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Catch108 富の使い方

文化や芸術は社会が貧しいと廃れてしまう物です。経済が回って豊かにならないとこうした分野でも発展は望めません。

 月に1~2度新幹線に乗る生活をしています。JR東日本の新幹線には『トランヴェール』という月刊の冊子が各座席にあり、沿線各地の歴史や特産品、温泉などが紹介されています。3月号の特集は長野県 小布施(おぶせ) の葛飾北斎 (ゆかり)の品々でした。


 江戸後期を代表する絵師・葛飾北斎は大変な長命の人で、数え年で90才まで生きました。「引越し魔」としても知られています。生涯で93回。若い時は借金逃れの為だった様ですが(それは「引越し」というより「夜逃げ」と言わんか?)、家人共々画業に熱中する余りゴミ屋敷と化した部屋を片付ける面倒を嫌って新居に移る様になったのだとか。


 それを繰り返すうちに「鬱陶しい近所付き合いや人間関係 (ついでに債務も)をチャラにできる」という便利さに気付いたのかも知れません。村上春樹氏も引越しについて似たような事を書いております(『村上朝日堂』)。


 小布施へは「引越し」ではありませんでした。豪商で文化人だった高井鴻山と江戸で知り合っていたので、小布施の高井邸へふらっと現れたそうです。


 滞在中に地元のお寺に天井画を描いたりお祭りの山車を飾る絵を描いたり、かなりの作品を残しました。そもそも80才を越えて200㎞離れた江戸と小布施を4回往復するとはどういう健脚爺なのでしょう。


 高井鴻山が稼いだお金を地元と文化に惜し気もなく使ったお陰で世界的にも貴重な北斎の絵が地方の片隅に幾つも残る事になりました。今、小布施ではこれらを活かした街づくりを心掛けているそうです。


 北京郊外の観光名所・頤和園(いわえん)やドイツのバイエルン州にあるノイシュバンシュタイン城などは、国政の責任者が国費を私物化して拵えた物で、当時の国民はいい迷惑だった事でしょう。


 海軍の整備に使う筈だった予算を西太后に横取りされた(そのお金で頤和園を造った)清は、その後起きた日清戦争で日本にまさかの敗北を喫しています。そうした愚かな例を知っていると、高井鴻山のお金の使い方は実に健全で好ましく思えます。

他人の稼いだお金を私物化してはいけません。無駄遣い・浪費をしたければ自分で稼いでやってくれ、という話。高井鴻山のは無駄遣いでも浪費でもありませんけどね。

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