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乙女2.




人の脂の匂いが篭るこの場所をアンリは知らない。ただわかるのは、地下であることと自分以外の女も10人程度はあるということだった。


 ーーー蹴られたお腹がジクリと痛い。もう、嫌だ。アンリは泣きたい気持ちでいっぱいだった。


周りにいる自分以外の女性たちからは啜り泣く声が聞こえてくる。自分たちはどうなってしまうのだろう…。



「お頭〜、女達の泣き声が煩いんですけど」


「あ?いつものことだろ」


男達の話が聞きながら、牢にぶち込まれているこの状況に絶望感しか感じない。自分の両手両足は錆びた鎖で繋がれて、口も縛られていた。他の女もそうらしい様子。


アンリはなぜ自分がこんなところにいるか、わからなかった。


わかることは街を歩いていたところ男に道を聞かれ、当然わかるはずもなかったのだが、そのまま強引に裏道に連れられ、暴れるアンリを黙らせるため蹴りを入れられながら、いつのまにかここにいたということだけ。



(…お母さん…助けて…)


じわりと涙が溢れる。薄暗い廊の中、自分の視界がグズグズになるのがわかった。でも手足が縛られ、声も出ず、涙は垂れ流すほかなかった。


涙が太ももをどんどん濡らしていく。


 なんで。ーーーなんで、わたしこんなことになっちゃったんだろう。


本当は今頃寮の手続きをしたりして、浮かれ気分で部屋に向かっていたはずなのに。なんで。なんでなんでなんで…



「今回は量は少ないが1人魔力保持者がいるようだからな。高額は付くだろう」


「あー、そっすね。ルマンドールの女っすね」


「ああ。だからそれ以外は、"いつも通り"黙らせていいぞ」


廊の外にいた2人の男。どちらも汚い服を着て、腰には使い込まれたような剣が革鞘に収まっていた。明らかに表にはいない、裏の世界の男達だ。



薄汚い顔でこちらを見てニヤリと笑った。



1人の男のポケットからジャラリと一つの鍵を徐に取り出した。嫌な予感がする。隣の女性から、ヒッと息が止まった声が漏れてきた。


そんな。まさか。



「お邪魔しまーす」


ゲスめいた笑顔でこちらをぐるりと見回す男。全員思わず下を向いたのがわかった。本能的にまずいと思った。この男と目が合えばーーーー


掌からブワッと汗が出るのがわかった。呼吸も、落ち着かせたいのに乱れる。

心臓も痛いほど高鳴っていた。いやだ、いやだいやだっ!!!




ーーーーそして。






「…んぅ…!やぁ…!!」


「ってぇ!黙れっつーの!


「っぁあ!」


目の前の女性が襲われていた。目の前で、私の、目の前で。


汚い口が、女性の口をこじ開けていた。手足を縛られた女性が、涙を流しながら、ぐちゃぐちゃと音を立てながら、襲われていた。


そして舌を噛み、抵抗し、お腹を殴られるのが目に入った。


(い、やだ)


アンリは茫然と見ることしかできない。


窓もないこの牢は、何もない牢だ。壁にはアンリたちを繋ぐ鎖が撃ち込まれていて、こちらからみても頑強にできているように見える。


音は、その男と女性からしか聞こえないのだ。鎖の音と嫌な音。


足を引きづりながら逃げる女を乱雑に引き寄せながら、男はさも楽しそうに触っている。自分もいつかこうなるのだろうか。


嫌だ。


 私はただ、ルマンドール学園に入学し、できることなら女でも働ける職場をつき、田舎にいる弟たちが幸せに暮らせるように心ばかりの資金提供をしながら、普通の幸せが得られればそれでいいのだ。なのに、なぜ、こんな。


そんな思いが止まらなかった。



(…誰か…助けてッ!!!!)



思わず天に願った。誰でもいい。誰かこの状況から助けて欲しかった。


アンリはギュッと瞳を閉じーーーーーー








突然、天井が崩れ落ちた。



「ひょぁぁぁぁぁ!!!???」


間抜けな声で叫ぶ男と共に。









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