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Catch30 犬の知恵

中国史に残る大災害も多いのですが、少し離れます。中国史はもう少し続きます。

 今日、2021年3月11日は東日本大震災から10年の日です。未曽有の大災害に世の中のかなりの人は知恵を集め、優しさを持ち寄って心が折れない様に頑張りました。付随して起こった原発事故は収拾の見込みもないままで、これで「オリンピックをどう行うか考えよう」とは、コロナ禍と併せて“本当に何をやっているのだろうか”と情けない思いです。


 危機に際して人類が叡智を集め、事態を打開しようとする「建設的な頭の使い方」こそ「人の知恵」でしょう。



 その一方で世の中には本当にロクでもない頭の使い方をする人種がいる物です。以前、自衛隊も装備している事が分かり、問題になったクラスター爆弾。爆弾の中に沢山の子爆弾を詰めてばらまき、一撃である程度の範囲を制圧する為の兵器です。その時爆発しなかった子爆弾はそのまま地雷になる為、地雷廃止運動をしている団体などからも非人道的兵器として槍玉に上がっています。


 普通は自国の領土で使う物ではないので、自衛隊の所持が明らかになった時に当時の社民党党首だった福島瑞穂さんが国会で「(こんな物を自衛隊が持って)一体ナニをする積もりだったんかいなと(思わざるを得ない)」と皮肉った追及をしています。


 このクラスター爆弾ですが、中には子爆弾の色を子どもが興味を引かれるように可愛いピンクや水色に塗っておき、地雷となった後で付近に住む現地の子どもが触って吹き飛ぶように「工夫」した物などもあるそうです。


 一体どこからこういう下らない発想が浮かぶのでしょうか。戦争をやるならやりたい大人だけで好きなだけ殺し合っていればよろしい。何の罪もない子どもを積極的により効率よく殺す為の「工夫」って何なんでしょう。


 残虐行為の応酬が繰り返され、世界中を震撼させたボスニア=ヘルツェゴビナの内戦でもこの類いの「頭の使い方」がされました。激戦地となったモスタルの街はボスニアの南部の町です。西側市街はムスリム系のボスニア、東側をクロアチアが占領した為に特に被害が激しくなりました。


 覚えている方も多いかと思いますが、あの戦争では対立する相手民族を消滅させる為に「民族浄化(エスニッククレンジング)」というおぞましい行為がなされました。ある地域を占領した際に自分たち以外の人種を男性は殺害し女性は監禁して妊娠するまで連日犯し続けるという物で、こうすれば「生きている人間は皆自分たちと同じ民族になる上に、兵士たちの士気を高める事もできる」。


 考えついた人は「名案だ」とでも思っていたのでしょうか。


 知恵は知恵でもこんな物は「犬の知恵」というしかありません。


 田中芳樹さんの小説『創竜伝』に、とある軍事科学者を指して「高い知能を持った犬」と表現をしている部分があります。高い知能を要する作業をこなすものの、それが何をもたらすのかという想像力と人としてやっていい事かどうかという判断力に欠けた存在を意味していると思われます。


 東京芸術座という劇団が「ホームワーク」という劇を上演した事がありますが、これはボスニアに住む父セルビア人母ボスニア人長男の妻がクロアチア人次男のフィアンセがボスニア人という家族を描いた物でした。セルビア・クロアチア・ボスニアの各勢力が村を占領する度に家族が減っていく恐ろしいストーリーです。


 何故「ホームワーク」かというと、お父さんが小学生の時ナチスとの戦争の最中に学校で出された「ドイツ人やクロアチア人は何故私たちを殺すのか?」という宿題によります。宿題が出された翌日に第二次世界大戦が終わり、人種間の問題を棚上げにしたまま戦後の世界が始まり「宿題」は解かれないまま過ぎてしまいました。


 「私たちは何故あの宿題を解いておかなかったのだろう」というお父さんの嘆きで劇は終わります。


 今ボスニアでは民族間の交流と、お互いの事を知る努力が僅かずつですが進められています。どうすれば相手を消す事が出来るか、ではなく、どうすれば相手と共存出来るかを考え苦しむ事こそ「人間の知恵」だと思います。

誇りと共に「人間」であれ。

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