーク』を造ろうとしていたのです。
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに『透明人間』という作品がありますけど、「戸山ヶ原」という今は無い地名が出て来ます。帝国憲法時代は陸軍の演習場でした。
旧軍が解体され空き地になっていたこの辺り一帯を買い占めて「世界唯一の都心にサファリパークがある首都」にしようとした訳です。ゴルフガーデンも用地の一部だったのでしょう。
勿論「安全上の問題」を考慮した占領軍の許可が下りず、構想は露と消えました。その後、日本テレビが高さ500メートルを越えるテレビ塔『正力タワー』を建設しようとしましたが、正力氏の死去でそれも無くなりゴルフ場を経て現在の様になったという事です。
実現していれば中々ぶっ飛んだ街になっていたと思います。