Catch68 オプティミズム
オプティミズムとは楽天主義と訳せる考え方の事で、ペシミズム(悲観主義)の対義語です。人類が「社会」と呼べるくらい、ある程度の複雑な生活様式を持ち始めた古代ギリシア以来、常に人間の思考方法の一角を占めてきました。
古代ギリシアでは神話にオリンポスに繋がる神々と巨人族の間に戦われた争いが出てきますが、その登場人物の中に日本でもマンガ『アリオン』などに取り上げられて比較的知名度の高いプロメテウスとエピメテウスという巨人族の兄弟がいます。プロメテウスは神の禁令を破って太陽の火を盗み、人間に火を与えた者として知られています。
この兄弟の名前が実に象徴的で、プロメテウスは「先に考える者」、エピメテウスが「後で考える者」という意味なのです。ものすごく雑把な表現ですがプロメテウスは悲観主義、エピメテウスは楽天主義と言えるでしょう。
『Catch43夢』でご紹介した「ベーリング海峡ダム」だの「地球から夜を無くそう計画」だのが載っていた子ども向け科学雑誌には“コンピュータ-の発達で将来は戦争が無くなる”という凄い未来像も出ていました。「将来はコンピュータ-の計算能力がとても伸びて、どこかで戦争が起こりそうになっても“ジャンケンポン”の様にどちらが勝つか戦う前に分かってしまうので戦争にならないでしょう」というオプティミズムに溢れた見解です。
SF作品などを見ると、たまにこうした楽天的な未来像にお目にかかる事があります。私はこういうオプティミズムはまんざら嫌いではありません。良くない事ばかりを前もって心配してしまい、「こうなるかも知れない」「ああなったらどうしよう」とウジウジ考えあぐねているよりも、「こうなったらいいなぁ」「あんな事が出来る様になるかも知れない」とワクワク想像している未来像の方が普通は楽しい物です。
「普通」にはあたらない為政者や政治家・革命家などは楽観と悲観のバランスが大事になってきますけれども。
歴史を見ると成功した革命家の多くは「オプティミストだった」と伝わっている人物が多い様な気がします。辛亥革命の孫文しかり、アイルランド独立運動の英雄マイケル=コリンズしかり。チェ=ゲバラやホ-=チミン、ネルソン=マンデラなども楽天家だったような気配がします。
考えて見れば革命家というのは「今の世の中の在り方に疑問を抱いた人」な訳で、その点では常識はずれの“ペシミスト”なのです。しかし普通の人が「(変えた方がいいのだろうけれど)変わる訳がない」「変えられない」と諦めてしまう所を、「こうすれば上手くいくかも知れない」「こんなやり方はどうだろう」と挑戦し続けるあたりは桁外れの“オプティミスト”でもあります。
コンピュータ-の能力がとてつもなく上がった現在でも、戦争は無くなるどころか益々悲惨な事になっていますが、「どうにかして無くす事は出来ないか」「必ず時代は変えられる」と思い、動いている人たちが大勢います。
世の中をわずかずつではあっても進めて来たのは「変わる訳がない」「無理だ」と諦めてしまう圧倒的多数の人ではなく、健気なくらい人間を信じ続けている楽天家たちなのだろうと思うのです。