Catch152 選挙へ行きませう
個人と政治家としての評価はまた別の物です。
元総理大臣の安倍晋三氏が2022年7月8日の午前中、奈良市内で遊説中に銃撃され同日午後に死去しました。平和憲法時代になってから総理大臣経験者が襲われ死亡するのは初めての事です。
帝国憲法時代は総理大臣や総理経験者が暗殺されるのはそれほど珍しい事ではありませんでした。在職中に殺されたのが原敬と浜口雄幸、それに5.15事件で殺された犬養毅。
このうち原と浜口は共に東京駅で遭難し、今でも駅構内の殉難地点に小さく表示があります。5.15事件に並ぶ帝国憲法時代最大級のクーデター、2.26事件では大蔵大臣を務めていた元総理の高橋是清と同じく元総理・斎藤実が殺害されています。そもそも最初の総理大臣だった伊藤博文からして総理を退いて韓国統監府の最高責任者になっていた時に中国東北部のハルピンで朝鮮の独立活動家に射殺されているのです。
他にも一命は取り留めましたが、外務大臣在任中に後に首相となる大隈重信も手榴弾を投げつけられ片足を失う重症を負いました(死ななかっただけで襲撃された人はもっといます)。帝国憲法時代に首相になった30人の内6人、実に5人に1人が殺されているのです。
250年以上続いた徳川政権を武力で倒して成立した明治体制は、実に暴力が横行する時代でもありました。
「讒謗律」という、悪名高い法律があります。言葉通りに受けとれば「過度な悪口を言ったり書いたりしてはいけないよ」という一見まともな法律ですが、過度かどうかを判断するのが政府やその手先たる警察だったもんですから、政権や政治家の腐敗を記事にした新聞・雑誌が真っ先に弾圧を食らいました(おや、最近もネットを対象にした似たような取締り法が出来ましたな)。
権力が法を楯に弾圧を正当化するなら不平を持った組織や個人は暴力で対抗しちゃれ、という実に荒っぽい世の中だった訳です。
そして更に悪名高い治安維持法が猛威を振るうに至って組織立った言論や実力抵抗はねじ伏せられ、帝国日本は今の北朝鮮みたいな社会に成り果ててしまいました。政府に対する反対や懸念の声を「非国民」と押し潰し、勝てるはずも無い破滅の戦争へ突進して壮大な自爆を演じたのです。
現職の総理大臣が官邸で殺害された5.15事件と、陸軍の兵士たちが数日に渡り東京の中心部を制圧して主要な政治家を殺して回った2.26事件以降は、議会も報道も国中が暴力のプロが振るう実力の前に「すくんでしまった」暗黒の時代でした。
先ほど北朝鮮を引き合いに出しましたが、今回亡くなった安倍氏が目指していた社会はどうもあの北朝鮮が“完成形”に見えるロクでもない国だったように思えてなりません。要するに治安維持法があらゆる政府に都合の悪い情報をシャットアウトして批判を完全に封じ込める事が出来る戦前の日本の再現です。
軍備増強の口実に事ある毎に「北朝鮮が」「北朝鮮が」と煽っていましたが、実はあの「将軍様が指導する体制」が羨ましくてしょうがなかったんじゃないのかと。
亡くなった安倍氏の軸は「おじいちゃんは悪くない」だったと思っています。これはまた別に考察をまとめてアップする予定でおります。
いずれにせよ、私たちがするべきはテロの否定と今行われている選挙を混同して飛び交う情緒過剰な情報に惑わされず、有権者としての権利を行使する事です。自分や家族の生活を守るためにもVOTE!
思い返すだけでも安倍氏はモリカケやら桜やらと税金の私物化をするは増税と福祉削りをするはまともに論戦をしようとしないは原発コントロールだのと公然と嘘をつくは噓がバレかけると公文書を改竄したりシュレッダーにかけたり本当に平和ボケの象徴みたいな政治家でした。ですが暴力に合い命を落とした事に安倍氏個人に向けて謹んでご冥福を願います。