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Catch12 近代オリンピック

 2021年2月現在、相変わらず開催をするのか中止や延期になるのか結論が出ないままの東京オリンピック。競技者や運営スタッフ、協賛企業にボランティア要員、どのような結論でも「さっさと決めてくれい」という気持ちでいるのではないかと思います。


 「近代オリンピック」と言われる今のオリンピックは19世紀にフランスのクーベルタン男爵によって提起され、1896年にギリシアのアテネで第1回が開催されて以来、「平和の祭典」として多くの競技種目でその優勝が最高級の栄誉と目されているクオリティの高い国際スポーツ大会となっています。


 初めの内、万国博覧会に付随するイベントの様な位置づけになりかけたオリンピックでしたが、いずれにしてもクーベルタン男爵の強い意向で「平和」が強く意識されていました。


 モデルになった古代ギリシアのオリンピアの祭典は聖なる神事として「戦争中の国同士でも停戦して参加する」という特徴があり、ナポレオン戦争後のヨーロッパ諸国が各々軍事力をかき集めてにらみ合う緊張状態が続いている中で“スポーツや博覧会を通じて様々な国を知る”“政治や経済の対立とは別な交流手段を立てる”という考え方に応用できると思ったのでしょう。


 平和を志向するその発想はヨーロッパをEUとしてまとめ、いずれは域内の国境の意味を限りなく低下させようと試みる「マーストリヒト条約」が目指している壮大な夢にも通ずる画期的な物だったと言えます。


 政治利用の顕著化や商業主義的な弊害が目立つなど、紆余曲折を経てその「夢」はまだ途中だと思います。ジェンダーや環境などクーベルタン男爵の時代には存在しなかった新たな人類の課題も加わって、さらに発展の余地があるという事です。



 2020年に開かれるはずだった東京大会を含め、費用の増大や開催都市の負担の増加、最大の資金源たるアメリカのテレビ放送会社の都合によって開催時期さえ左右されて競技に適した環境を整えにくいなど、ここ最近の幾つかの大会が共通して指摘されている問題などは発想や工夫で解決していくべきなのでしょう。



 元々、オリンピックが万博と共に開催されていた頃は人が地球の反対側にまで出かけて帰ってくるなどという事はごく一部の特権階級を除いてはあり得ない難しい事でした。お互いを知りあう機会も極端に少なく、よく知らないもの同士では政治や外交でも中々信頼関係を築くのに時間がかかったでしょう。


 万博やオリンピックが都市開催という形をとり、開催場所を順繰りにしたのは、なじみの無い異国の人々の文化やなりを身近に見分する機会を次々に開催都市やその付近に暮らす人々に与えていた訳です。


 21世紀の今、これだけ通信技術や映像技術、映像記録技術が発達している中で、ごく一部の場所に競技会場を集中させる意味が薄れているのではないでしょうか。


 「平和を志向するスポーツの祭典」「遠く離れた国同士が一堂に会し、競技を通じて尊重しあう関係を作る」といった原点に立ち返って、開会式・閉会式だけ“開催都市”が責任を持ち、全世界に会場を分散してしまうというのも一つの手です。例えばマラソンはベルリンで、カヌーはベオグラードで、水泳はシドニーで、といった具合に。地球全体をオリンピック会場にしてしまうのです。


 スポーツによる交流と相互理解で平和を実現しようとしたクーベルタン男爵の夢に沿う試みを、工夫と発想で現実の物にしていくという原点を、もう少し重く考えてもいいのかなと考えています。

問題は利権も分散してしまう事でしょうか。スポンサーが抵抗しそうですが、本末転倒ですね。

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