Catch113 サケられない問題
酒だけに~。
今に伝わる古代中国のエピソードで「人類初の酒造り」に関する物があります。うろ覚えですが、たぶん「聖三代」と呼ばれた堯・舜・禹の三人うちの誰かが国王だった時代の事だったと思います。(「聖三代」については『Catch32 黄河』で少し触れています)
農業や産業の新技術を開発するのに長けた人がお酒を開発し王に献上した所、王様は「大変素晴らしい物」と認め褒美を与えた上で酒造りを禁止した、という物です。
聖三代の後『夏王朝』が始まり、『夏』を滅ぼした『殷王朝』の時代になります。殷代の遺跡・遺物は沢山見つかっているので(夏時代の遺跡と確定している物は1つも見つかっていません)色々と当時の様子が分かるのですが、気になるのは祭祀に使う器で「酒を入れたのだろう」と考えられる遺品が大量に出土している事です。酒造りの禁止はいつ解除されたのでしょうか。
そう言えば有名な「酒池肉林」の故事も殷朝最後の王だった紂のエピソードです。禁止どころか溺れてますよ?「酒は飲んでも飲まれるな」は人類にとって正しく金言だと思います。
私は普段から特に「自分は日本人」と意識して過ごしてはいません。しかしたま~に「自分も日本的な価値観を持っているんだな」と気が付く事があります。
新しい物好きなアメリカ帰りの友人が「面白い店がある」と私を連れ出してくれた事があります。行き先は当時の日本ではまだ殆ど展開していなかった『コストコ』でした。
凄い物ですね。アメリカ式の「超市場」を存分に体感しました。コストコに行った事のある方はご存じでしょうけど、トイレットペーパーだろうがステーキだろうが有りとあらゆる物がドワ-っと揃えられ積み上げられています。「品不足?何それ」な大量生産大量消費型経済を「豊かさ」と信じきっている「物量の哲学」。
それはいいんですが、日本酒も同じ扱いになっているのを見て「ちょっと待て」と思ったのです。
私が見たのは「シャンペンタワー」の如くドワーっと積み上げられた「久保田 万寿」(箱入り)でした。こりゃないでしょう。有り難みも風情もあったもんじゃない。
つまり古代中国で発明されて以来「祭りなど神聖な事に使われる物」だったように、大分薄れてはいてもどうやら私に取って「お酒」は有り難みや風情を感じ大切に扱う物だった様なのです。こんな角度から「日本人の自覚」を意識する事になるとは。
地震が来たらどうすんだ、と誰も思わないのかしら。