Catch184 貧乏物語 その2
国の主役は富を生み出している労働者。岸田首相が口にする「再分配」を考えれば源泉は“こちら”なのだと分かる筈。
先日、毎朝やっている情報番組で紹介されていた「ウチのご飯のこんな工夫」なるコーナーを見てトホホとなってしまいました。
魚や肉を沢山食べたいけれどお金が無いのでモヤシや豆腐や麩でかさ増しして「安くて美味しくて大満足!」って。何か戦時中に通じる貧乏臭さが漂うセコい話です。
健康を考えてカロリーを抑える為にとか、何かしら積極的な意味が有るならともかく「お金が無いから」って。
それは経済界の言うままに安っすい給料で我慢し続け、経営者に配慮して賃上げ要求もして来なかった自分たちと、その状況を作り上げ価値を生み出す労働者に妥当なお金を回して来なかった財界の責任でしょう。少なくとも何の責任も無い食べ盛りの子どもたちに物足りない思いをさせるって、大人として恥じて欲しい所です。
「会社が潰れるよりマシだろう。今の給料が貰えるだけありがたいと思って(低い賃金でも)我慢してくれ」というプロパガンダをばか正直に信じたのか。はたまた賃金引き上げを要求しようにも勉強不足で「会社の利益はこれこれ、私たちの実績がそれそれ。なのでこれだけの賃上げを行う事は出来るはずだ」と交渉する事が出来なかったのか。
そもそも職場に組合が無いか、有っても経営側言いなりの御用組合しか無いのでは交渉すら意味が無いのですけど。
中々な末期状態ではありませんか。この無様さで「社会主義は間違っていた」「資本主義の勝利だ」ですか?資本主義が生み出す格差と貧困の解消もしていないのに?寝言は寝てから言って欲しい物です。
社会主義を掲げていたソヴェート=ロシアとその従属国家群が体制破綻に陥った時、寝言は寝言と受け止められていませんでした。
実は当時の「社会主義国」はそもそもマルクスが提唱したような「被搾取階級が団結して主権を奪取 (=革命)した政権」ではなかったのですが。
『Catch33 団結せよ』にも書いたように、マルクスは優れた経済学者であり歴史学者でありヘーゲル左派を代表する哲学者でもありました。そして何よりも革命家であった彼は自身の哲学「理解した世界(社会)をより良い物へ変える為に動くべき」から導かれる運動論、団結した被搾取階級の実力で既成の社会のあり方を変えてしまえと言う革命理論を訴えました。
崩壊した国々はロシアも含めてこうした労働階級の団結によって成り立つ革命政権ではありませんでした。ロシア革命で大きな役割を果たした労働組合と兵士 (弾圧する側の実力部隊=暴力装置)が作った「ソヴェート」という組織は、レーニン亡き後権力を握ったスターリン体制の下でいつの間にやら発言力を奪われ、率直に言えば「社会主義の看板に隠れて体制を正当化していた官僚独裁国家」と成り果てていました。「労働階級が政権を担当する社会主義国」とはほど遠いシロモノだった訳です。
恐らくそうした事情は政治・経済の専門家は気が付いていたと思うのですが、折悪しくバブル経済の破綻で日本は混乱しておりました。リストラクチャリングという名の大量解雇を正当化したかった経済界の言い分を補強する形で専門家が「社会主義の敗北」や「賃上げ要求は悪」との虚構を垂れ流しました。
結果、30年以上に渡って中小零細企業や生活者が戦時中並みの貧乏たらしい「工夫」を重ねて生き延びる「豊かさとは程遠い状態」を作り上げてしまったのです。
繰り返しますが、トホホですよ。
戦争中でもなく宗教対立や民族問題が深刻な訳でもない。勤勉で水準を満たす教育を受けた労働者が多く存在する。その上で貧困が進んでいるのは政策の誤りによる物、とカナダの経済学の講座で「悪い例」としてこの30年の日本を紹介されたらしいですね。