Catch121 ラジオ体操と郵便局
『カムカムエヴリバディ』が終わってしまいました。
この頃は人気の芸能人の引退やドラマの終了で生きる張りが少し無くなったような寂しさを「なんとかロス」と表現する様ですが、芸能人はともかくドラマについては最近業界で視聴率に代わり注目され始めた「満足度」の高い作品にこの「ロス」が生じる気がします。
私は大してドラマは見ないのですが、ここ10年くらいを振り返ると『おっさんずラブ』(2016年)『私の家政夫ナギサさん』(2020年)辺りが「ロス」だったかなあ。先週終わった『カムカムエヴリバディ』も「ロス気味」です。
100年に渡る家族 (特に母と娘)の歴史を描く長い物語を半年でやるのですから多少の中だるみは有るかと思いきや、最終回へ向かってドンドン「引き」が強まる恐るべき作品でした。サブテーマとして初期の主人公がラジオ放送開始の年1925年に生まれた事に関連付けて「ラジオ英語講座」が100年を繋ぐコンテンツとなっていたのですが、他にも「ジャズ」「時代劇」など様々な要素が散りばめられて見応えのあるドラマになっていました。
中には幾人かの登場人物が「朝ドラ好き」との設定で、話が戦後のテレビ時代になると「これでもか!」とばかりに様々な過去の朝ドラ作品がカットインする部分も。若干NHKの「手前味噌」「自画自賛」に見えなくもありません。そんな事をしなくても優れた作品を送り出せば視聴者は付いて来ると思うのですが。
もう一つ「ラジオ体操」も「ラジオ英語講座」程ではありませんでしたが物語を通じて出て来ていました。
そのラジオ体操。
ずいぶん前にラジオ体操を管轄している役所が郵政省だと知って「はあ?」と思った事がありました。「平成の行政改革」、官公庁の大幅な統廃合で今は無くなってしまいましたが、かつては郵便業務を統括していた省です。
何で郵政省?
夏休みに半ば強制的に早起きさせられ町内の皆さんとラジオから流れる伴奏に合わせてやるアレと郵便局が全く結び付かず頭の中が「?」で一杯になりました。一見関係が無いように思うラジオ体操と郵便局。ちゃんと理由がありました。
郵便局が扱っていた「簡易保険」、簡保です。
保険は確率で勝負する金融事業です。加入者から集めた資金を投資に回して利益を出し、加入者が病気や火事などお金が必要になった時に契約条件に沿った支払いをします。加入者がサービスを必要とする災難に見舞われるかどうかは「確率」の問題です。原資の額は確率を予想して設定します。支払いが生じる危険性が高いと予想される保障サービスに高い料金が設定されるのはその為です。会社が集めたお金以上に支払うリスクを避けるという事ですね。
1916年と言いますから元号で言えば「大正5年」の事。郵政省、当時の逓信省が簡易保険を運営し始めます。本格的な保険会社の物と比べ少額で入れる「広く薄く」に重きを置いたサービスです。
保険は言い方を変えれば「加入者がなるべく保障を必要としないほど儲かる商売」なので、不健康な生活習慣でホイホイ病気になられると困る訳です。
そこで最新の社会インフラ「ラジオ放送」を使いなるべく全国の皆さんに健康を維持して貰おうと「健康な体を日々を体操する事」で保ち、ならなくても済む病気を減らそうとしたのです。つまり今で言えば「国民保険と自治体の健康診断案内」のような物。ラジオ体操と郵便局には意外な繋がりがありました。
ちなみに郵政省が解体されてから、ラジオ体操の管轄は総務省へ引き継がれています。
いずれにしても生きている以上はなるべく健康体で意識や記憶を保ちたい物です。