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Catch86 劣化報道

マスメディアと政治には自浄能力を発揮して頂きたい物です。

 SMAPの解散がニュースになり大騒ぎになっていた2016年初頭、週末によくある「一週間を振り返るニュースランキング」を見ていて「ん? ん?」と思ったことがありました。


 ランキングのトップは当然ながらSMAPです。中村梅之助さんの訃報や首都圏の大雪、預託金の不正融資が焦げ付いた件などが続きます。


 ネットニュースなどをチェックしていたのですが、大事なニュースが抜け落ちていました。


 参議院予算委員会で日本共産党の小池晃議員が追及した「消費税増税による家計への負担増の政府試算」問題に触れた物が見当たらなかったのです。


 財務省が出した試算のつじつまが合わないので、どういう数的根拠なのかを尋ねた所、「6割くらいのデータを元に計算したのでズレた“のだろう”」というふざけた答えが国会の官僚答弁で返ってきました。


 これだけでも驚愕モノですが、さらにキチンと計算するとこれくらいになる、と質問を重ねたら財務大臣(麻生元首相)が当時の政府が説明していた金額のほぼ倍の負担予想額を出してきたのです。


 唖然とするしかありません。税金を上げるにあたって国民に「1世帯あたりこれくらいの負担増ですよ」と説明していた額が実際の試算の半分だったのですから。いざ増税してみたら「やっぱり2倍くらいになっちゃった」で済みますか。


 この驚愕事態を報じない「報道」とは何なのか、真剣に考えさせられたものです。


 いいんですよ、雪で大混乱している首都圏だの大人気のタレントグループが解散しそうだのも、間違いなく世間の関心事なのですから。


 しかし本当にこんな“私たちが危険にさらされる可能性”、“私たちが不利益を蒙る可能性”を知らせてくれない「劣化した報道」が“当たり前”になっているのであれば、電波もネットも活字すら、メディアと名乗る全ての報道の「存在意義」そのものが問われる事になってくるでしょう。


 ランキングニュースではもう一つ、沖縄で反辺野古基地を訴えて玉城知事が初当選した時もひどい物でした。


 ランクでは2位に上がっていたのに、番組は1位のニュースの後で不自然に沖縄県知事選の話題を飛ばして接近中の大型台風(ランク3位)について話し始めました。


 それ以来私はこの番組を見るのをやめました。



 私たちが暮らす現代日本は「民主主義」を政治の基本に置いています。18歳以上の有権者が選挙で「国権の最高機関」である国会の議員を選ぶことで国政をコントロールする間接民主制の国です。


 今年行われた東京都議会選挙でも選挙期間中に無免許運転の事故を起こした事を隠して当選し、度重なる辞職勧告を無視して「議員」として居座り続けている方がおりますが、自由報道と民主主義は不可分の関係にあります。


 それはそうでしょう、不正確な情報をもとに判断すれば、有権者は本来「議員としては不適格」なはずの候補者を当選させ、任期の間は大きな権限を預けることになってしまうのですから。


 「自由で公正な報道」「正確な事実」を欠いては健全な民主主義、健全な政治は実現しません。


 ジャーナリストの本多勝一さんが朝日新聞記者時代にとある大企業が国定公園内にリゾート開発を違法に進めている事を突き止め記事にしようとしたところ、朝日の社内から圧力がかかりルポを掲載できなかったという経験を、退社後に記していました。


 理由は問題の大企業が「系列のテレビ局で人気の番組のスポンサーだったから」だそうです。


 どちらかといえば保守系権力に批判的とされる朝日新聞ですら「資本の論理」にからめとられ、社会に起こる不都合を世に明らかにする作業を邪魔されていることが窺えます。


 今まさに衆議院選挙が行われています。


 元NHK記者でジャーナリストの池上彰さんが仕切る『開票速報番組』は毎回大きな選挙で放送されるたびに高い評価を得ています。


 しかし、各党の政策、その利点と欠点について、或いは各党の主張や歴史的経緯について、「投票後に」事細かく解説してもらっても有権者としては遅い訳で。衆議院選挙であれば「この解説を覚えていて“4年後の参考”にしてくださいね」というつもりなのでしょうか。


 今回は小栗旬さんや二階堂ふみさんなどが政府広報とは別の、投票を呼び掛ける動画を作成・配信して話題になりました。日本の芸能界は長らくタレントの政治発信をタブーとして抑え込んでいましたが、「ナニナニ党を応援しよう」ではなく「投票に行こう」と呼びかけることさえタブーとして来たのはやり過ぎです。


 芸能事務所は本多さんの例と同様、「金の力」で不都合な事態を抑え込んできたのですが、ここに来てようやく幾らかマトモな動きが許されるようになっているように感じます。


 報道の劣化はすぐには解消するとは思えませんが、マスメディアの自浄と並行して私たち自身がトンデモ候補に権限を預けて後悔しないよう見分を広め(自分と同じ価値観の記事ばかり心地よく読んでいるようではダメ。トランプ支持者みたいになってしまいます)見識を高めながら投票に行くことで、“前よりはマシ”な政権を選ぶことが出来るようになるのだと思っています。

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