Catch112 地図売場の魔力
世界もすっかり変わり、新しい地図帳でも買おうと考えたのが運の尽き。
私の出身地である新潟県新発田市の公立女子高の教師として東大卒の先生が赴任して来て話題になった事がありました。4年制の大学を卒業した人がスーパーマーケットのレジ打ちになって噂になったり社会人が通勤中に少年マンガ雑誌を読んでいて嘆かれたりするより遥かに前の事です。T先生といいます。
T先生は新聞部の生徒が校内新聞用に取ったアンケートで愛読書の項目に「地図帳」と回答して「やはり変わった先生だ」と話題になっておりました。
T先生が愛読していた物と同じ地図帳を私も手元に持っておりますが、基本的な構成は現在の高校生が使っている物と変わりません。気候の区分、地図の記号の説明や様々な地形の例があり、世界地図、日本地図、地図の図法の紹介やら各国各国自治体の人口に面積、山だの川だの湖だののデータとランキングがあり、最後に索引です。
違うのはベトナムやドイツが1つになったり、ソヴェート=ロシア(ソ連)が崩壊して「何とかスタン」だらけになったり、時代の変化を反映しているくらい。しかしこれは他の副教材についても言える事なのですが、現役の時には「嫌だなぁ」「何が面白いんだ」と真面目に目を通していなかった書籍を、調べ物などがあって改めて読んでみるとこれがまあ面白い事。愛読書に挙げる先生がいるのも頷けます。
本好きの私には元来「書店」という場所は「お金に余裕が無い時はなるべく近付かない様にする」所でした。新書、文庫、雑誌、絵本。どのコーナーもお金が無い時に通りすがろう物ならフラストレーションが溜まるだけです。
そんな中で数少ない安心して通過できるゾーンが「地図売場」と「実用書」だったのですが、最近地図売場も怪しい事に気が付きました。地図帳なんて一冊あれば十分で、あまりにも国境がズレたな、と思ったら適当に買えばいいと考えていたのですが甘かった。
ポーランドの絵本作家ミジェリンスキ夫妻の大作『マップス』を求めて地図売場に行ったら『地図でひもとく日本史の謎』だの『新宿区古地図散歩』だの『衛星画像と資源 sdgs時代に考える経済学』だのすっかり「地雷原」化しているではありませんか。しかも求めるブツは地雷原には売っておらず、絵本売場まで探索する羽目に。薄々感づいていらっしゃるかと思いますけど、お店を出た時には荷物がとても重くなっておりました。
『マップス』は色々な国が作者のイラストで説明されています。名所や食文化、世界遺産に著名な出身者など。中には「シャーロック=ホームズ」なんて架空の有名人も。ウクライナを見たらすでにイラストに描かれたいくつかの物は今回の戦争で破壊されていました。正気を取り戻せプーチン。