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【残念★超絶美少女シリーズ】

超絶美少女な性悪女は異世界でドブスにされた。(と思い込んだ)

作者: 加陽家田

書き殴ったので、設定ガバガバです。頭空っぽにして暇つぶしに呼んでください…。


side ???


私は産まれた時から美しかった。

私の身分はそう高いものでもなかったが、私の美しさは国主様に見初められるほどで、望めば手に入らぬものの方が少なかったのである。


始めの頃はそんな周りの男どもから毎日の様に愛を囁かれる優越の日々は、私を満足させたが、どのみち国主様に目をかけられたからには他に選択肢などはない。成人の式を執り行った後は、鳥籠の中だ。どれひとつ取ってもその場限りでしかない薄っぺらいアイノコトバを私はただ嘲笑って受け入れていた。


そんなくだらない毎日を過ごしていた時だっただろうか、奴が私の屋敷に現れたのは。


酷く醜い女であった。品のある衣服からある程度の裕福さは見てとれたが、体質なのか、体は引き締まっていて、ブロンドの髪に隠れる小さな顔には碧く大きな瞳がついていた。醜い女から私を護ろうと立ち塞がった護衛に下がる様に言いつけ、私は女の話を聞くことにした。女は言った。


「アタシの婚約者を誑かすのはやめて!」


どうやら私に愛を囁きたい男どもの中に女の婚約者がいたらしい。名前を聞いても曖昧にしか顔が出てこなかったが、私にはどうでもいいことであった。その様な手合いは初めてでもなかったのだ。醜女がこの私に何を申すものかと面白がって聞いてみたものの、別段私にとって興味のある話でもなかった為、女を屋敷から追い出した。愚かな女だ。救いようがなく、婚約者からも相手にされない。醜くて不幸な女だ。


ーーなんて可哀想な生き物


私は女を哀れんだ。

これから静かに家に篭って延々と泣き続けることになるだろう。


ところが、女は連日私の元へ訪れた。私には理解しがたいことであった。調べさせたところ、醜女の家は古くからの呪術師を輩出する家であったはずだ。私の家よりも格は低いが、ある程度の需要があるくせに、数が少ない呪術師家系の一人娘であるあの女ならば、あれだけ醜くても他に男は用意できるはずだ。女の婚約者殿が大層な麗人であれば、醜い女の身に余る贅沢であったかと納得したが、改めて確認してみたものの、件の婚約者の容姿は整ってはいる様だが、特別秀でているものでもなかった。では、なぜ女はあんなにも1人の男に固執するのだろうか。私はそれが不思議でたまらなかった。


しかし、ある時私は見たのだ。あの醜女が、例の婚約者を見つめる姿を。親しげな雰囲気などではなかった。それどころか婚約者の男はあの女を邪険に扱っていた。

それでも女は満足そうに笑っていた。

去りゆく男の背中を見つめていた。

熱のこもった強い眼差しで。


ーー私は、そんなの知らないのに。


それは私が手に入れたことのないモノだった。そして、それは私には許されなかったモノで、これからも手に入ることのないモノだと知っていた。私は、これ以上ないほど胸が騒めくのを感じた。

熱い眼差しを交わし合う男女を見るたびに、何故だか胸が締め付けられる思いをすることがあったが、この感情はアレに似ていた。それがまた私の気分を酷く悪くさせた。


あの醜女が心の底から憎いと感じた。家柄も、容姿も私よりも劣っている。あんな粘着質な性格だって褒められたものではないはずだ。なのに、何故。私より全てにおいて劣っているあの女は、私が手に入れられないモノを持っているのだ。


お前は不幸な女だろう?美しく、何でも手に入る、幸せな私よりも、ずっとずっと不幸な女だろう?


この私が、あの女をーー「奴」を、哀れんだのだ。奴は憐れまれるべき救いようのない醜悪な娘であるべきなのだ。だが、このままでは、奴は望み通りに件の婚約者と結婚することになるのであろう。まともに相手などされなくとも、静かに、嬉しそうに、側で「愛する人」を見つめ続けるのであろう。それが、奴の幸せなのだとすれば、奴がこの先幸せになるのだとすれば。


そんなことあっていいはずがない、と思った。醜い奴は醜い人生を送ればいい。幸せになっていいはずがないのだ。何よりも美しい、この私よりも。




そして、私は奴の人生を滅茶苦茶にすることにしたのだ。


あらゆる手を持って奴を不幸にしようとした。


もちろん安易に婚約者との距離を遠ざけるようなことはしない。それではつまらないからだ。


たくさんたくさん苦しんで、最後に希望が消えてしまうことを嘆くように…





ーーそして、あの忌まわしい日がきた。


今思えば、酷い失敗だった。護衛を下がらせたのが間違いだったか、奴を自由にさせていたのが間違いだったか、きっとどちらも私の油断が招いた事態だった。私は追い詰めた鼠が隠し持っていた牙に、気づくことができなかったのであった。





「絶対に許さないっ!!」


「なっ、ぅ…!!」


ーー熱いアツイアツイ


奴の手から放たれた光は灼熱の炎となって私を襲い、身体中を内側から溶かすかのような熱は私の全てを焦がしていった。


「あああ"あ"あ"ぁ!!!!」


「後悔しなさいっ、呪術師であるこのアタシを侮っていたようね!」


ーーこの、醜女の分際で


私は残りの力を振り絞って奴を睨みつけた。そんな私を見た奴は満足そうな笑みを浮かべると、恐ろしいことを口にした。そう、私が最も恐れていることを…


「お前の愛したその美しい顔はもう二度と元へは戻ることはないだろう。これはそういう呪いだ」


呪術などいくらでも金を詰んで解けばいい、そう思っていた私は奴の言葉に大きな衝撃を受けた。


「お前はここで死ぬんだよ。こんな風に短時間で人を殺める高難度の呪術など、お前は知らなかっただろうが、残念だったな」


酷い痛みで床へのたうち回る私を眺めながら奴はクツクツと嗤った。


「…しかしな、アタシはお前を殺しても殺したりない。生まれ変わるだろうお前の魂は二度と、お前に甘かったこの世界などに戻らせはしないぞ」


ガチンと大きな衝撃が来る。耳鳴りがする、目に光の粒が飛び回り、意識が遠のきかけたその時、私は奴の歓喜の声を聞いたのだ。


「お前の記憶は消してやらない、…これは罰だからだーーー最悪の醜女としてこれからお前は生きるんだっ!!」


ーー私の、美しい顔が、なくなる…?


「っぃや、…ゃ、いや"あ"あ"ぁ!!!!」




******

side 本田 さくら


「さくらー、もう出てくぞー?」


「んん…、起きてるぅー」


下の階から母様の声が響いてくる。私は起きたばかりの体を伸ばしながら適当な返事を返す。


「あは、私今日もクソぶすー(笑)」


ベットから起き上がると、すぐ隣に立てかけてある姿見に映る自分を見て、私は思わず笑えてきた。


私には前世の記憶がある。あ、電波じゃないよ?

超絶美少女だった頃の異世界の記憶だ。気に入らない女をいじめまくってたらすんごい恨まれて殺された挙句に、超絶ブスにされた。まあ、自分でも結構性悪女だった自覚はある。あらゆる手を使っていじめ倒したしなー。反省はしてるけど後悔はしてないけどなっww


……こ、この世界での16年間で性格もだいぶマシにはなったんだよっ!


ああ、ほどよく(?)肉づきのいい身体に小さい一重な目、太く短い手足を持ってた頃のまるまる可愛い私が愛おしい…。


それがどうだ、今は。私は鏡に映った自分を睨む。すらりと長い手足にに長い睫毛のついた大きなアイスブルーの瞳。こんなに胸の主張が激しいのに、おなか周りに全然肉がつかないっ!!ありえない!!


同じ不細工仲間の両親が私みたいな細っこくて目がでかい方がいいだとか何とか言うのを聞いたが、親バカフィルターかかりまくってて逆に引く。親類皆んな不細工だから、感覚可笑しくなったのかも。ああはなりなくない。まあ、どちらにせよ関係ないのだ。たとえブス専に好かれたとしても、私は私のことをブスとしか認識できないことに何ら変わりはないのである。…で、でも結婚はしたい。


酷く酷く酷く醜い私はせめてこの肌質や母様譲りの髪質などは綺麗に保とうと毎日のケアは欠かしていない。だから早起きして朝のスキンケアをするのも日課なのだけれどーー…


「えっ!?もう9時!!??入学式に遅れるじゃん!!!」


「さくらー、おいてくぞー」


「待って母様!なんでアラームが……え、うっそ、スマホ充電し忘れたっ」


「私、今日仕事だから入学式出れないけど送ってってあげるから…まあ、どのみち遅刻か」


「なんで起こしてくれなかったの!?」


「目立った方が話題性あるじゃん。友達作りたかったんでしょ?」


「ただの間抜けじゃんか!」


この世界に生まれ落ちて早16年。こっちの生活に完全に慣れきってます。


******

side 三谷 遼


「ケーゴ、なんでお前いんだよ」


「えー、りょー君ひでぇ」


入学式も終わり、張り出された教室には、小学校以来の幼馴染がいた。これで何回目になるだろうか。


「たのむからそっとしといてくれよ?お前、すぐどっかから女子連れてくんだろ」


俺は大きく溜息をつくと、ケーゴにジト目を送る。


「いや、連れてきてるわけじゃあないんだけどね」


あはは、と笑いながら頰をかいているケーゴーー藤原 圭吾は、周りにキラキラエフェクトが飛んでいるイケメンだ。いや、お世辞ではなく、マジで美形だ。笑顔を絶やさないその顔が一見軽薄そうにも見えるが、実は誠実な男であることを俺は知っている。


「わ、イケメン」と女子達から溢れる声を耳が拾う。…う、羨ましくなんかないぞ。ついでに「…なんでデブと一緒にいんの?」という声も。

うぐ。す、すみません。



ーーそう、俺こと三谷遼はまごうことなきデブである。しかも相当なブサイクときた。

ケーゴがコミュ力も身長も高くて美形なのに対して、俺は人並みに喋るだけだしなんといってもデブでブサイクな訳で。そんな俺達が並んでたら、まあ、浮くわな。俺はケーゴがそういう奴じゃないって知ってるからいいんだが。…そ、そんなにはっきりデブって言わなくてもいいじゃねぇかよ。


「りょー君?」


「っるせ、イケメンがっ!」


俺が小突くと、ケーゴが「え?ありがとー?」と疑問形でお礼を言ってくる。…憎めない奴なんだよなー。


俺達が意味のないやりとりをしていると、教室の扉が開いた。


「はーい、一旦席ついてね。適当でいいから、ほらほら座る座るぅ」


パチパチと手を鳴らして入ってきたのは20代らしき若い女性教師だった。ごげ茶色の天然パーマを後ろで括った、元気のよい先生だった。


俺とケーゴは近くにあった席に座る。先生は「じゃあ次の席替えまではその席ねー」と加えた。マジか。すげぇ適当だな。

そんなのありかよ…と声が聞こえる中、後ろの方でラッキーだったな、と俺はケーゴと笑い合う。


「はい、今日から皆んなの担任になった茶野京子です。独身25歳、好きな食べ物は明太子で毎朝の白ご飯のお供にしてます」


「彼氏いないのー?」


「いませーん」


「俺とかどっすか?!」


「あと5回は生まれ変わってきてもらわないと」


どっと笑いが生まれた。なかなか面白い先生の様だ。


「って、あー、そろそろかな」


ちらりと時計を見た先生がそんなことを言った。なにがそろそろなのだろうか。

そう思ったのはやはり俺だけではないらしく、クラスのみんなで不思議そうに先生を見つめた。


「実はね、入学日早々遅刻してきた猛者がいてねー。やー、びっくりだよ」


俺はちらりと右隣にある空の席を見る。なるほど、え、どうしよう。初日から遅刻とかヤバイ奴だったら困る。


「おい、ケーゴ、隣がヤンキーだったらどうしよう」


「っぷ、大丈夫でしょー、きっとカワイイ寝坊助さんだよ」


前に座るケーゴに聞いてみたが、なんの根拠があってか、大丈夫大丈夫と繰り返す。使えねな、そういやコイツただの楽観主義者だったわ。


タッタッタッ


廊下から足音が聞こえる。


「そーら、来たぞ」


そう言って笑った栗田先生は、扉の前で止まった足音の主に「入っていいよー」と声をかけた。


「はっはい…」


可愛らしい女の子の声だ。よしっ、と俺は机の下でガッツポーズをしたが、その女の子が姿を現した瞬間、開いた口が塞がらなかった。


「ぁ…えと、遅刻してすみませんでした」


「…あぁ!き、気をつけなさいねー、ってことで、席はあそこ座っといてちょーだい」


「はい」


たぶん、クラス中か唖然としたと思う。既に書類で顔ぐらい見ていただろう茶野先生ですら一瞬動揺を見せたのだ。


羞恥からだろうか、透き通る様な白い肌が桜色に染まっている。2つに結ばれた絹の様なダークブロンドの長い髪を揺らしている様子はなんとも愛らしく、伏し目がちに歩く姿はどこか儚げなーーー本田さくらは、空前絶後の超絶美少女だった。


******

side 本田 さくら


今日という日、我々高校生は人間関係を形成する重要なスタートラインに立たされる。クラス替えまでの長距離走を無事に完走するために、励まし合い競い合う、共に走る仲間を選定するのだ。共に走るに値しない人間は「ぼっち」という名のレッテルを貼られたまま次のクラス替えまで辛く苦しい道のりを独力で越えて行かねばならない。


しかしここで問題になってくるのは、私はスタートラインに立つ前に盛大にコケたという事実である。


もともと中学卒業に合わせて引っ越してきたので知り合いが全然いないし、友達はもともとできなかっ…つくらなかった。気軽に外には出歩かないし、人からの誘いも避けた。自身の容姿の醜悪さに耐え兼ねて、この様な容姿を晒すなどという愚行は世の為にならないと全力で控えてきたのた。私、えらい。


…素直に言おう、殆ど引きこもりだった。学校なんて最低限しか顔だしてないでござる。引っ越しは両親の仕事の都合だったが、こんな私にゼロからやり直す機会をあげようという算段もあったらしい。


「入っていいよー」


「はっはい…」


悶々と考えている間に呼ばれてしまった。緊張して上ずった声で答えてしまったが、変な奴だと思われていないだろうか。意を決して教室に入る。


「ぁ…えと、遅刻してすみませんでした」


「…えあ、き、気をつけなさいねー、ってことで、席はあそこ座っといてちょーだい」


…?皆んなさっきまで割と賑やかくなかった?…え、何、私のせい?

先生もなんだがタジタジしてるし、え、やっぱり初日から遅刻女はドン引きレベルな感じなの!?それともやっぱり不細工は去ねって空気なの!?前世では学校なんて行ってなかったし、どーすんのかわかんねぇ!顔に熱が集まるのがわかる。


「はい」


汚ねぇ顔を晒すな、私。下でも見てろ。


そして、私は静かに席に向かうと、衝撃的なものを目にした。


緩やかなカーブを描くマシュマロボディに、ふくふくと柔らかそうなほっぺ。真っ黒な髪から覗くのは、どこか加護欲を誘う小さな瞳だった。


「ぁ…っ?!」


す、すっごい、たいぷ!!!

前世でもイケメンはいたけど、この人は私のどストライクだ。密かに黒髪を推している私としては百点満点な黒髪だ。肌質もよし、私は美白よりも健康肌派なのでうれぴー。


彼の小さな瞳はこちらへと向けられていた。目が、目が合ってる。私、今、彼と目が合ってるのね。至福。


…あ、いや、見つめすぎた。完全に変態じゃん。何か、何か言わないと。


「ぇ…と、不束者ですが、よろしくお願い致します」


「……………こ、こちら、こそ」


長い長い間の後、麗しのマシュマロの君は、戸惑った様子で返した。


うーわ、失敗した。


******

side 三谷 遼


「あのさー、本田さんってすっごくコッチ見てくるよね」


昼休み、教室の隅でパンを齧る俺に向かって、ケーゴはそう漏らした。確かに、本田さんは、こちらを見ていることが多い。他クラスの女子からも目をつけられていたケーゴであるが、同じクラスのスーパー美少女本田さんがケーゴに想いを寄せていると噂されると、どんな女だと見に来ては、あまりの可愛さに打ちのめされて帰る女子が跡を絶たなかった。因みに、美少女を拝みに来た男子達も、その美しさにひとしきり舞い上がった後、ケーゴを見て「結局顔だよなー」と呟きながら帰っていく姿が多数目撃されている。


「はいはい、モテ男なケーゴ君は困りますなー」


「え?いや、違くて…」


俺はちょっとムカついたのでケーゴに投げやりな返事をすると、ケーゴは困った様に眉を寄せて、意味深げな視線をこちらに投げかけてくる。


「どっちかというとなー…」


「?…嫌われてるってことか?」


ケーゴよ、お前は彼女に何かしてしまったのか。俺はからっぽの右隣の席を見つめた。いや、彼女の目線はいつだって、噂通りの、こう、熱っぽいというか…好意的な感じだ。


やっぱりケーゴが好きなのか。


「んー、いや、憶測で物を言うのはよくないよね、うん。それに、こういう事は、きっと本人の口から言いたいだろうし」


「なんだ?」


「なーんもない」


ケーゴが何故か嬉しそうにしている。いや、あれだけの美少女に好意を寄せられるのは嬉しいに決まっているのだろうが…


なんとなく、初めて会った時、目があったあの瞬間を思い出す。あんな風に正面から見つめられてドキリとした。こんな僕に気を使ったのか、彼女は遠慮がちに挨拶をしてきて。

どこか可笑しな言い回しだったけれど、そこがまた可愛らしかった。呆気にとられてうまく返事ができなかったのが悔やまれる。


ケーゴはいつになく楽しそうな笑顔のまま、外を見ていた。


ーー両想いなのか?


ちくり、と胸が痛んだ。


******

side 本田 さくら


昼休み、私は焦っていた。


「また、渡せなかった…」


私は手元にある2つの弁当箱を開いた。手作り弁当である。あれから1ヶ月、ずっと三谷君を見つめていると、彼はどうやらお昼はパンを食べるらしい。私はそれならばと、健康的なお弁当をモリモリ作って来たのだが、今日も今日とて渡せずじまいに終わった。勇気が出せないままに教室を飛び出して校舎裏の壁で落ち込むのがここ最近のルーティーンだ。キモいかもしれないが、やめられないのである。


前世と違って自分の容姿に自信がないだけでこんなに上手くいかないなんて思わなかった。…奴もこんな感じだったんだろうか。私は前世で私を殺したあの女の顔を浮かべた。


いや、奴よりも今の私の方がずっとずっと醜いんだから、私の方が大変に決まってるだろ常考。考えたらなんだか腹が立ってきた。意味がわかんない。勝手に不細工に生まれてきたくせして調子こきやがってあのくそ女、許すまじ。(※本人は矯正したつもりですが、元来の性格の悪さは変わりありません。)


「ゃ、やだっ」


誰かの声が耳に入ってきた。昼休みにこんな人気のないところに、一体何しに来るというのだろうか。よっぽど疚しいことがあるのか。それとも暇なの?


私は自分のことは棚に上げて声のする方に近づいていくと、(誠に遺憾であるが)私ほどではないにしても、ブスが4人立っていた。奥にもう1人いる様だが、よく見えない。なに?リンチか?


4人で1人を囲むだなんて…卑怯な奴等だな!!

え、私?厳つい男5人ぐらいで1人の女を囲んで×××しようとしたことあるけど、別にいいでしょ、あの頃私は美人だったし。なんだかんだ未遂だったし。ブスは心もブスでいやぁよねーww(※本当に本人は矯正したつもりで略)


「あは、『やだっ』だって、きっしょいわー」


「ほらー、お弁当食べなくていいのー?あ、エサか」


「わー、うっかり踏んじゃったよぅ」


「ちょww、靴汚ねぇじゃんバカ」


地面に散らかってるのは、隠れて見えないもう1人のお弁当だったものだろう。うわー勿体無いな。

ブスの1人が「インスタ萎えー」とか言いつつスマホを取り出し始めた。興味も湧かなかったので、私も帰ろっかなー、と思ったその時、ブス共の隙間から奥でふくよかな体を震わせ俯く少女が見えた。ふと、少女が顔をあげる。少女は私に気づくと、つぶらな瞳をまん丸にした。

…え、可愛いやん


ーー助けよう。


即決した。美しいものも、可愛いものも、存在するだけで尊いのである。私はアレが気に入った。理由はそれで十分だろう。


「先生!コッチです早く!!」


私は取り敢えず考えなしに声をあげてみた。…相手の出方次第で手を変えようそうしよう。


すると拍子抜けするほどアッサリと4ブス共はやばいやばい言いながら走って言った。ちょろ。


「けがは?!」


私は可憐な美少女に走り寄る。美少女は肩までの柔らかな亜栗色の髪をハーフアップにしており、低めの鼻がポイント高い。

むふ、前世の私には劣るが、やはり私の目に狂いはなし!美しい少女だ。


だがしかし、


「あ、ありが「肌質は不合格」……へ?」


「ううん、何でもないですよ、これ、あなたのお弁当箱ですか?」


美少女の言葉を遮るように口に出てしまった言葉を無かったことにし、足元に転がるピンクの花柄のお弁当箱を拾い上げる。ついでにメニューもチェック。野菜、肉、果物、バランスが良い。冷凍食品でもなさそう。ふくよかな体を保つのに丁度良い量と質だ。食事は問題なさげかな?


「?!よ、汚れますよ!」


「平気ですよ、このくらい。まだ昼休み残ってますし、勿体無いですけど片付けましょうか」


テッテレー!!ゴミ袋!!!

私は自分の弁当箱を入れてきた鞄から袋を取り出した。自分が行っていたイジメを参考にして、今後私がイジメられるとしたら何が必要か考えた結果、袋って凄い便利だったので常備しているのだ。


「ビニール手袋もありますよ?」


「え?え?」


混乱する少女をよそに私は弁当を手早く片付けると、私は三谷君用のお弁当を少女に押し付け、一緒に昼休みを過ごすことを強要したのであった。


この学校来て以来初めて人とご飯食べたっ…!!!


少女は栗田花音といった。


******

side 栗田 花音


1週間後


「花音ちゃん、あ…あのね、私、気になる人がいるの。相談に乗ってくれる?」


目の前のとてもとても可愛らしい女の子は、真っ赤な顔で私にそう告げました。最近私は、彼女が可愛すぎて同じ人類なのかわからなくなっています。


お人形さんのような可憐な少女、さくらちゃんは、いじめられていた私を助けてくれたヒーローみたいな女の子。こんなに可愛いのに性格もいいなんて、なんてステキなんでしょう。あの日からさくらちゃんは毎回私と一緒にご飯を食べてくれます。しかも、私のことを友達だと言ってくれるのです。私は太っていて、お世辞にも普通顔とすら言えないから、まともな友達なんかできたことなかったのに。こんな素敵な人が私のことを友達と言ってくれるだなんて夢みたいなことです。


初めこそ畏まった言葉でしたが、最近は私に親しげに話しかけてくれるようになりました。親密度が上がっているのでしょうか!そう思っていいですか!?ちなみに私の話し方は躾によるものなので、気にしないでください。


可愛くて優しい私の天使様!!

そんなさくらちゃんから頼りにされるのであれば、全力で相談に乗る他ありません!


「もちろんです!」


「えっとね、私はいつもお弁当を2つ食べてるけど、本当は、その人のために作ってきてるの。でも、恥ずかしくて渡せなくて…」


「それでいつも2つも…」


…2つのお弁当がさくらちゃんの細いお腹のどこに消えているのかは、前々から疑問ではありましたが、今言及すべきではなさそうですね。


「それでね、私の気になってる人なんだけど」


「はい、さくらちゃんの噂はよく耳にしますよ。藤原圭吾くんでしたか」


「…だれ?」


「え?!」


『超絶美少女本田さくらがイケメン藤原圭吾に熱い眼差しを送っている』という噂は、今や学校中が知っているのではないでしょうか。かくいう私も、その噂を信じきっている1人でしたが、まさかさくらちゃん本人がそれを知らないとは。私はさくらちゃんに噂について話しました。すると、酷く驚いた様子でした。本当に知らなかったようです。


「えっと、その…ハギワラケンゴ?」


「藤原圭吾君ですね」


「その藤原君?は誰なのかな。花音ちゃんのクラスメイト??」


「…さくらちゃんのクラスの人ですよ?えと、確かとても仲のいい人がいて、その、な、中々恰幅良い感じの男の子で」


「ーー花音ちゃんも三谷君狙いなの?ダメだよ、絶対、譲らないよ」


「そうそう!三谷君…って、え?」


藤原君と三谷君はいつも一緒にいて、藤原君は美形男子で、三谷君は体の大きめな男の子。でもさくらちゃんは藤原君は知らないけど、三谷君のことはよく知ってるみたい。ううん、よく知っているというか…


私は何かトンデモないことを考えている自覚がありつつも、さくらちゃんに尋ねました。さくらちゃんは再び真っ赤なると、「…ぅ、うん」と返しながらコクコク頷きました。わぁお。


「成る程、藤原君と三谷君はいつも一緒にいますからね」


藤原君は美形って話ですし、周りが勘違いしてしまったみたいですね。


「ああ、ーーってーーーか」


「何か言いましたか?」


「ううん、独り言」


さくらちゃんはよく考えてることが口に出てしまうみたいで、よくこのやり取りをします。何を言っているかまでは聞き取れませんが、さくらちゃんはどうやら思ったことが隠せない素直な子の様です。ふふふ。


三谷君は私と同じで、その、太っていて、顔も…よくないですが、性格は悪くなさそうですし、むしろ、さくらちゃんは中身で人を好きになるという事がわかって、私はさらに感激しています。


「私、さくらちゃんと三谷君を応援しますねっ!!」


「わあ!ありがとう!」


******

side 本田 さくら


「さくらちゃんの想い人というのは、もしかして…」


花音ちゃんが神妙な面持ちで尋ねてくる。


「…ぅ、うん」


自分から言いだしたものの、改めて聞かれると恥ずかしいが、ここではっきりしておかないと、後から花音ちゃんが三谷君のこと好きとか言いだしても絶対にあげないから。先ほども釘を刺しておいたけど、人の心はいつ変わるかわからないからね。


「成る程、藤原君と三谷君はいつも一緒にいますからね」


いつも一緒にいる?…というと、三谷君のいつも隣を独り占めしてる、細くて顔が小さくて背の高いブサいヤツが『藤原君』?


「ああ、藤原ってあの金魚の糞か」


え、甚だしく迷惑。あんなのが私の想い人だと思われていたなんて、名誉毀損で訴えても勝てる気がするわ。

ん?…私の方がブサい⁇シラネー


「何か言いましたか?」


「ううん、独り言」


花音ちゃんも噂が馬鹿馬鹿しいと思ったのか、ふふふ。と笑っている。だよねー。


「私、さくらちゃんと三谷君を応援しますねっ!!」


「わあ!ありがとう!」


よし、これでライバルが減った!裏切ったらいくらさくらちゃんでも後悔させてあげるからね!


「さくらちゃんは三谷君の何処に惹かれたのですか?」


「顔」


「えっ?」


やべ、正直に言いすぎた。

ここは上手く誤魔化して、私の良い噂を流してもらわなきゃ!


「あのね、じっと見てるとね、すごく表情が豊かなの。今食べてるパンはすっごく美味しいのかな、とか、今読んでる本は悲しい話なのかなー、とか。すぐわかるの。なんか可愛いくてつい目で追っちゃって」


「ふわわ、素敵です!」


嘘ではない。順番をチョット前後させて話しているだけだ。可愛いから目で追っているのではなく、三谷君を見続けている内に、可愛いところに気がついたのである。あと、三谷君が美味しそうに食べるパンは自分でも食べてみて、味の好みをきっちり把握している。三谷君が読む本も買って全て読破したし、テレビも映画も見た。


「さくらちゃんは本当に三谷君が好きなんですね!」


……んん?『好き』?いや、三谷君はカッコいいし、ああいう美形との結婚は女の夢だろうけどーー


「さくらちゃん?」


キーンコーン


「あ!予鈴」


「ひとまず戻りましょうか」


私と花音ちゃんはそれぞれの教室へと戻った。


******

side 藤原 圭吾


「ケーゴ、帰ろうぜー」


「んー」


俺は鞄を持って歩くりょー君の後ろをついていく。りょー君が帰るってことは、きっとあの子も帰るだろう。ちらりとそちらを伺うと案の定、あの子、本田さんがりょー君を見ていた。そう、本田さんは間違いなくりょー君を見ている。結構露骨なんだけど、りょー君は気づいていない。


ふーん、よし。ちょっとお節介かもだけど。


「りょー君さあ、本田さんのことどう思う?」


「なんだよ、急に」


「いいじゃんかさ、ね?どう?」


りょー君は聞こえる距離に本田さんがいることは気付いてないだろう。(本田さんはあんなに目立つ容姿なのにりょー君を追いかけてる時の気配の消し方がえげつない)俺は本田さんが目を見開いて此方に聞き耳を立てるのを確認しつつ、りょー君に本田さんの話をする。


「そりゃ、…すっげぇ可愛いだろ」


「へー、そっかー」


…本田さんが「驚愕!」って顔してる。これがまた2人が延々とすれ違う理由であるのだが。何故か2人共お互いを意識しあっているのに、お互いにその自覚がないのである。


「……何だよ、ケーゴ、本田さんと付き合うのか?」


いや、だからなん……あー、りょー君結局あの噂信じてんのねー。


「えー、ないない。俺はさ、こう、守ってあげたくなるような子がいいもん」


「?…本田さんも守ってあげたいくらい可愛いだろ」


「ううん、確かにそうなんだけど、あの子はなんて言うか…猛禽類の目をしているから」


りょー君を見ている時の目が、ね。


「はあ?」


「で、りょー君は?本田さんが告白してきたら付き合う?」


「いや、なんでそーなる」


「もしの話でいいからさ」


本田さんがすっごくコッチを気にしてるからさ。気になってさっきよりも近づいてきちゃったじゃんか。ちょ、本田さん、バレるよ?


「俺はーー」


「あ、さくらちゃん!ちょうどよかった。一緒に帰りませんか?」


「?!っか、かの、んちゃ…」


「あちゃちゃー」


俺は『カノンちゃん』と呼ばれた子を見る。事態を飲み込むことはできないが、とりあえずはまずいことをしてしまったと感じ取ったようだ。わかりやすくオロオロしている。りょー君も本田さんも2人して固まってるし。


んむむ、とりあえず…


「カノンちゃんは、俺と帰ろっか」


「ふえ?!」



俺は奇妙な奇声をあげるカノンちゃんの肩を抱いて玄関の外へ向かい、少々強引に2人きりにして行った。


まあ、あとは頑張れ2人とも!


******

side 本田 さくら


大変です、隊長。いや、誰が隊長だってはなしなんだけど、それどころじゃなくて。


ーー三谷君はB専かもしれないっ!!


美形のB専、それは前世でも夢とか物語本でしか見たことない、ファンタジー属性。でもでも先ほどの会話が三谷君の優しさから出た素敵な嘘でない限りは好感触だった!?いやいやまてまて、今は私が三谷君の話に聞き耳を立てていたのをどう誤魔化すべきが考えるのが先決かっ!!?


私は三谷君に歩み寄る。


「ぁ、あのーー」


「ゴメン!」


「え?」


そ、それは何のゴメンなんですか。余計な期待させちゃったけどお前みたいなブスから告白すら受けたくねぇのゴメンなんですか。それともお願い謝るからそのブサい顔を見せないでとっとと帰ってくれのゴメンなんですか。


ヤダ、やっぱり無理じゃん。あのブサ金魚う●こ野郎余計なこと聞きやがって(※主人公が汚くてすみません。)ああああ、私みたいなのは、近寄るのも汚らわしいってことなのそうなの三谷君。


私はじわじわと自分の目が熱くなっていくのを感じた。いけない。こんなところで泣いちゃ駄目だ。三谷君にだって迷惑がかかるし、これ以上嫌われたくないよぉ


「あの、本当ゴメン。キモかったよね、俺なんかに…って、え!?」


「…ぅ…ぇ」


「ほ、本田さん!?そんなに嫌だった!?」


「…っふぇ…」


「ほ、本田さんっ」


嘘、泣いちゃったじゃん私のバカ。


「本田さんっ」


見るな群衆!!どーせ、二足歩行の汚物がなんか鳴いてるって思ってるんでしょ!!


「本田さんっ」


…あれ、三谷君が何か言ってる?どんな罵倒をされてるんだろう私。駄目だ、もう何も聞きたくない気分ーー


「本田さん、勝手にゴメン」


「へ」


三谷君が私の手を取って駆け出した。そう、私の手を、…手を!?


私の手を引いたまま、三谷君は迷いのない足取りで何処かへ向かい、扉を開けると、その中に飛び込んだ。


「…よかった、誰もいない。この時間の図書室は殆ど人が来ない筈だから」


「ぁ…あの、あのて、てが、手が手を、手に」


「え、あっ?!…ごっごめ」


三谷君が物凄い勢いで私の手を放した。そ、そんなに嫌だったかな。と、私は心の中で少し落ち込んだ。


「あ、あーっと、その、人目があり過ぎて、嫌だったかなって。…あの様子だと、本田さんを傷つけたままになりそうだったし…その、ゴメン」


三谷君が何を謝ってるのかはわからないけれど、誰もいない図書室まで連れてきてくれたのは私の為らしいことは伝わった。え、心の隅までイケメンなの?


し、しかもこれは、三谷君とおしゃべりのチャンス到来なの?!


「み、三谷君!」


「…っは、はい」


伝えなきゃ。交際申し込みは、まだ、無理だけど。せめて、今のキモチを。嬉しいって。ありがとうって。それで今日をきっかけに距離を縮めて、なんとかデートまで漕ぎ着けるの。やればできる筈よ、私!


私は初めて味わう感覚に焦っていた。こんなに心臓の音がはっきり聞こえることなんて、前世と合わせて今まで一度だってなかった。息はうまくできないし。手に汗をかいてきたかも。なんだかんだ言っていつも眺めてるだけで、ちゃんと話しかけたことなんてなかったし。


好きな人に話しかけるってこんなに勇気がいるのか。…え、あれ、…好きな人?


カッコイイし、優しいし、こんなに素敵な人が理想だとは思ってて。私のことを気にして欲しくて、でも嫌われたくなくて、なにより側に居たいけれど。それって…?




ーーあ…私、三谷君のこと好きなのか。




自分の気持ちを自覚したとたん、ブワッと熱が顔に集まる。最初は三谷君でダメなら、他のカッコいい人見つけてやり直そうなんて思ってたけど、今は、彼じゃなきゃ駄目だって思う。そうか、これが『好き』か。なんだかむずむずしてきて、くすぐったくなった。


不細工になっても、いや、不細工になったからこそ余計に、私は『美』に拘った。美しいものを手近に置きたがったし、花音ちゃんのことだってそうだった。美しいものに囲まれることで、自分の醜さから逃れようした。


だから、三谷君みたいな、イケメンな人のことも、そういう気持ちなんだと思ってた。でも…


「本田さん?」


三谷君は、心配そうに私の顔を窺い見てくる。今、三谷君は私のことを気にかけてくれているんだ。



「あ…の!」


この、胸の高鳴りは


「わたし」


前の私には手に入れられなかったはずのもので。


「ずっと」


今はもう、私は美しくなんてなくて。


「初めて会ったときから」


だけどもう、私を縛るものもなくて。


「三谷君だけを見てました」


見てるだけの奴を嗤ったのは


「ずっと見てたから」


本当はずっと気づいていたから。


「貴方に恋をしたんです」


『それ』が心底、羨ましかったって。









「え?」


「あ」


やばいっ!!今私なんて言ったのバカなの死ぬの?!『ドキ☆ちょっとずつ仲良し大作戦』が完全に終わったんかよ。

さよなら、私の初恋。自覚した瞬間自爆したわ。


私は羞恥に耐えかねて、図書室を出て行こうと扉へと向かったが、扉を開ける前に腕を引かれた。


「…本田さん、虐められてたりするの?今のは、罰ゲーム?」


…え?


私はアホみたいな顔で三谷君を振り返る。三谷君の顔はほんのりと赤かったが、訝しげにこちらを伺っている。


「ば、罰ゲーム……じゃないです」


思わず、罰ゲームだって言ってしまおうとしてしまった。ついでに4ブスに言われましたとも。ブスが身の程知らずに美形に告白する罰ゲームとか、あの4ブスとか喜んでやりそうだし。

でも、あんまり真剣に三谷君が、私を見つめるもんだから、そんなこと言えなくなってしまった。ちょっとでも、正直でいい子だと思われたいとか、図々しいことまで考えてしまった。


「…正気?」


三谷君の疑惑の眼差しは困惑したものへと変わり、真っ赤になって俯く私へと注がれた。


あと、本気じゃなくて正気って、身の程を弁えないブス女の私の神経疑われてるのかな…と、私は地味にショックを受けていた。


こうなったらヤケだ、と私は意を決して三谷君に詰め寄る。


「ずっとずっと見てました。授業真面目に聞いてるとことか、1番得意なのは数学だとか、焼きそばパンとコロッケパンが好きだけど新しいイチゴ味のパンが出てると買っちゃうとことか、落ちてるゴミは絶対拾うとことか、それでゴミ箱を探してたら放課が終わっちゃって急いでるとことか、ハンカチは綺麗にたたんで持ち歩いているとことか、体育の時間は大人しくしてるけど本当は運動が好きなとことか、嘘つくのが下手で揶揄われてるとことか、ちょっと狭いところ通ろうとしてお腹がつっかえちゃうとことか…」


「っまって!!まって!!」


「はい」


「いや、近っ……その、間違いだったら盛大に笑ってくれていいんだけど」


三谷君はそこで切ると、深く深呼吸をしてから、続けた。


「…本田さんが見てたのって、ケーゴじゃなくて、俺、だったの?」


「…ケーゴ?…あ!ち、違いますっ、違いますっ!!」


私は『ケーゴ』が一瞬誰のことだがわからなくて戸惑ったが、すぐに(ふん)君だと思い至る。そして茫然とする三谷君の元へ滑り込ませた体を徐に寄せつつ、三谷君の弾力ある胸に顔を埋めた。ん?変態だって?ははは、もう手遅れなのはとっくに気づいてんだよ。ワンチャンもクソもねぇなら後はどれだけドサクサに紛れてセクハラするかだろ。(※主人公は暴走しているだけなので、良い子はマネしないで)


「三谷君が…しゅきなんです」


噛 ん だ


「っ!?」


三谷君から息を呑むのが伝わった。やっべぇ、調子に乗ってやり過ぎたかもしれない疑惑が疑惑じゃなくなりつつあるこの状況。不細工のしゅきしゅきアタックほど見ていて痛々しいものはない。三谷君の前ではいい子ちゃんぶりっこしてたいの!とか言い出した数分前の私よ、どうして早く帰ってこなかったの!お母さん心配してたのよ!!(錯乱)


「本田さん」


「…はい」


ふ、ふざけている場合じゃなかった。私は震える体を叱咤して恐る恐る三谷君を見上げる。


「…俺も、好きです」


「っはい、すみませ…え?」


私は今、何を聴いたのだろうか。三谷君の拒絶の言葉がショックのあまり、自分の中で都合の良いように言葉を差し替えた…??


「あ、の…もう一度、言っていただけませんか」


おこがましいですけども。


「え”?!」


「私!可笑しくなってるみたいで、あぁあの!い今、今、みみみ三谷君、が!三谷君が?!」


「い、いや、なんで本田さんが僕より動揺して…」


「…」


絶望の淵にいた私は藁にもすがる思いで三谷君を見上げる。いや、藁つっーか、三谷君に縋り付いているんだけどね。なんちて。


「…俺は、本田さくらさんが、好きです」


「…っ!」


聞き間違いではなかった。三谷君が私を、私を好きって。あれ、そういえばこんなにセクハラしてるのに嫌がられないし離されたりしてない?これはもしかして本当に本当のやつなの。


改めて三谷君を見る。

あれ、三谷君、照れてる?私みたいなのでも、一応女のコとして見てくれてるってこと?じゃあ私たちもう好き合った同士?!ラブラブなの?!これはもうプロポーズなの?!(錯r)


う、嘘でしょ


「ぜ、是非にお嫁さんにしてください」


「ぶっ!!??」


このあとめちゃくちゃラブラブした。


******


かくして、私と三谷君は結婚を前提とした(承諾をもぎ取った)おつき合いを始めた。


暫くした後、私がこの世界の価値観を知って、私の容姿が三谷君には魅力的に映ると知って、あの手この手で迫るのは、また別の話。




途中退場したケーゴと花音ちゃんはと言うと…


「「付き合うことになりました」」


本田「か、花音ちゃん?!」


栗田「うぅー、恥ずかしいです」


三谷「ケーゴ、どういうことだ」


藤原「んー、まあ好みだったし」


「「??!!」」



なんちゃって裏話


ーー結局、『奴』こと『あの女』さんは妬みというか八つ当たりで虐められてただけですけど…


「ああ、知ってたよ。なかなか滑稽だったさ。ま、アタシの世界は彼中心に回ってるから、それさえ冒さなければ全然平気だし…」


ーーそ、そうですか。ちなみにあの後どうなったんですか?


「どうなったも何も、そーとー怒られたわ。アタシって稀代の呪術師だっただけあって血は欲しかったみたいでさ。子供産むだけ産んだらちゃっちゃと去ね!みたいな?」


ーーほ、ほお


「アタシも死んだら彼も死ぬように呪ってるから問題ないんだけど。死すら2人を分かつことはできないってね」


ーーえ


「これがまた維持が難しくてねー、性悪女に施した様な規模の呪いも同時に行使するとなると準備には時間がいるわけ。日々の嫌がらせに対するお返しをしなかったのは、その辺の事情があったりして」


ーー…。(ドン引き)


******


誤字脱字がありますのでよろしくお願いします。(あんま確認してない)

設定に深く突っ込むのはよしてください。

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[良い点] 主人公の性格が、確かに悪いが可愛げがあってとてもよろしいと思いました。 本性バレても愛想尽かされる心配はなさそう。 [一言] 面白かったー 暇あったらまた何か書いてみてくださいね。
[良い点] 面白い!! [一言] 処女作なのですか!?すごく面白いです! 両片想いとか、美醜逆転とか大好き!(´ ˘ `๑)♡ 挿絵も可愛かったです!小説かけて絵も上手だなんて羨ましいですー。 カヤカ…
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