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Catch20 ブンカ-

昨日の続きからの……?

 『ドイツにヒトラーがいたとき』という本があります。著者は哲学者の篠原正瑛さん。日本が同盟を結んでいたナチス=ドイツに交換留学生として渡り向こうで学位を取った方です。


 第二次世界大戦中にドイツ国内で大学教授をしていてドイツが降伏した際に連合国側の捕虜となって何年か抑留されてから帰国した、とウィキペディアのプロフィールにありました。


 上記著作は子ども(中高生)向けに書かれたと思われる物で、それ程難しい表現は使われていません。帝国憲法時代に生まれ育った1人のエリート青年の目から見た先進国ナチス=ドイツの様子が生き生きと描き出されている貴重な見聞録です。


 私は学校の図書室にあった物を借りてたまたま読んだのですが、著者がヒトラー政権下のドイツについて(日本と比べて)“言論の自由がある”と感じている部分に酷く驚いた事を覚えています。戦時中の日本やドイツには「戦争に反対する意見を強制的に弾圧していた」というイメージが強かったので、「戦後平和教育」が多分意図的に教えて来なかった部分に初めて触れて混乱したのでしょう。


 考えてみれば当たり前の事ですが、大半の人間が暮らすのに不便をきたす様な社会が長持ちする訳がありません。“多少”不自由を感じる程度で概ねマトモと思える物だったはずなのです。


 帝国憲法時代にやらかしてしまった国家レベルの過ちを繰り返さない様にと、余りに「戦時中は悪かった」「戦時中は酷かった」とフェアではない教え方を続けて来た結果、“そうでもない”部分に気づいた人が「自分たちは反日教育を受けていたんだ!」と180度反対に走ってしまう“新愛国主義”現象を惹き起こしてしまったのかと思います。それではベクトルを裏返しただけで結局事実ではないのですが。



 さて、『ドイツにヒトラーがいたとき』の後半に「ブンカ-」という物が出てきます。BUNKER、英語の「バンカー」と同じで、ゴルフ場にあるイヂワル砂場や地下壕を意味します。米軍がイラクで使って問題になった「バンカーバスター」という強力な爆弾がありましたが、この「バンカー」も同じですね。


 ここで言うブンカ-はナチス政権が戦争中に準備した対爆防空壕の事で、地上4~5階、地下3~4階のコンクリート造りで、1基に4万人位収容できる巨大な建造物でした。屋上は高射砲陣地になっており、内部には換気装置も完備していたそうです。


 ベルリン市内だけで何十基と建設され、宣伝大臣だったヨーゼフ=ゲッベルスをして「ベルリン市民を5分以内に完全退避させる」と豪語せしめたとか。同盟国の日本でえっちらおっちら「タコ壺」と呼ばれた竪穴“壕”を各家庭で掘ったり、崖に横穴を掘ったりしていたのとはエライ違いです。


 このブンカ-ですが、対爆施設だった為にやたら頑丈で、戦後に西ベルリンではさっさと撤去されたのですが、東ベルリンでは手間と費用の工面が付かず、撤去する前に周辺に建物が建ち並んでしまいました。そうなると、爆破しようにも周囲に被害が出てしまう為にますます壊せなくなり、仕方なく鉄条網で周りを囲って立入り禁止にして放置していた様です。


 篠原氏は戦後(壁崩壊前)ベルリンを訪問した際に西側から来た観光客に「あれは東ドイツ政府が政治犯を収容している施設です」などとデタラメな解説をしている案内人を見掛けて嘆いています。


 このブンカ-が映画『ゲッベルスと私』の後半に出てきます。資料映像として差し挟まれている、終戦直後の焼け野原になったベルリンの超低空からの空撮映像に、窓も無い4階建て位のコンクリートの箱が画面の左側に映り込んでいるのです。


 撮影機が通過する時に屋上の様子も見えますが、四隅と中央に土嚢を積み上げた胸壁の様な物と高射砲の台座らしき物も見えますので、間違いないでしょう。


 東西統一後のベルリンでは壁も含めて分断時代の痕跡を消しすぎて何も無くなりそうになった為、「歴史資料」として保存する運動が起きているそうです。2010年代に旧東ベルリンを訪れた知人に聞いた所「見たことが無い」との事でした。ブンカ-は今どうなっているのでしょうか。ご存知の方はご連絡下さいませ。

著作の発行年を確認した所、1984年となっていました。私は出版されてすぐに目を通していた事になります。

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