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Catch145 線引き

公的な物のガイドラインなどはありますが、自分自身のガイドラインのお話。

 価値観や言論、或いはモラル・道徳といった分野で、特に被害を受けた人がいるような場合に私が判断の元にしている点が2つあります。


 自分や自分以上に大切な人が同じような不利益・被害にあった時、加害者側を庇うような事が言えるか。もう1つは社会や組織が、もっと極端に言えば全ての人間が同じ事をして社会が成り立つのか。


 例えば仏教の戒律 (守るべき8つの戒め)では出家した者に異性との性行為を禁止しています。その上で出家者の方が在家信者より、在家信者は非仏教徒より「徳が高い」=「モラルが優れている」=「偉い」とされています。いや、性行為の禁以外にも沢山守っている事はありますけども。


 これはどうでしょうか。


 皆が1番高い出家者並みの戒律を守ったら、要するに「悟りを開いて極楽に生まれ変わる為に」1番優れた正しい人生を送ったら一世代で人類は滅びます。子どもが生まれませんからね。戒律を守らない、即ち仏教道徳では悪いとされる一般人の営みによって社会が支えられているのに、それを不道徳で劣っていると見なすのはいかがな物か。俗世間の存在を前提にしているのに、仏教的モラルでは皆が1番良いとされる行動を取ると社会が消滅するのです。


 最近、立て続けに日本軍や旧帝国政府が従軍慰安婦の動員・管理に関わった事を否定したりそうした歴史を歪める言論を支持する見解を目にしてウンザリしています。従軍慰安婦問題なんて、素人がちょっくらちょっとニュースを囓ったくらいで分かった風な発信できる程単純な物じゃないんですが。


 先日も朝日新聞のいわゆる「吉田証言」が偽証だったので、菅政権が教科書の記述から“従軍”を外し、“慰安婦”と表記させた事を評価する、という無邪気な発信を目にしました。本人は自分なりに集めた情報を整理して見解をまとめた風で、初めから「従軍慰安婦は事実無根」との結論ありきな論考ではありませんでした。


 ただし、一般人としては全く普通の事ですけど、慰安婦被害者とされる金学順(キムハクスン)さんや宋神道(ソンシンド)さんの生々しい証言や自伝などを読んだ上での発信でもないようです。繰り返しますが、支援者や研究者でもない一般人としては当たり前です。なので情報源が「結論ありき」の発信のみで占められてしまいます。


 “口には合わない”かも知れませんが、自分が「そうだろう」と思っている見解と真逆な立場の発信を幾つか拾い複数の視点を通した方が、より立体的に物事を掴めます。まあ、そこまでやる人はなかなか居りませんが。


 人権が低く認識されていてもインドや中国のように成立している社会はあります。しかしそこに普遍的な幸福はありません。いつ被害者に転落するか分からない一般人の恐怖と、歪んだ社会構造から「自分は被害者になることはない」と保証されている特権階級の安心があるだけです。いつの時代の話ですか。


 女は男より劣っているのだから進学や就労で不利になるのは仕方がない。性被害に遭った人は挑発的な服装をしていたなど自身にも責任はある。

従軍慰安婦は旧軍が動員した物ではなく自発的に応募した売春婦だ。


 被害者が自分や自分以上に大切な人だった時に同じ事が言えるでしょうか。全ての人がこうした主張・価値観を肯定して社会が成り立つでしょうか。


 何かおかしい、と感じたら、真逆の見解を拾ってみて下さい。そうして相矛盾する意見や価値観を知った上で自分なりの考えが作られるのですから。

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