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明日私は、恋してますか  作者: 植村夕月
Ⅳ 孤独な姫君はフライパンを手に戦った。
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67話   プロローグ

   プロローグ


 十二月最後の登校日。

 この日は、よく冷え込んでいた。道の通りすがり、目にした水たまりは氷を張っている。傍らを歩く有紀は、左手首の傷がうずくらしい。時折ひどく顔をしかめていた。私と有紀に啓二くんは学校につくと、速やかに体育館へと向かう。

 終業式は私たちが体育館について、間もないうちに始まった。

 終業式は特に代わり映えのしないものだった。生徒会長である私が、形式的な挨拶と冬期休暇を迎えるにあたっての注意を述べた。生徒指導の教員がうだうだ説教垂れると思っていたのだが、そんなこともなく、式は二十分で終わった。

 クラスのホームルームが終わって、私は生徒会室に向かった。今日は生徒会はない。しかし行ってみれば、一人ある姿を目にすることができた。とある少女は、窓から、外をただ眺めていた。

「何か面白いものでもあるのか?」

「別に、面白いモノなんてないわよ。ただ、呆けていただけ」

 宮古さんは、いつになく元気がない。

 彼女の瞳はどこか遠くを見るようだった。

 私は彼女の横まで歩く。そして窓を開けて、肌を切り裂くように冷たい風を部屋の中に招く。カーテンが翻り、髪がもてあそばれる。それを私がどことなく楽しんでいた。

 私は、傍で暗い顔をする宮古さんを窺う。

「宮古さんには、とても仲のいい男の子がいたな」

「何を言っているの?」

「以前、君は私にスマフォを見せてもらったことがあっただろ。そこに、男の子と二人で映る写真があった」

「ああ、あれね。もう過ぎたことよ。放っておいて」

 宮古さんは、私の言葉を苛立たしそうにしている。

 彼女は、窓を背にすると机に置いてある鞄を手にする。そしてそのまま部屋を去ろうとした。


「二条泰孝クン」


 私がぽつりと口にした少年の名前。それを聞いた彼女は振り返り、驚いた様子で私を見ていた。そして床を踏み鳴らして私に迫ってくる。

「あなた、どうしてその名前を知っているの? 彼と知り合い?」

 宮古さんは、いつになく必死の形相だった。

 いつも疲れた感じで無気力的。性格的には有紀とかなり似ているところがある。しかし彼女と違うところは、なんだかんだと文句を言っても頼まれたことはこなすし、フレンドリーなところがあるという事だ。小川のせせらぎのように静かな印象の彼女からは、今の様子はかけ離れていた。

 私は確信する。

 二条有紀の弟、泰孝クンは宮古さんにとって特別な人。

「いや、彼の姉が親友なんだ」

「そう、なんだ」

 宮古さんは、傍の机に手をつく。

 私の言葉に何かを期待していたのだろうか。彼女の先ほどのような勢いはなく、ふにゃふにゃとしてしまう。

 近くの机に手をついて、体を支えている様子の宮古さん。

 彼女は、一人何やらこくりとうなづいてから私に視線を向ける。その目は先ほどの困惑に揺れていたものと違って、何か決意するかのように力強さを感じさせる真っ直ぐなものだった。

「あの、橘さん。私を泰孝クンのお姉さんに会わせて欲しい」

「別に構わない、が……」

「本当! ありがとう」

 宮古さんがぱあっと明るい顔をさせた。

 彼女は普段から無表情を定着させていて、時々見せる笑みも作り物。そんな彼女だから、今の笑みには私自身驚かされた。彼女をこうもさせる存在、その関係を知りたくなる。

「なあ、宮古さんと泰孝クンは、どんな関係なんだ?」

 宮古さんは、顔をほんのり赤くさせると躊躇いなく答えた。


「私の後輩であり、恋人であった人です」


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