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Catch234 戦争の記憶

直に見聞きした体験談の一部をご紹介。

 2024年に日本被爆者団体協議会 (日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。とても喜ばしい事です。私たちが炭素系生物である以上、原水爆等の放射能を撒き散らす兵器とは共存出来ません。「使われたら終わり」なのです。


 使用は勿論、所有・開発もアウトと断じて原水爆禁止運動を拡げて来た被団協は、更に「世代を越えて運動を継承しつつある事」を評価されています。世代を越えて、という部分がポイントです。


 日本では戦争の記憶が薄らいでいます。特に今の現役世代の半分 (20~40代。1980年代生まれ以降)は既に親でさえ戦争を経験していません。ましてや学生・児童の皆さんは祖父母も戦争を知らない世代になりつつあります。


 知らないという事は判断するために必要な情報が不足しているという事でもあります。安易に再武装を選択する前に知って欲しいと思うのです。


 そう思ったのは、私を含む高度経済成長期に生まれ育った世代は肉親や周りの大人に戦争経験者がいる事が珍しくもない世代だったからです。


 私にもガダルカナルで戦死した親族がおりますし、学校時代に教わった教師の1人はシベリア抑留から生還した元陸軍将校でした。


 軍人ではありませんが、他の教師の1人は樺太育ちで、終戦直後に侵攻してきたソヴェート=ロシア軍の砲撃・銃撃を掻い潜り内地に引き揚げてきた体験を持っていました。


 義父はやはり兵士ではありませんでしたが、東京の山の手大空襲 (1945年5月)で家を焼かれ、翌々日に疎開先から戻って来た物の泊まる場所も無いのでまだ焼け落ちてブスブスと熱い実家の地面に寝て一晩を過ごしたと語っていました。


 他にも義父からは「戦闘機に狙われた時の逃げ方」なども教わりました。東京 (義父の家は今の国立医療センターの近くに在りました)ではマリアナ諸島から飛んでくるB29戦略爆撃機に()る大規模な攻撃や偵察飛行の他に、敗戦間近になると最早日本本土に近付いても攻撃を受けなくなったアメリカの空母から艦載機が飛来して機銃を撃って来るようになっていました。義父に拠れば「操縦席(コックピット)のガラス(風防)がキラッと光ったら照準が自分に合わせられた証拠だから全力で飛行機の進行軸から直角、真横に逃げる」んだとか。こんな情報が今後の人生のどこかで役に立つ日が来ない事をつくづく願います。


 私の実の父親が生まれ育った町は日本海側の物流の動脈だった羽越本線が通っていたので1度だけでは有りますが、阿賀野川に架かる鉄橋を狙った空襲があったと言っていました(爆弾は外れたそうです)。


 母は母で以前書いた通り、新潟県と山形県の県境近くの「海府」地域で育った人でしたが(『Catch111 異国情緒』参照)、戦時中に日本列島を封鎖していたソヴェート=ロシアの機雷が戦後になって何年かして流れ着き、沖合いで爆破されたのを見たと言っておりました。


 ソヴェート=ロシア絡みでもう一つ書いておきましょう。先に書いたシベリア帰りの教師が収容所(ラーゲリ)で石鹸を支給され桶1杯分のお湯で体を洗っている時に「石鹸が無くなった」と騒いでいる捕虜仲間がいたという体験談を話しだした事がありました。極端に栄養状態の悪い収容所でガリガリに痩せた抑留兵が石鹸を使っていた所、ちょうど鎖骨のくぼみに石鹸が嵌まってしまい一時的な“行方不明”になったのだという話でした。


 身近な当事者から直に聞く生々しい話は書籍やテレビ番組などで見聞きする物とは破壊力が違います。「戦争を知らない世代」がゲーム感覚で戦争や国際問題を捉えて思慮の浅い行動に出ないように、ささやかながら見聞きした実際の戦争について今後も伝えて行きたいと思うのです。

反戦活動を「お花畑」と嘲る人たち、ならば自分で戦場に行ってみれ。

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