意見分裂
魔王・・この世界には存在した事は無いそうだ。
しかし、今回の混乱の黒幕であり魔物を操る術を持って学園都市を襲ってきた。
そして今度は1万もの魔物の進軍を王都に向けてくると言い出す
異世界特典に載ってた魔王、もしかしたら今回の魔物を操っていた魔王というのは同じ日本人なのかもしれない
海斗の嫌な予感は拭えない。違ってあって欲しいと願うばかりだ
「海斗君、僕はこの事を今すぐに王国に連絡しようと思う。魔物が1万も進軍してくるのが本当だとしたら早めに迎撃の準備を始めないとならないからね。」
アルフさんはやっぱりまだ王国と繋がりがあったんだね。
此方も色々と準備や情報を集めないと思っていると後ろから服を掴まれた。振り返ると青い顔をしたサーニャが立っている
「ねぇ・・さっきのあいつ・・クマランの近くの村から襲うって・・」
そう言えばそんな事言ってたよな
「その村、私の村・・」
なっ!?
「どうしよう・・お母さんが、お母さんが!」
サーニャは泣きながら海斗に縋り付いてくる
村の人がどれくらいいるのかはわからないが、魔物が来るまでに避難させるのは難しいかもしれない
なら村の前で迎撃するしかないと思いアルフに提案してみるが
「それは難しいと思う」
「!?どうして?」
「王都は国の中心で絶対に落とせない場所だ、だから軍を王都から空けるのは無理なんだ。1つの村とは天秤にかけるまでもない。申し訳ないんだがね」
「そんな!?お母さん・・」
サーニャは泣き崩れてしまう
くそ!元騎士としての言い分なんだろうけどさ。
騎士としての発言だと言うのは分かるが納得は出来ない、出来るわけがない!
大勢を助ける為に少数を切り捨てるなんて納得できるか!
何か無いのか・・
海斗は黙り込み悔しさの表情で考え込んでいると
「それは学園都市をも見捨てると言う認識で良いのか?」
ヴィン様が他の学校の校長や先生達を連れて現れる
「これはヴィン様、そういう訳ではないのですがあの言い分だとそう聞こえてしまいますね」
アルフは困ったように答えた
「クマランの村は王都とこの学園都市、どちらにも行く事が出来る村だ。あの黒い奴の言う事が誠で無ければ、此方に向かって来る可能性は大いにある
それとも得体の知れない奴の事を鵜呑みにして王都の中で最大戦力を使わずに篭る気か?」
そう言われて今度はアルフが黙り込んでしまった
「儂らの方針はクマランの村の前で必ず迎撃してみせる。何処にも被害は出させない!それが学園都市ウォーレンの総意だ。王国にはそう伝えてくれ」
ヴィン様はそう言って先生達を連れて校舎内へと歩いて行った
ヴィン様めっちゃカッコいい!惚れてまうやろー!
サーニャはヴィン様の言葉を聞いて安心した後、また泣き続けた
「良かったなサーニャ、俺もヴィン様の意見に大賛成だ!こうなったら俺もやれる限りの事をするよ。村を、お母さんを護り切るぞ!」
サーニャの頭を撫でて腹を決める
「僕だってこの学園都市や先生達を失くす訳にはいかないさ。先生をやっていたから情も湧いてるしね。王国には出来るだけ此方の要望が通るように交渉してみるよ」
アルフはそう言ってウルを一瞥した後、立ち去っていく
結局ウルは何だったんだろう?操られていたのかな?それにしてはマリーさんの昔の事を見てきたかのように喋っていたからなぁ
俺がこの世界に来たのはつい最近だ。もし、魔王が日本人ならあり得ない
だとしたら魔王は日本人じゃない?
「ウル・・・あ!?もしかしてこの人、近所に住んでた人かもしれません」
ずっと考えていたマリーさんがウルを見ていて思い至ったようだ
昔、近所に似たような子が住んでおり両親に虐待をされていた
1人公園のような場所で1日の大半を過ごしていたのを見た事がある
マリーさんは1度だけその男の子が痣だらけになっているのを見て手当てをしてあげた事があった
その時に、相談を受けたが同じ年位の女の子が何か出来る訳もなく、元気を出してとか君が強くなれればいつか両親からも虐待を受ける事もなくなるとか、強い殿方はカッコいいよ!カッコよくなればモテるんじゃないかな?などど励ましたりしたそうだ
その後、その子を見た事は無くその後自分も引越しをしたので会う事はなかったという
あぁ、それは勘違いしそうだ。そして勘違いしたままストーカー化してしまったと
ずっと見られていたのだと思うとぞわりと身震いするマリーさん
アリアはマリーさんに抱きついて慰めている。こうして見ていると仲のいい姉妹みたいだなぁ
それにしてもウルは救われない人生だった。決して許される事では無いけれどもさ
彼の場合は環境のせいだったのか、歪んでしまったのだろう
手を合わせて黙祷を捧げ布を被せた
先ずはこれからどうするかだ。時間はあまり無い。
奴の言う事が本当なら2週間、ここから準備を始めて村に向かっても1週間は過ぎるだろう。そこから避難を開始しても魔物が来るまでには間に合うかどうか
アリアとマリーさん、サーニャを連れて校舎内へと歩き出しヴィン様の所へと向かう
案内してもらうと大きな会議室で話し合いを進めていた
「おお、海斗殿。先程はアリアを助けてくれてありがとう。本当に助かった」
ヴィン様が頭を下げてお礼を言って来たので護衛ですからと返しておいた
「それで話はどのようになっているんですか?」
ヴィン様によると意見は分かれているそうだ。
クマランの村の前で学園都市の戦力だけで迎撃する派、何とか王国から軍を派遣してもらうようにギリギリまで交渉する派
まぁ、この学園都市だけでは戦える人なんてたかが知れている。先生達と冒険者合わせても百数十人
生徒達を連れて行く訳にも行かない。
なら軍をなんとか派遣してもらえないか交渉した方が生存率が上がると
誰もが死にたい訳では無い。
話し合いは平行線のまま時間だけが過ぎていく
「海斗殿、何か妙案は無かろうか?」
ヴィン様が急に話を振ってきた
ええ!?俺ただの冒険者なんですけど?
「いや、海斗殿なら形勢逆転の作戦が思い浮かぶのではないかと思ってな」
何その丸投げ感!?
先生達から期待の目を向けられる。
ええー、どうしよう。
うーん、あ!それなら
「あの、土魔法って穴掘れます?」




