Catch100 呼ばれる人呼ばれない人
コロナウイルスの再拡大とか北朝鮮の飛翔体とか、新年っぱらからロクでもないニュースが続いております。
小田和正さんがメインになっている『クリスマスの約束』という1年に一度だけ放送される音楽番組があります。小田さん自身が澄んだ声の素晴らしい歌い手である事に加え、番組に集うゲストの方々が洩れなく実力を備えた人ばかりなので、最近ではあまり見かけないクオリティの高い音楽番組になっています。
申し訳ありませんが、紅白歌合戦など全然及ばない極上の時間。
2021年はスターダストレビューの根本要さんやスキマスイッチ、JUJUさんなどがゲストとして出演し、様々な名曲を披露していました(小田さんや自身の持ち歌とは限りません)。
紅白歌合戦は「他に見る番組が無い」「その年最後の家族のルーティン」といった消極的な理由で見ていますけど、私は最後まで見ずに適当な所で (眠くなったら)引き上げてしまいます。つまり大抵の出演者が熱唱する歌やパフォーマンスに興味が無い、とても失礼な視聴者な訳です。結構な人が似たよう“紅白視聴者”なのではないでしょうか。
大阪で起きた放火による大量殺人事件や神田沙也加さんの突然の死去など、年末に報じられた諸々の暗いニュースは、それぞれが「別の角度」からだった為に、より広い感じで暗い気持ちにさせられた物です。そうした中で「うっせぇ」を連呼するそれこそ「煩い」歌とか「生命に嫌われる」とか、感じの悪い言葉、言い換えれば「マイナスの力」を歌詞に組み込んだ歌を聞いてしまうと、「今年も色々大変だったけど、来年は少しでもマシな年になるといいな」と思う気持ちが萎むような気がします。
『クリスマスの約束』の出演者たちは「歌が上手い」というだけではなく、松たか子さんにしても矢井田瞳さんにしても「聴くと元気になる」「頑張ろうとしている人の後押しをする」作品を発表する「プラスの力」を持つ、とても健康的なアーティストという共通点がある様に思います。これは小田和正さんの「美学」なのでしょう。
そうした中でたま~に出演する宇多田ヒカルさんは、私の中ではやや傾向が異なるアーティストに感じます。もちろん彼女も広い音域を持つとても素晴らしい歌手なのですが、「歌の作り手」としては何か「危うさ」を感じる時があります。
「死への衝動」、“タナトス”に通じる「力弱さ」とでも言いましょうか、彼女の作品によく現れる「切なさ」が、他の「よく呼ばれる人」と系統が違う風に感じるのです。
宇多田ヒカルさんは『クリスマスの約束』に「呼ばれる人」と「呼ばれない人」の中間にいるのかも知れません。
同じ聴くなら自分の居場所を求めて頑張る人を力づける歌がいいなあ。