Catch94 全国の皆さん!
年末進行です。
『絶滅危惧動作』というイラスト混じりの本が話題になっています。
スマートフォンの普及で「一眼レフカメラのシャッターを押す動作」や「腕時計を見る仕草」などの必要が無くなり、スマホ登場以後の世代には何をしている動作なのか分かりにくくなっている行動を集めて解説した物のようです。
言葉も仕草も時代や技術、価値観の変化に依ってどんどん変わって行くものです。災害なども人々の暮らしを変化させる要因かも知れません。
関東大震災の後で「この際だから」という言い回しが流行したそうです。家財が破損したり家が全半壊したりで元の生活を取り戻すために已む無く大きな出費を強いられた人たちが、普段出来なかった「少しお高い金遣い」をしたのだとか。
家を再建するにも「この際だから」と最新のデザインを採用したり、前よりも少しいい物を建てる。破損した家具を買い直すにも「この際だから」でちょっとだけ頑張ってハイカラな高級品にする。
大正の大震災後に建てられた建築にモダンな作品が多いのは、かなりな人が少しだけ無理が出来る経済状況にあった事も影響していたのでしょう。
同じ頃流行った表現に「全国の皆さん」があります。丁度いまNHKで放送している朝の連続ドラマ『カムカムエブリバディ』で描かれた様に、この時期にラジオ放送が始まっています。
それまで活字などで不特定多数に呼び掛ける「文字」「文章」はあっても、耳で直に聞く言葉で「1人の人間が日本中に向けて呼び掛ける」などあり得ない事でした。「全国の皆さん」というフレーズが聞いた人に衝撃を与えたのは当然でしょう。
「ラジオ」という新しい技術が、世の中の“進歩”や“文明化”を実感させたのだと思います。
毎年『流行語大賞』や『今年の字』が選考され、受賞した言葉だけでなく候補も含めて世相を示す材料になっています。ですが、「この際だから」「全国の皆さん」の様に時代の進歩や画期を写した“傑作”は余りお目にかからない様に思います。
色々な物が高度になりすぎて感動が無くなっているのかも知れません。
携帯電話の普及は画期だったと思いますが、更に凄いスマートフォンの登場は「それの進化」に過ぎないと感じています。罰当たりな話ですね。
新幹線という長距離高速鉄道の開通・営業は時代が「より良い方へ進歩している」と感じる出来事でしたが、今さらリニア新幹線が営業を実現しても最早感動はそれほど生まれない様に思えます。本当に罰当たりですね。
次回お話ししようと思いますが、私たちは「下り坂の時代」に生きているのです。
いくら技術が「進歩」しても、使う人間が進化しなければ時代はより良い方へなど進みません。