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Catch202 幻の経済構想

今にして思えばバブルがはじける前なら地方にもこのくらいの行動力はあったのですね。

 都内の旅行代理店でアルバイトをしていた時、社員さんから「“李氏朝鮮”という表現は現地韓国の方々から嫌がられるので使わないように」と注意された事がありました。


 何故なのか、どういう表現なら良いのかを尋ねると「“李氏”という言い方は王家を呼び捨てている事になり不快感を催すようだ。韓国(あちら)では“王朝時代”という風に表現している」と説明して頂きました。


 う~ん、分かったような分からないような。朝鮮半島の長い歴史には李王家以外の「王朝時代」もあります。原初の三国時代を統一した「新羅(シルラヨ)」や「高句麗」の残存勢力が新羅を滅ぼして建てた「高麗(コリョ)」は王家の名でこそ呼ばれませんが、歴とした「王朝」です。


 もっと言えばそれ以前の伝説時代に「箕子(きし)」や「衛氏」が国王を務めた「朝鮮」もあった筈ですが、それらは現代の韓国ではノーカウントらしいです。


 「王朝」と言えば李家が歴代国王を務めた時代だけ。今ではそもそも大韓民国自体が「朝鮮」を名乗って居ませんし。朝鮮も韓国も英語でならどちらもKoreaなんですけどね。


 1980年代後半に北朝鮮の指導者・金日成の高齢化で次の指導者に誰がなるのかがたまに話題になっていた頃の事。有力な後継者候補に金主席の長男が急浮上している、と新聞か何かに出た事がありました。後の金正日総書記ですね。


 友人たちと「このまま金日成の長男が跡を継いだら“金氏朝鮮”だね」と笑った物です。『朝鮮民主主義人民共和国』との国称に反して「人民」でも「共和」でもないじゃないか、と。主席ではなく国王だろ、と。


 タイミングの悪い話ですがこの頃日本では「環日本海経済圏構想」という物が持ち上がっていました。東西冷戦が続く中、当時の新潟県知事などが提唱したこの構想は日本、ソヴェート=ロシア、中国、韓国を結ぶ経済交流を大きくし、総じて寂れがちだった日本海側の各県を活性化させようという、画期的な試みでした。


 声を掛けたのかも知れませんが北朝鮮は加わっていなかったと思います。万景峰(マンギョンボン)号など定期航路は既に開かれていたのにです。後継者争いでそれどころではなかったのでしょう。


 中心となった新潟県では新潟-ハバロフスク間、新潟-ハルピン間の航空路線が開かれ、“お試し”っぽくはありましたがソウルオリンピック前後に期間限定で新潟-ソウル便も飛びました。海上でも新潟-ナホトカ航路が開通しています。


 また“友好交流”でやたら「中国物産展」や「韓国文化展」などが開かれたり、県内各市町村が姉妹都市協定を結んだりしておりました。


 新潟駅から鳥屋野スタジアム(アルビレックス新潟のホームスタジアム)方面に少し行った所に本格的な中国式庭園が作庭されたのも新潟市がハルピン市と姉妹都市になった記念に造った物でした。


 スポーツ交流も盛んで私の出身地・新発田市ですら毎年相互に韓国のナントカ市 (議政府(ウィジョンブ)市だったかな)と卓球の交流戦を行っていたのです。


 私の同級生も代表に選ばれ向こうで教わった韓国語を「お父さんの事“アボジ”って言うんだ」とか教えてくれましたっけ。


 そう言えば韓国物産展で配っていた韓国の観光地を紹介する地図には「韓国領」として一応半島全部が「全図」として載っているのに北半分が空白になっている不自然な物でした。


 まだ韓国自体が軍事政権で「何か怖い国」というイメージが強い時代でした。


 ロシア関連の催しは全く記憶に無いのですが、もしかしたら当時既に破綻寸前のロシアで地域的にも貧しかった筈の極東が、そうしたイベントを開くだけのお金が無かったのかも知れません。


 アメリカとソヴェート=ロシアの間では頻りに「デタント」と呼ばれるトップ会談が行われ、第二次世界大戦後40年以上続いた冷戦体制も全面核戦争という破局を避けながら何とかより良い方向に行くのかなぁと思っていた時に、限界を迎えた東側諸国とロシアがバタバタと崩壊し、突然今までの地球ではなくなってしまいました。


 環日本海経済圏構想もぱぁです。


 ウラジオストックでは維持費が足りなくなった海軍が原子力潜水艦の核廃棄物を日本海に投棄し始め、経済復興を遂げた中国は膨張政策を隠さなくなり、韓国は民政化したのはいいんですが政権が変わる度に親日になったり反日になったり外交方針に統一性が無くなりました。


 ロシアはともかく、朝鮮半島と中国に繋いだこの時のコネクションがもう少し活かされれば、冷戦後も(むしろ混乱期だからこそ)安全保障問題や寂れた日本海側の各県の経済状態も今とは全然違う物になっていたのだろうと思うと残念でなりません。

そして北朝鮮はますます王朝化が進んで現在に至ります。

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