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第一章 旅立ちは突然に。4

 正直、あの事に関してはわたしに非はないと思う。



 だっていつもと違って何も壊してしまってもこぼしてしまってもいない。


 わたしは何もしていない。


 ただ、わたしの容姿が一部の男性の気を引いてしまうらしいというだけ。

 この邸のご子息様--わたしが家庭教師をするお嬢様のお兄様がその一部の嗜好を持っていたということ。

 そして使用人には何をしても許される、そういう思考回路を持った人だったというだけ。


 わたしはお兄様たちや城の文官武官たちが言うには「ロリ巨乳」という分類に入るらしい。


 20才を過ぎた嫁き遅れなのにロリって、とはわたしは思うのだけど。

 どうやらそうらしいのだ。


 

 わたしは決して人目を引くような美人とか可愛いとかいうわけではない。

 他人よりも少しばかり若くは見られるかもっていうくらい。

 身長は平均よりも少し低め、下手をしたら成人前の子供と間違えられる顔は若々しいというのではなく幼さ顔というものらしい。

 ちょっとだけ自慢の淡いプラチナブロンドの髪にスミレの色のクルリと大きい瞳。頬には薄くそばかすがある。

 癖のある猫っ毛はすぐに広がって絡み合ってしまうけれど、きちんと手入れをすれば鏝を当てなくても緩やかに波打ってフワフワと背中に触れる。

 肩や背に触れるその柔らかな感触がわたしは好き。


 お仕事の間は邪魔にならないように頭の後ろできっちり丸めて縛っているけど。


 コンプレックスは大きすぎて身長とのバランスがとれていない胸。

 初対面の男性の約半数くらいはわたしの顔を見た後にチラリとそこを見る。

 中には無遠慮にジロジロと眺める人もいて気分が悪くなる。重いし肩こりもするしでもっと顔と身体に合ったサイズだったら良かったのにと思う。

 思えばわたしの人見知りはきっとこの胸とこの胸に向けられる視線のせい。

 


 新しいお邸のご子息様もそういえばそうだった。


 二日目の昼にメイド長さんに連れられて挨拶に行ったわたしに、


「へえ?家庭教師にしてはえらく若いね。いくつ?」


 そう質問するご子息様の視線が二度ほどわたしの顔と胸を交互に見てそれから胸から離れなくなった。

 そこまで不躾であからさまな人も珍しくて、怒りを通り越して呆れてしまった。

 メイド長さんもその視線に気づいたのだろう。

 挨拶が済むなりサッサとわたしの手を引いてその場を離れた。


 それでも地味で野暮ったさ満載の嫁き遅れ女にわざわざチョッカイはかけまいと思ったわたしが甘かった。

 今のわたしは目立たないように髪を茶色に染め、髪はひっつめ頭、瞳の色を隠すために色付きの眼鏡をかけている。


 わたしの髪と瞳、プラチナブロンド自体はさして珍しいものでもないけれどそれでもわたしのように真っ白に近い淡い色味は多くない。

 そしてスミレ色の瞳はフランシスカの王族が持つ色でとても珍しい。

 と、いうか王族と親戚ですよ、と言って歩いているようなものだ。

 実際親戚なのだけれど。


 

 わたしは住み込みで働いていた。

 家庭教師としてだけでなくお嬢様のお話し相手としても雇われたから。 

 わたしにとってもちょうど良かったから二つ返事でお邸の片隅に部屋をもらった。

 本来使用人は別棟に相部屋を与えられるからちょっとした特別待遇。わたしの所作を見た奥様が出来るだけお嬢様の近くで見本になるようにと言った。

 朝と昼はお嬢様と一緒に食事をとる。メニューは別。

 夜はお嬢様はご家族とご一緒にとるから、わたしは使用人用の食堂でまかないを頂く。

 夕食時には他の使用人とおしゃべり。


「この家のご子息はたちが悪いからあまり近づかない方がいいわよ」


 と忠告された。

 どうやら以前に無理矢理メイドに手を出したことが何度もあるらしい。


「気を付けます」


 と答えたものの、わたしなんかにわざわざ手を出したりしないでしょ。と内心では思っていた。

 わたしはお嬢様の家庭教師件話し相手だし、他の使用人と比べても接触は少ないはずだ。


 自分から近寄らなければきっと問題ない、なんて思っていた。



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