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Catch46 アイルランド

力による支配の清算は中々難しい物です。アイルランドしかり、パレスチナしかり。

 ♪アイルランドのような 田舎へ行こう


 昔、音楽の授業でこんな歌詞の歌を習った覚えがあります。「失礼な歌だなぁ」と驚愕した物です。確かに田舎なんですけど。


 その後、先日亡くなられた歌手の横井久美子さんが同行する「歌とアイルランドの旅」のお手伝いをした際にこの「失礼な歌」が大正期に発表された歌と知り、30年の時を隔てて二度ビックリした次第です。


 アイルランドは余り日本とは接点の無い、地球の裏側の国ですが、2019年に行われたラグビーワールドカップで独特の戦い方をする強豪として印象に残った方も多いのではないでしょうか。


 隣国イングランドにたびたび侵略され、19世紀には完全に植民地化されていました。


 大まかに言って、アイルランド人はカトリック、イングランド人は英国国教会(アングリカン=チャーチ) (プロテスタントの一派)の信者です。今、私たちが「イギリス」と呼んでいる「グレートブリテンと北アイルランド連合王国」はその名の通りアイルランドの一部を占領したまま今に至る訳ですが、何故北アイルランド(地域名としては「アルスター」の一部)がイギリス領として残っているのか、その訳は想像を絶する歴史があります。


 アイルランドが本格的にイングランドの植民地になったのは清教徒革命の最中、クロムウェルの侵略による物です。この時最も激しく抵抗した北部のアルスター地方は貴族も住民も皆殺しにされ、生き残った少数も他の地方へ追放され、がら空きになった所へイングランド国内から大量に清教徒を植民した為にアイルランド国内で最もプロテスタントが多い地方となったと言われています。


 アイルランド全体の首都はダブリンですが、イングランドの支配はアルスターを拠点にしたのでアルスターの中心都市・ベルファストが第二の首都みたいになっていました。


 18世紀以来反乱と弾圧が繰り返され、アイルランド共和国軍IRAが結成されてから本格的に内乱のような状態になりました。文化運動としてアイルランド古来のゲール語復興が起こり、また19世紀後半からは武装闘争ではなく大英帝国議会に独立派の議員を送り込んで平和履に目的を達成しようという試みも始まりました。


 当時のアイルランド総督府だったのは今もダブリン市内に残るカスタムハウスです。税関(カスタムハウス)といいつつ、税関として使われた事が殆んどない変な歴史を持っています。第一次世界大戦中の1916年にダブリンで大規模な蜂起が起こります(イースター蜂起)。カスタムハウスもIRAに焼き討ちされています。


 以後独立派は1921年に和平条約が結ばれるまで、執拗なゲリラ戦を繰り返し、イングランドに税金を払わず「反政府軍」の発行する債券を買って独立を後押しするよう国民に呼び掛けて支持と財源を広げるという戦術を取って勝利をつかみます。


 この独立戦争を描いた映画『マイケル=コリンズ』(リーアム=二-ソン熱演)は戦争中にイギリス軍が行った民間人の虐殺などを挿入している為に、イギリス国内では上映されませんでした。自国の暗部を隠そうとするのはどこの国も同じという事でしょうか。同じ時期にインドでも独立運動に対する弾圧で軍が民間人に発砲して大量の犠牲者を出したアムリツァール事件 (1919年)が起きています。こちらも映画『ガンディー』で扱われています。


 結局、昔の反乱でアイルランド人 (=カトリック教徒)が殆んどいなくなったアルスター地方の内、特にプロテスタントの比率が高い6州がイギリス領として分割されて、『グレートブリテンと北アイルランド連合王国』となりました。


 ワールドカップでは南北アイルランドが合同チームを作って勝ち進みましたが、こうした背景を知ると感慨深い物があります。穏やかな風景が広がるアイルランドですが、その奥にはかなりハードな歴史があります。

イギリスのEU離脱で再びアイルランドと北アイルランドの国境がフリーパスではなくなってしまいました。「自国第一主義」とやらは多くの人には迷惑を振り撒いている様に思います。

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