プロローグ:あるいは自己紹介
楽しんでいただけたら幸いです。
異世界転生、と聞けば諸兄らはどのようなイメージを脳裏に浮かべるだろうか。
うっかり地球で死んでしまって? なぜか自分だけ……あるいは日本からの来訪者にだけ特別なギフトが送られ、生前での振る舞いへのあてつけかのように無双する……そう、ただの夢想劇を思い浮かべるだろう。
だが……否、断じて否ッ! であると声高く主張したい。
なぜなら……現実というものはどこまでも現実であり、それはたとえ異世界という非日常であっても侵食してくる、「現実」であるからして。
……つまり、意気揚々とこの世界に投げ込み、「大丈夫さ、だってあんたは不正持ちなんだから」と何の保証もなく私の心配も懸念も十把一絡げに巴投げした神……いや、あのクソロリババアもまた現実で。
……その不正とやらにおよそ使用に耐うる要素が一切見えないのも、また現実であり。
……異世界にまで来て、植生すらあやふやな樹海のなかで干からびようとしているのも、現実なわけだ。
眼前に浮かぶ、半透明のプレート……唯一私を夢想へ導くための縁で、まだ利用できそうなそれを、脱水に霞む目で見る。
そこには、相変わらず用途不明な文字列――『輪廻転生可視者』だとか『赤熱鉄耐性』だとかいう、中学二年生でももう少しまともなネーミングが出来そうなスキルが並んでいた。
そして、死の狭間にいても尚発動する気配のないそれらの産廃に皮肉げに唇をもたげ、今は少しでもこのだるさから開放されるべく、そっと硬い木に体重を預けてまぶたを落とした。
これは、英雄譚でも無双劇でも、はたまた特別な人間の伝記でも何でもない。
ただ、異世界というものに幻滅した白髪の少女がひっそりと紡ぐ……。
ただの、手記であると断っておこう。
「――――――おやすみ」
ぽつり、と儚く呟いた。