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Catch154 一周しちゃったよ?

経済界が目先しか見ないのは仕方がない無いことなんですが、政治や行政(省庁)まで乗っかってしまうのはいかがな物か。

 最近、親族と話をしていて「労働の価値が下がっているんだな」と感じた事がありました。彼女はとある有名コーヒーチェーン店でバリスタをしているのですが、配置替えで勤務地が今までより遠方になり、朝5時に家を出る事になるという話でした。それで暮らして行けるだけの給料が出る訳でもなく、「舐められてんなぁ」と思いました。


 考えてみれば外国人や青年層が多く採用されているコンビニエンスストアの店員も物凄く多岐に渡る業務を覚え実行しなければならないのですから、労働としてはとんでもなく高度な知識と技術を必要とする作業だと言えます。しかし、どう見ても高度で複雑な業務に見合った賃金が出ているように思えません。まさに「労働の価値が下がっている」のです。



 このエッセイで幾度か触れているように、私は現在の不況と先行きの悪さは90年代に保守政権が始めた「聖域なき構造改革」と称する福祉削りが元凶だと考えています。年齢や、事故などに依る傷害、病気や障害。様々な要因でそれ以外の人たちに比べて勤労による収入を得にくい人が食いっぱぐれないようにしていた仕組みが福祉です。それが片っ端から小さくされたり無くなったり、軒並み「無いよりマシ」、“よりマシ福祉”となってから、世の中のお金の流れが大きく変わってしまったと思うのです。


 誰でもいつかは歳を取り働けなくなります。年齢によらずとも、病気や事故による怪我など様々な原因で働いて収入を得る事が難しくなる事はあり得る訳です。そうなっても安心して生きて行けるだけの社会の助け=福祉を狭めた以上、個人も家も企業も“万一”に備えて貯めておこうとするのは当たり前です。


 再構築(リストラクチャリング)馘首(レイオフ)と同じ意味に成り果ててからはますます皆が貯め込むようになりました。どんなにお金を稼いでも使う方に回しにくい社会を作っておいて「景気が良くならない」と嘆くのは盗っ人たけだけしいと言う物です。雇止(レイオフ)めで人件費を抑え、安くて良いサービスを提供し差額で儲けるという方法は一時しのぎでしかなく「他が従来通りのやり方を続ける中で出し抜くから儲けが出るだけ」、他も同じように人件費を抑え始めたら失業者や低賃金労働者だらけになり「安く提供している商品やサービスさえ手が出ない貧困者が多数を占める社会」になります。四半世紀が経ちもうなってしまいましたが。


 いち早く人件費を抑え一時的に利鞘を得た企業がやるべきは、雇用する従業員の暮らしが立ち行くだけの賃金アップでした。そして本来の意味での再構築で稼ぐ力を取り戻せば、一時的にお金の回りは鈍ってもより購買力を増した勤労層を生み出すはずでした。しかし急場を凌ぐためだった禁じ手をどこもかしこもやり始め、賃金再引き上げをやる環境が出来る前にそちらが当たり前になってしまいました。更に福祉を抑えた為にますますお金を使えない、使ってしまったら万一の時に生きて行けなくなる、まるで貧困国並みの「崖っぷち社会」になっています。


 リストラでコストを抑える→経営を立て直す→残った従業員の賃金を上げるという流れになるはずが、リストラでコストを抑える→経営を立て直す→持ち直したのに賃金を据え置く→同じような事を皆がやる→(福祉削りが始まる)→失業者も労働者もお金を貯め込むようになる→景気が悪いままなので賃金は上がらない→儲けが出なくなる。


 あらどうしましょ、悪い方へのお金の流れが一周してしまいました。


 これはお金の流れが細くなる流れを持て囃した経済界や保守政界がアホだっただけでなく、カウンターパワーとしての組織 (労使協調型ではない労働組合など)を作らず流れにNOを申し立てなかった労働者も責任があります。そうでなければ物価も賃金も利回りも低く抑えられたまま20年以上も現状に甘んじる社会などあり得ません。自分の国だけで経済が完結している自給自足タイプの国ならともかく、エネルギーや食糧の過半を外国に依存する国としては、「現状維持」が相対的に「没落」になるんですけど。


 相対的な評価が表れているのが現在の円安であり、買い支えても買い支えても同じような辺りをたゆたっている平均株価であり、ノーベル賞他学術の面での受賞者減少です。学術への投資を30年以上削り続けていれば頭脳流出が起こるのは当然、と思わなかったのでしょうか。30年かけて墓穴を掘った日本が経済成長を取り戻すには、取り戻す為の方向でぶれずに政策を続けても50年以上かかると思いますよ?

先行き果てしなく暗し。

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