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Catch1 言葉は毒にも薬にも

しばらくは以前に発表した物と新作の混合になると思います。気が向いたらお付き合い下さいませ。

 1980年代頃に、確か新潮社だったと思いますが、文庫本用のカバー(書店でサービスに付けてくれる物です。当時は出版社ごとに紙製カバーを書店に卸していました)にキャッチコピーを付けていた事があります。


 青空を見上げる椎名誠さんの写真と共に『風に吹かれてビールを片手に本を読む。これぞ人生のヨロコビの三重攻撃だ』

 腕組みした村上龍さんの写真と共に『医者にも治せなかった病いを一冊の本が治す事がある』



 「言葉」を不特定多数に向かって発するという行為は為政者や報道関係者、文筆家など、つい最近まで特定少数の人にだけ可能な“特別な”行為でした。


 通信手段の劇的な発達によって、今や私のごとき市井の「ど素人」ですら「言葉」を見知らぬ方々に向けて呈示出来るようになっています。


 “言霊(ことだま)”を引き合いに出すまでもなく、言葉というのは「力」を持っています。人が他人にある程度複雑な内容の意思を伝えるには言葉を使うしかないからです。


 「ジェスチャー」と「手話」の差を考えてもらうと分かりやすいかと思います。

 また言葉という物は乗せる媒体によっても使い方を区別して注意しなければいけない、身近な物なのに意外と面倒な代物です。

 目の前にいる人に口頭で発する場合。

 電話越しの場合。

 紙に文字でしたためる場合。

 ワープロで書き「擬似活字」状態にする場合。

 本物の活字。

 ラジオ。

 映像まで一緒にお届けされてしまうテレビ。

 そしてインターネットの登場で、その全てがごちゃ混ぜになったような状態。


 あまりに普通に使い続けている為、ただの道具、ただの手段と、言葉の持つ力の怖さを意識せずに多くのツールの中にいる訳ですが、他人に自分の思っている事を伝えるのは、普通に考える程「容易い」物ではありません。

 一対一のやり取りでさえ、自分で修練し工夫を積み重ねて「言葉を使いこなす能力」を高めておかなければ、中々自分の思いは正確には伝わらない物です。

 況してや見も知らぬ不特定多数に向けてとなると、余程慎重に言葉を選ぶ能力やセンスが無ければ「自分にとって」危険です。


 その事を、皆さん本当に分かっているのかな? と、時々首を傾げたくなるような「雑」な文章や言葉に出くわす事がもはや珍しくありません。


 言葉の雑さと連動して、人間関係の距離の取り方が下手くそな人も急速に増えております。

 言葉が他人に意思を伝える手段である以上、良好な関係を築くかギスギスした物にするかなど、言葉の選択次第で自由自在にコントロール出来る物なのですけど。


 「もう少しキチンと仕事をして欲しい」という事を伝える時、「こんな事も出来ないのか!」と

「あなたならもう少し頑張れると思う」では言われた方がどう「転がるか」なんて分かるでしょう。


 ネットに言葉を流している皆さんはお気づきの方も多いと思いますが、言葉は人を傷つける凶器に簡単に変わります。

 そして反対に傷つけられた人を癒す救いにもなり得ます。


 自分が反撃で傷付く事がないと自分の安全を確信した時に、人はいくらでも残酷になれるという嫌な面は、人間の本質の一部に確かに存在します。


 『ハリー=ポッター』に出てくる「透明マント」を被ったかのように「匿名」という“隠れ蓑”に安心して「雑な言葉」「凶器と化した言葉」を撒き散らして平気な人は『2ちゃんねる』などで特に多く見られます。


 しかし、自覚のないままに言葉の劣化を繰り返す人は「自分ではネットと現実を上手く使い分けているつもり」でいても「他人を傷つける事に鈍感になっている自分自身」を作り上げます。



 言葉を選ぶセンスを磨いたり他人との距離を上手く取る、「現実生活での努力」以外に「凶器と化している自分」を変える方法はありません。


 まずは自覚する所からになりますけど。


1日おきくらいで連載予定です

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