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第一章 旅立ちは突然に。8

 そうはいっても。


 明日からの予定といっても、まずは寝床の確保と仕事の確保。とにかくそれに奔走するしかない。


 何故なら……。


-ーお金がないんだもの。 


 いいお仕事が見つかったものだから、つい前のお邸で頂いたお給金を全て国に送ってしまったのよね。

 わたしは足を止めないまま懐から小さな皮財布を取り出した。

 15才の誕生日に下のお兄様に頂いたものでがま口の金具に小さなピンクの宝玉がついていて可愛い。

 パカリと開けて見ると中には銀貨が五枚と銅貨が十枚ほど。ちなみに銀貨一枚で庶民街の食堂なら夕食がお腹いっぱい食べられる。

 宿ならお風呂ナシ食事が一食ついて銀貨一枚。

 お風呂アリで朝夕の食事がついて銀貨三枚というところ。

 銅貨なら一枚でパンが一つ買えるかしらね。

 ボソボソパサパサの味気ない黒パン限定だけど。

 銅貨十枚が銀貨一枚の価値だ。


「はあ」


 思わずため息がこぼれてしまう。

 とりあえず今日のところはお風呂は我慢するしかないとして、お昼ご飯も抜きで銀貨一枚の出費。

 お風呂ナシでも桶と湯を借りて身体を拭いたり髪を洗ったりは一応できるから、数日なら我慢できなくはない。

 できればお風呂にはちゃんと入りたいけど。


 貧乏公国とはいえ、わたしのお家は王城である。

 当然お風呂くらいはある。

 これまでお世話になっていたお部屋にもお風呂はあったし。……と思い出してしまうと頭につい「またアンナの所でお世話になったら」と甘い考えがもたげてしまう。


「ダメダメ!もうアンナを自由にするって決めたじゃない!」


 わたしはブンブンと頭を振って一人ごちた。 


 アンナはわたしが国を出る時に半ば無理矢理について来てくれたわたし付きの侍女だ。

 子爵家の三女で親に押し付けられそうになった婚約が嫌で逃げるように王宮で勤めるようになった。

 王宮侍女なら結婚の際の良い格付けになるし、花嫁修行にもなる。アンナの親御さんはそう思ってアンナの王宮勤めを許したんだろうけど、五年前に王宮に上がってからこちら、アンナは親御さんの度重なる退職の催促をまるっと無視して王宮で働き続け--今年で23才になる。

 正直結婚適齢期は逃している。

 あれ?ということは主従ともども嫁き遅れ?

 いえいえいえ。

 わたしはともかくアンナにはいい人がいるもの。

 だからわたしはアンナに頼りきりの生活から自活すべく通いではなく住み込みにしてもらったのだ

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