表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤクザ者  作者: 夜市
序章
3/6

3

 すると男は和真を食い入るように見て、

「ちゅうか、なんちゅう格好してんねん。ええ男が台無しや」

と言われ、和真は店の窓ガラスに映る自身を見た。

 ボロボロのダウンパーカーに血だらけのアウターウェア。紺色のジーンズには赤い斑点模様が出来ている。そして、ボサボサの黒髪はなんと血生臭いことか。

 何も答えずにいると、男は溜息を吐いて、

「ジブン、名前は?」

と聞かれたが、答えることを躊躇してしまう。なぜなら、男が和真の命を狙っていないとは限らないからだ。

 訝しむように男を見ていると、彼はまた溜息を吐いた。そして、男はガシガシと頭を掻いて、

「ワシが信じられんならそれでもええ。少しでも信じよう思うなら、黙ってついてこい」

 男は背を向けて歩き始めた。静かな路地にカッカッという足音が響き、男の背がしだいに遠退いていく。

 行くべきか行かぬべきか。和真は悩みに悩んだ末、男の後を追うことにした。

 飲み屋街を抜け、小倉駅方面に向かって歩く。感じる人々の視線。これでは見世物小屋と変わらない。

 いったいどこへ向かっているのか、そのことを聞こうとした矢先、男性はコインパーキングへ入った。

「あんた、なんでーー」

「ワシはあんたやない。岩島いわじまや」

 精算機にお金を入れようとしていた岩島が和真をジロリと睨む。その目は威嚇する猛獣のそれと変わらない。

 いいい、と和真は舌をもつれさせて、

「岩島さん、なんで俺を助けてくれたんだ?」

「助ける? 何のことや?」

「俺を助けてくれたんだろ?」

 岩島は精算機からお釣りを取って、

「何でワシがお前を助けなあかんねや?」

 和真は返事に困った。質問に質問で返されては答えようがない。それに、てっきり助けてくれたのだと思っていたものだから拍子抜けだ。

「ワシはおもろいモノ(・・)見つけただけ。ただそれだけのことや」

 男性が白の乗用車に向かって鍵を向けた。セダンタイプのクラウンから、鍵が開閉する音が聞こえてくる。どうやら、それが岩島の車らしい。

「早う来い。早う来んと置いてくで?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ