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第二章 新しい仕事と生活。1

 船旅は3日間。

 波は穏やかだったし、天候にも恵まれていた。


 なのに情けないわたしは、船酔いになった。



 船というものは見るばかりで乗ったことがなかった。だけどわたしは勝手に自分は絶対大丈夫!とか甘い思い込みをしていた。

 だって、馬や馬車だって揺れるけれど、それで酔ったことなんてなかったもの。


 結果、仕事どころか客室の一つでずっと寝ているだけの船旅。

 船を降りてから、馬車を借りて半日。

 小さな街で一泊して休息を取った。


 まだ気分が悪くて、客室のベッドに押し込められた。少し硬いベッドの上に寝転びながら、わたしは決意する。


 きっとこの具合の悪さが改善したら、しっかりお仕事して、名誉挽回してみせる、と。



とはいえ、馬車の中ではなかなか仕事といっても難しい。

 そもそもリルは馬でわたしが乗った馬車の隣をずっと併走している。 

 雇い主が馬で、雇われた側が馬車だなんておかしいわよね?


 わたしだって馬には乗れる。

 むしろ得意なくらい。

 だからそう言ってわたしも馬でいいと言ってみたけれど、

  

「ちょっとした遠乗りくらいでしょう?長時間の乗馬はまた違いますよ?お尻も痛くなるし、疲れれば危険も増える。怪我でもされては面倒ですから大人しくしてください」


 なんて、言われてしまった。

 ちょっと悔しい。けれどそれもそうではある。


 ただ面倒だなんて。


 その言い方はよくないんじゃない?

 リルったらこのところこんな風にいじわるな物言いをすることが多い。

 再会して最初はそうでもなかったのに。

 いつからかしら。


 たぶん、街で一泊した後あたりから?

 わたしがそう考え込んでいると、馬車が止まった。 窓から外を見ると、街道をわずかに外れているようだ。木が途切れ広いスペースの開いた場所があって、いくつか焚き火の跡が残っていることから、旅の馬車が休息を取る場所なのだろうとわかる。


 もっと見ると、他にも一組同じく馬車を止めている一団がいた。


 彼らも獣人の一団らしい。


 大きな荷馬車もあることと、服装から、港から荷を運んでいる商人だと思う。


--あのおじいさんが主かしら。


 ひときわ恰幅のいい年配のおじいさん。

 丸っこくて茶色い耳。

 お尻にはやっぱり丸っこい茶色の尻尾がぽっこりズボンから出ている。


 きっと熊の獣人ね!

 大きくて、がっしりしている。


 野生の熊みたいにハチノコが好きなのだろうか。

 あとシャケと?


 

 そういえば今更気づいたけれど。

 ここって、モフモフパラダイスなんだわ。


 わたし以外み~んな獣人。

 み~んなモフモフ。


 右を見ても左を見てもモフモフ。

 そのフサフサモフモフ感にわたしはうっとりしてしまう。触らせて貰えればきっともっと幸せな気分になれるけれど、まずは触らせて貰えるように仲良くならなければ。

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