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Catch61 パーペンの頃

惨事が始まってからでは修正する為に物凄いエネルギーが必要になります。そして大体修正はできずに悲惨な事になる訳です。私は怠け者なので、始まらない様に用心する方が性に合っている様です。

 パーペンは全っ然知られていませんが、ヒトラーが政権に就く寸前にドイツの首相を務めていた人です。元々政治家でもなんでもなく、ただ貴族出身の見た目がいいだけの社交界で評判のオッサンでした。


 当時のドイツ政界は、資本家サイドは保守系中間政党を押し、労働者・サラリーマンは社会党系(いくつかに分裂していました)を応援するという状態にあったのですが、その他に“右の過激派”ナチスと“左の過激派”ドイツ共産党が穏健派以外の異分子として議会勢力を占めていました。


 ワイマール体制後半のドイツ政界を裏で操っていたのは大統領のヒンデンブルクでも歴代の首相でもなく、帝政時代の軍人出身の政治家・シュライヒャーでした。


 彼は自分が表立って政権に就く事なく、操り人形となる“政治センスの無い政治家”を立ててその政治上のブレーンに収まり自分の理想を実現しようとするタイプの陰険な政治家でしたが、次々藁人形を取り替え続けた結果、パーペンを引きずり降ろした後でついに人形候補がいなくなり自分が首相になる羽目になりました。


 使い捨てられたパーペンは同じくお飾りに祭り上げられていたヒンデンブルクに取り入って巻き返しを図ります。更に彼は、丁度行われた総選挙で結党以来初の議席後退を喫して窮地に陥っていたナチスに資本家たちを紹介してその財政的なピンチを救い、ナチスと連合して憎っくきシュライヒャーを追い落とそうと考えました。


 ナチスを応援した経済界は「労働組合より右翼の方がマシ」と考えていたのは明らかです。そして大統領のヒンデンブルクもパーペンも、ナチスが議会制民主主義の枠を外れた劇薬であるという危機感は持ち合わせていませんでした。


 パーペン・ヒンデンブルク枢軸+ナチスがシュライヒャーを政権から追った後、ついにヒトラーが首相になってしまいます。


 ナチスはよく知られているように、政権に就く前からお抱えの暴力装置「突撃隊」を使って敵対勢力に非合法な攻撃を加えている暴力団の様な政党です。政権を取り、公的な暴力機関(軍や警察など)を手に入れて使わないはずがありません。


 あっという間にナチス以外の政党が禁止され、驚くほど短期間にドイツは独裁国家に変わってしまいました。シュライヒャーは家族諸とも殺害され、用済みになったパーペンは外交官として遠く外国へ飛ばされてしまいます。


 パーペンは本当に政治センスの無い人だったので、自分がやらかした事で取り返しのつかない事態を引き起こした事を自覚せず仕舞いで寿命を迎えた様です。


 今、日本では共産党が国内の諸政策に関する公約を凍結してでも「憲法改悪を止める」と言っていますが、このパーペンが持ち合わせ無かった“危機感”を持ったからに思えてなりません。


 最低限の暴力装置は必要ですが、権限を大きくし過ぎると“将軍様が民族を指導する国”やミャンマーみたいになってしまいます。日本も帝国憲法体制を崩壊させたのは軍が勝手に始めた勝てる筈もない戦争でした。


 尤もらしい理屈で権力に対する批判を封じ始めたら赤信号でしょう。そうなってからでは元に戻す事は至難の業です。怠け者の私としてはそこまで行かない内に流れを止める方を選びます。

ナチスや将軍様の国みたいになってしまってからでは、動いても無駄死にを増やすだけですから。

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