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Catch110 そは佐渡にあらず

秘境といってもいいくらい全く知られていない島、粟島。小さいけれど島一つで「粟島浦村」というれっきとした自治体なんですけどね。

 新潟県北部の沖合いに「粟島(あわしま)」という小さな島があります。


 新潟県は南北に長ぁ~く、関東で言えば群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県東部を合わせたくらいの距離感なので、新潟県民でも知らない人がいるくらい。


 佐渡は有名ですが、この粟島は新潟県の本土側の海岸線に平行してやはり南北に長い為、海岸沿いに走る道路や鉄道を行くと小さい割にやたら延々と大きく見え続けます。


 新潟県北部の中心地は村上市です。城下町の佇まいが残る「鮭」と「お茶」の町。郊外の海岸には瀬波温泉という温泉街もあります。お酒好きの方は地酒の「〆張鶴」や「大洋盛」で知っているかも知れません。この村上から山形県の鶴岡市へ繋がる道で粟島は見え続けるのです。


 この辺りは以前は「上海府」「下海府」と呼ばれる地域で、村上とは別の村でした。余談ですが佐渡には「外海府」という地域があります。何か繋がりがあったんでしょうね。海府は「笹川流(ささがわなが)れ」と呼ばれる景勝地ですが、海に迫った山々から流れ出す川が作った小さな谷とわずかな平地ごとに集落があり、ここをぶち抜く羽越本線が通るまでは隣の集落に行くにも山を越えるか船で行くしかない「陸の孤島」が連なっていました。


 実際JR羽越本線の駅名は村上を過ぎると「早川」「桑川」「今川」「寒川(かんがわ)」とナントカ川だらけ。羽越国境に近い「府屋(ふや)」「(ねず)(せき)」(どちらも駅名)までが地域としての「海府」です。鼠ケ関はこの辺りでは比較的大きめの港があり、海水浴場や土産物屋がある少し賑やかな町です。昔はすっっっごくささやかな水族館もありました。旧街道に沿った町の1/3が新潟県、残りが山形県という変な町です。


 粟島の長い軸が本土側の海岸と平行になる桑川・今川辺りは一番距離も近く(20㎞ほど)、島の最高点が260m以上あるせいで見た目には実際以上に大きく感じます。県外からも観光客が訪れる瀬波温泉や笹川流れからこの「実際以上に大きく見える粟島」を見て佐渡と勘違いする人の多いこと。


 佐渡のデカさは実際に見ないと分からないスケールです。佐渡島(さどがしま)をエッコラショと関東に持ってくると埼玉県が半分隠れてしまいます。デカイでしょ?


 しかも粟島よりはるかに離れている(50㎞くらい)ので実際よりも小さく見えます。小さく見えていてなお「デッカ!」と思ってしまうという不思議さ。特に佐渡を見ていないまま瀬波や海府に来ると(新潟市経由で移動すると鉄道でも自動車でも普通は佐渡を見る機会はありません)大抵の人は粟島を佐渡だと思うようです。


 コロナ前に瀬波温泉に泊まった時もおりました。夕日の日本海を見晴るかす大浴場の彼方、「佐渡とは逆方向に見える粟島」を見て「あれが佐渡だよ」オジさんたち。悪い事に瀬波からは佐渡ってそれと知っていなければ分からないくらい小さくしか見えないんですよ。


 そは佐渡にあらず、粟島なり。

海府から山形県庄内地方南部にかけての沿岸部は集落ごとに完結していたかつての日本の生活圏の狭さを思い起こさせる風情ある村並みが残っています。

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