Catch129 コレラとペスト
どっちがイイデスカ、と聞かれても「どっちもイヤ」としか言えません。
今回 (2022年)のフランスの大統領選挙は決戦投票にもつれ込み「かろうじて」現職のマクロン氏が勝利しました。有難い。
4年に渡って地球に悪夢を撒き散らしたアメリカの大統領がようやく退場したのに、入れ替りでフランスが身勝手と相互憎悪の発信源になったのでは堪りません。
4年前にマクロン氏が初当選した時も、今回と同じく相手は極右のルペン氏でした。その時にどちらかと言えば「よりマシ選択」、それも「どちらの方が少ないダメージで済むか」という有り難くない二択だとの意味で、お二人を「コレラとペスト」に例えました。片や「経済格差の何が悪いの?」と嘯く“新自由主義経済の寵児”で、片や「あいつらがフランスで暮らすなんて認めない」と他人種・他宗教に対する敵視を隠しもしない極右の活動家。
どちらもやっている事やろうとしている事は「反SDGs」とも言うべき、地球の危機を高めるだけのトホホな物です。マクロン氏が勝利したのは「ルペンよりマシ」、「ルペンみたいなネオナチに任せたくない」という選択の結果に過ぎない事。「彼の政策が支持された訳ではない」とマクロン氏が正確に認識出来るのか疑問に思った物です。
結果はコレラ、ではなくマクロン氏の任期の大半をもっと凄い人たち、すなわちトランプ前大統領やフィリピンのドゥトルテ大統領、ブラジルのボルソナロ大統領などなどが大暴れしていたため、マクロン氏の欠点がそれほど目立たずに済んだだけです。あんな「迷惑系YouTuber」みたいな連中と比べられましても。
格差を助長され被害を受けた中間層がペスト、じゃなかった、ルペン氏に流れて4年前よりも得票数で詰め寄られ、彼女とその支持者の存在感を増す事になりました。初当選よりも状況は厳しくなっているのです。
しかも、ヨーロッパ政界の重鎮として、また民主主義を尊重し健全さを守るために長らく闘い続けたドイツの首相・アンゲラ=メルケル氏が昨年末に引退しています。マクロン氏が曲がりなりにも“EUが目指すヨーロッパ内相互の友好と協力を進める政治家”「マーストリヒトの守り手」のように振る舞えたのは、EUのもう1つの軸となるドイツで彼女が長期に渡って政権を持ち続けていた事が大きかったと思います。メルケル氏はこの点でぶれる事はありませんでしたから。
そのメルケル氏無き後、加盟諸国がそれぞれの国内でペストのような勢力の存在に揺らぐ中で、マクロン氏がぶれずにこれまで通りの対外政策を維持出来るのかとても疑わしいと思っています。
ウクライナ問題で奮闘中ですが、それが国内の不満を解消する事に繋がらないのは選挙の結果を見ても明らかです。格差の肯定をやめる事は出来ないのでしょうかねぇ。
格差を助長しても社会が不安定になるだけです。ファシズムを選べば人権は吹き飛びます。地味で持続する理性が必要なのですが……。