新しい家、帰る場所
村から視界が切り替わり、目の前には巨大な壁が映し出されている
無事学園都市に着いたようだ。サーニャとアリーさんは初めての現象に暫き思考がついていかず呆けていたが
「・・凄い!」
サーニャはやはり魔法関係が好きなんだろう、興奮しながらしきりに質問を投げつけてきた
質問されてもちゃんと説明出来ないので、なんとか宥め学園都市の中へと入る。
そのまま皆んなでヴィン様がいる第3魔法科学校へと向かう
校門で門番に聞くと今は居ますとのことだったので連絡をしてもらい校長室まで通してもらう事ができた
「海斗殿!」
中にはヴィン様やサーサさん、マルコさんや他に残っていた職員達が詰め寄り会議をしていたみたいだ
「ヴィン様、こちらアルフさんから預かった手紙です。ここに今回の報告が載っているはずです」
手紙を受け取ったヴィン様が読みはじめる。
静かになる部屋には手紙をめくる音だけが響いている。時々こちらに視線を向けて驚いている表情を見せてくるんだけど、なんだろうか?
手紙を読み終えたヴィン様は目頭を押さえて大きく深呼吸を1つ
「成る程な、こんな事になっていたとは。それに・・・」
こちらを見つめてくるヴィン様
「またしても海斗殿に救われたのだな、都市を代表して礼を言う」
ちょ!?アルフさん、一体何を書いたんだ?
「ちょっと見せてくださる?」
サーサさんがヴィン様から手紙を受け取り読みはじめる。時々「えっ?」とか「まぁ!」とか言いつつ、海斗を見てくる
本当に何書いてるの!?そこに
「あの、そこに何が書かれているのですか?」
それに答えてくれたのはヴィン様だ
「うむ、1万もの魔物に対してこちらは約3千後半、数としてはかなり不利で作戦も途中で壊されたと書いてある。
しかし、海斗殿のSAなる音の力で味方を強くし、敵を倒す事に成功させたと書いてあった。そしてーー」
その後の2千の魔物に対するバズーカ事件や転移、魔王城の存在と消滅、魔王を捕らえて王都へ行くので安心して欲しいと、事細かく報告されていた
何故かその書き方は海斗に対する印象を少しだけ良くしたと思いきやその後大幅に落とし、周りを巻き込み被害を大きくさせるタチの悪い人物像を彷彿とさせるようだったみたい
アルフ・・あの野郎
海斗の中のアルフに対する評価が軒並み暴落していく。
「ま、まぁ海斗殿のおかげでこの都市が救われのは間違いない。ギルドからの報酬では少な過ぎる
何か欲しい物はないか?」
そう言われても困る。今の所欲しい物は無い
うーんと唸っていると視界にサーニャが入った。あ!そうだ
「それなら何処かに土地を紹介して貰えませんか?」
この学園都市では住民登録をしないと土地は買えない。サーニャは子供なので保証する年齢に引っかかる。
アリーさんはこれから登録をしないといけないが、今は魔王のせいでゴタゴタしており登録は時間がかかりそうだと街に入る時に門にいた兵に言われた
なので早目にサーニャとアリーさんが住める場所を確保する為にヴィン様の権力を利用しようと思ったのだ
「なんだ、海斗殿はこの都市に住むつもりなのか?」
「と、いうか拠点を持っておくのもいいかと思いまして」
という設定にしておく。サーニャは別の学校だし、いざこざになるのは勘弁したい
「うむ、それならば・・」
ヴィン様が徐ろに立ち上がり机から地図と書類を取り出した
「この家は都市の中央近くで交通の便もいい。家具はそのまま残っておるしどうだろうか?」
書類には家の場所と間取り、権利書がある。家は2階建て、サーニャとアリーさんが住むには良い感じだ
「あの、この家は?」
「いくつか土地を持っていてな。その中の1つなのだよ。海斗殿には出逢った頃から世話になりっぱなしだからな、考えてはいたんだ
しかし、無欲そうな海斗殿に何を贈れば良いか迷っていてな。考えていた時丁度出てきて候補に入れておいたなのだ
まぁ、海斗は色んな所へと行くのだろう?ならば代わりの者が住んで家の維持をしてもらっても良いのではないか?」
アリーさんとサーニャを見て微笑むヴィン様
うお!ヴィン様イケメン過ぎる!どうして土地紹介からそこまで読むかな?
確か馬車を助けて護衛してる時に自己紹介で旅をしていると言う話をしたけれども
兎も角、ヴィン様には感謝しかない
有り難く頂戴して皆んなで家を見に行く
「わあ、凄い立派な家」
メアが感嘆の声で見上げている。他の人も頷いていた
「本当に良いのですか?」
アリーさんが海斗に心配そうな顔で聞いてくる。
「ヴィン様も言ってたじゃないですか。俺は旅しているので家を維持していくのが難しいんですよ。なのでアリーさんが住んでくれると有難いです」
サーニャは別の学生だ。俺の土地名義にしていれば文句もないだろう。落とし所としてはかなりグレーだけど言い訳にはなるはずだ
サーニャの稼いだお金はその後の生活費として使って欲しいし
「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいのか」
「良いんですよ。今まで辛かった分これからサーニャと幸せに暮らして下さい」
「はい」
アリーさんの素敵な笑顔で満足できた海斗。サーニャが海斗の側にやって来て
「もう行くの?」
海斗の服を握り締めて俯いている
「ああ、これから王都へ行かないと行けないからな」
「帰ってくるのよね?」
サーニャは目に涙を溜めながら肩を震わしていた。
最初の出会いは最悪だった。非常に迷惑だと思ったし正直関わりたくないとも思っていた
けれどもサーニャはただ不器用で母親の為にいっぱいいっぱいだっただけだと分かると放って置けなくなった
こんな小さい子供が苦労をし不幸になるのは許せなかったんだ
だから救ってあげたいと思いここまで首を突っ込んだ
だからこれからも偶には面倒を見てやらないとな
サーニャの両肩に手を置く
「もちろんだ、ここは俺の拠点だからな。ちゃんと帰ってくるさ
それまではアリーさんとこの家を頼んだぞ」
サーニャは涙を拭いめいいっぱいの笑顔で頷く
「任せて!次に会う時にはもっと強くなっているんだから!
だから・・いってらっしゃい、海斗お兄ちゃん」
海斗は驚き、そして笑いながら顔を真っ赤にしているサーニャの頭を撫でる
そしてサーニャとアリーさんと別れを済ませて学園都市の外へと出てきた
海斗と東堂兄妹、そしてレオンとメアも付いてくると言う
「事の顛末が気になるし、俺達も他の街を見て回ってみたいんだよ」
そう言えばダンジョンとか行ってみたいとか言ってたね
「じゃあ、そうと決まれば行きますか!王都へ」




