Catch181他人の命より自分の給料
責任感のある優れた人材がアホの犠牲になる。
ストッパーのいない政権は国民 (時代と国によっては臣民)を惨禍に突き落とします。
前回 (『Catch180 土木と奪門の陰で』)ご紹介した悲劇の硬骨官僚・于謙。彼は言ってみればBAKATONO英宗の「ぼくらがかんがえたさいきょうのえいゆうさくせん」で中華世界と北方草原地帯の双方に覇を唱えたモンゴルのフビライハーンみたいな英雄になろうとした夢の後始末をつけ、「ほんとうはぼくがくにをすくってみんなにありがとうっていわれるはずだったのに」と逆恨みで殺された政治家でした。
ついでに言えば英宗を唆して相手の庭たる草原地帯に出撃する流れを作った王振という宦官に睨まれて投獄もされています。プロの目からして上手く行く訳が無い計画に「成功しません」とばか正直に意見を述べたからです。
王振は英宗の家庭教師でとて~も信頼されていたよいしょの達人でした。太鼓の達人だったらよかったんですけど。
こうした大規模な組織の動きで過ちが起き多数の人命が失われる時、その前段階で必ず引き返す事が出来なくなる時点があります。それを過ぎてしまう前にどうにか出来なかったもんかいな?
土木の変では従軍した50万人の将兵と後方の支援部隊がほぼ全滅したと言われています。地位と権限を持つ人たちがキチンと仕事をしていればこの惨劇を防げないはずはなかったんです。
実現する訳もない覇者になる夢を叶えようとした皇帝&かわいい教え子がガッカリするのを見たくなかった家庭教師は論外として、軍部の最高責任者だった兵部尚書 (防衛大臣)や内閣の首輔 (総理大臣)、その他大勢の軍人・官僚がまともな意見を言わない(馘首とか死刑になるから)、言っても危険性を心配する程度 (止める効果は少ないがその分馘首されにくい)。ばか正直に「成功する筈がない」と処刑を覚悟で反対したのは于謙ら極少数のみ。これはどういう事でしょうか。
第二次世界大戦の時の日本政府と高級軍人たちもそうですね。誰もアメリカと自国の国力の差を知らなかった何て事はありません。反対したら東條英機という精神論大好き首相兼陸軍大臣に左遷されるから黙っていたのです。
つまり平常時に大きな権限と責任を預けられていた為政者たち(パワーエリート)は社会を支える皆さんの営みよりも自分の地位、もっと言えば目の前のお給料の方が大事だった訳です。
本当は皆さんの暮らしや商売、日々の労働が富を生み出し、その内の一部が税として納められパワーエリートさん方のお給料の原資になっとるんですが(こうしたお金の流れと国の関係は近々投稿予定の“貧乏物語”で詳しくご紹介します)そんな視野は残念ながら無かったようです。
そんな“なんちゃってエリートたち”がプロとしての責任を果たせる筈もありません。
故安倍晋三政権の後半はこのぐっずぐず状態だった様に思います。でなければ「マスクが無いならウィルスは防げないけど布マスクを配ろう!」何て珍政策に予算が付く訳が無い。
こちらが納めた税金の配分をしてるだけの分際で完全に「ぼくのかんがえたさいきょうの」と勘違いで権限を振り回し周りも止めやしない。アマチュア政権、アマチュア国家でしたね。