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Catch104 時代を進めるために

天災は不条理、不可抗力。戦争や原発事故などの人災は防ぎ様がある物です。

 「革命的楽天主義」という言葉があります。あまり日本語としては良い言い回しではなく、意図する事がとても伝わりにくい「良くない言葉」だと思っています。


 普通の人が「革命的楽天主義」などと聞いたら「常識から断絶した (=革命的)あきれる程の楽天主義」と捉えるでしょう。


 この言葉は資本主義の弊害を意識してその解消を志向する社会主義・共産主義の人にとっては、社会主義革命の達成を目の前で積み上がる難問に絶望せず「それでも望みは叶う」「人間はそこまで愚かではない」と楽天的なまでに信じて目的を遂げる為に努力を続ける事を指します。


 「革命的」は後に続く「楽天主義」を修飾する物ではなく、「革命達成にプラスの作用をするあらゆる行為」を指します。


 分かりにくいですよね。


 成功した革命家は確かに「楽天主義」を心の底に持ち、自分への自信や自負だけでなく「他人を信じる事」を捨てなかった人が多いように思います。


 レーニンしかり、ホーチミンしかり。権力を握るまでは理想と現実が見えていた様に思えるロベスピエールも。


 革命政権のトップとなった後に理想に引きずられて恐怖政治に雪崩れ込んで行きましたけど。社会的暴力 (軍や警察、民兵など)が「正義」を掲げてしまうと、敵対者は「叩き潰すべき悪」となってしまい、惨劇が生じます。


 逆にある程度影響力を持つ「政権とは異なる意見」を暴力を使って排除しないと揺らぐ様な「主義」「正義」とは、言い換えれば「その程度」の物でしかないのです。同じ国民を殺す何の理由にもなりません。


 究極の「革命的楽天家」は1911年に辛亥革命を成功させた孫文ではないかと思っています。この人は「中華人民を救う」という理想の為に、騙されても裏切られても自分と他人を信じ続けた人でした。


 その一途さで時代や人民の意識を変えてしまった強靭な精神と行動力は、インドの独立を勝ち取ったモハンダス (マハトマ)=ガンディーや、欧米人でさえ鼻白む人種差別地獄だった南アを「虹色の国」へ解放したネルソン=マンデラと並ぶ物でしょう。


 こういう“偉人”の行跡を知ると「人間も捨てた物じゃない」と思えて来ます。


 私はその一方で「楽天的に」大衆の善意を信じる事にも危うさを感じています。人間は理想や善意を内側に持つだけでなく、「闇」とでも言うべき負のエネルギーも間違いなく持っていますから。


 皆がいつでも「より良い社会」を求めて投票するとは限りません。民主主義は有権者が考え続け「より良い社会」を求める状況でなければ必要の無い制度です。「偉い人」が決めた事を「何も考えず」無批判に従い続けるのであれば、投票権など要りませんよね。


 理想を持ち大衆を信じる「楽天家」であっても、「人の持つ闇」を軽く見積もるのは間違いだと思うのです。


 天国ではない以上、不利益を被る「弱者」は我々の身近に必ずいます。その不利益を無くす、または減らす事は、私たち自身が暮らしやすい社会を作る事に繋がるのですが、「自分以外の弱者」の苦しみや不利益の解消に関心を持っている人は決して多くは無いと感じます。


 目の前で行われている「いじめ」を「やめれ」と止めに入る勇気がある人が多くは無いのと同じ、人の心の「弱さ」や「狡さ」でしょう。ナチスと当時のドイツ国民 (の大多数)の構図はこの「いじめ」を止めずに傍観している時の後ろめたさと同じです。


 特定の少数者を社会が上手く行かない元凶と決めつけ、「排除すればいい世の中になる」と声高に叫ぶ人を弛く支持したり積極的に反対はしない黙認という「狡さ」。排除される側に自分がなる可能性を考えもしない浅はかさ。


 それを動かし、「止めさせよう」「変えよう」と声を上げる側(隠れシンパで十分なので)へ移ってもらう事に成功してこそ活きる「楽天主義」でしょう。


 人間の持つ闇を見ない楽天主義が歴史を前に進める事はないだろうと思うのです。

時代が進めば科学技術の進歩などで不条理も防ぎ様がある物に変わるのかも知れません。こうした考えも楽天主義かな。

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