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Catch76 王たちの地

インドは広い。

 ソヴェート=ロシア(ソビエト社会主義共和国連邦、略称「ソ連」)が崩壊してから中央アジア地域にボコボコ出現した「◯◯スタン」という国名。


 崩壊前から隣接地域には既に「アフガニスタン」「パキスタン」と名乗る国がありました。


 ソヴェート=ロシアの崩壊で新たに「カザフスタン」「キルギスタン」「トルクメニスタン」「タジキスタン」「ウズベキスタン」が加わった事になります。


 これでも十分◯◯スタンだらけなのですが、世界地図をよ~く見ると、国にはなっていない何とかスタンはまだ有ります。


 パキスタンとイランの南部に「バルチスタン」という地域名らしい物があります。聖なる大河・ガンジス河が流れるインド最大の平野は「ヒンドスタン平原」、更にパキスタン国境沿いの内陸部には「ラージャスターン」と州名らしき物が書かれています。


 ラージャスターン。


 以前『Catch41 天竺の影』で触れましたが、ラージャとはサンスクリットやヒンディー語で「王」を意味します。


 かつてこれらの地域はペルシャ語が国際語として通用していたペルシア文化圏で、「◯◯スタン」はペルシャ語の「◯◯の地」という意味でした。隣のインド文化圏とはお互いに勢力の伸長を繰り返しており、長い歴史の中でインドの北西部がペルシアの影響下にあった時期も幾度かあったので、地域名の何とかスタンもインド国内に残っている訳ですね。


 特にペルシアがイスラムの征服を受けて「東方イスラム世界」と呼ばれるペルシア文明とイスラムが融合した独自の文化圏を形成した後、イスラムは中央アジアのモンゴル族やトルコ族にも浸透し、それら遊牧騎馬民族のイスラム政権がインド北西部を恒常的に支配する時代が続きました。


 最大の物は世界遺産「タージ=マハル」を作ったムガール帝国でしょう。ムガールのルーツは「トルキスタン」(パミール高原の東西にまたがる地域)にモンゴルの子孫チャガタイ族の建てたティム-ル帝国で、ムガールとはモンゴルの事です。この帝国は最盛期にはインド大陸の3分の2を領土にしていました。


 この最後のインド=イスラム王朝よりも遥か昔に、同じく中央アジアからインド北西部へ侵入した騎馬民族の末裔たちがインド西部に広く住んでいるラージプート族です。


 ラージプート族は都市と周辺を領土として「藩王国」と呼ばれる小さな国を作っていました。それら小国家群の王様たちがいわゆる「マハラジャ」で、即ち「王たちの地」=「ラージャスターン」という訳です。


 インド全体がイギリスの植民地になった後も、これらの藩王国はイギリスとそれぞれ条約を結んで一応独立国として扱われていました。インドが独立を果たした際にマハラジャの国々もインド共和国へ合流して行きますが、程なく新政府の無能ぶりに激怒する事になります。


 ムスリムが多い地域とヒンドゥー教徒が多く住む地域に分かれて独立した為に、それぞれの地域で少数派になったムスリムとヒンドゥー教徒が難民として大移動を始めました。


 ムスリムが多い地域が今のパキスタンとバングラデシュです。当時は一つの国でバングラデシュは「東パキスタン」でした。


 ラージャスターンはインド中央部に住んでいたムスリムが西パキスタンへ逃れる経路に当たり、難民の流入に治安が急速に悪化しました。更にインド政府が行政の引き継ぎ中に東西パキスタンと戦争を始めた為に、ラージャスターン各地の社会機構は完全に麻痺してしまいました。


 学校や病院、鉄道、電信、水道、産業などだけでなく、治安が悪化している中で警察業務までがストップするに至って、それまで為政者として藩王国の運営を(おこな)ってきたマハラジャたちが思わぬ“反撃”に出ます。


 「王たちの地」で元王様たちがやってのけた前代未聞の「解決法」は次回お話しする事にします。

マハラジャたちは王子時代にイギリスに留学したりしていて、結構インテリ層なんですよね。さて、何を考え付き何を実行したのでしょう。

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