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明日私は、恋してますか  作者: 植村夕月
Ⅱ 夜空の姫君は再生を願って
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40話   Daybreak 4

   40話   Daybreak  4


 放課後、私は生徒会の仕事で陸上部部室へ行った。

 陸上部の冬期休暇中の活動計画。また休日の部活動を土曜日だけでなく隔週日曜日まで拡げるという陸上部の要望。それらに関しての生徒会の見解を伝えるためのものだ。

 生徒会の友人が、私にお願いと頼み込んでいる様子を思い出す。

『ぜひ橘さんにお願いしたいな』

『私は役員じゃないでしょう。こういうことは正規の役員がすればいいじゃないですか』

『本当はそうしたいんだけどさ、陸上部って怖いイメージがあって。その点橘さんはしっかりしてるから』

 怖いって、私たちは堂々としていればいいだけでしょうに。どこぞの不良じゃあないでしょ。それとも生徒会は運動部に喧嘩売るような真似を過去にしてきたのですかね?

 もしそうなら、

 この腕章外したいなあ。

 部室につくとドアを三回ノックする。

「はい」

「生徒会役員です。冬期休暇の活動計画と部の活動日拡大に関して伝えに参りました」

 ガラガラとドアが開いて、飯田が廊下に出てきた。

「まあ、中に入ってくれよ」

「ん、手短に済ませたいので」

 私は部室に入ると、飯田にプリントを一枚渡す。

 確かこいつは、陸上部のまとめ役に入るんだった。内容はこいつに話しても問題はないだろう。

「これは顧問が計画したんですか?」

「あー、えーとだな」

 私が問うていることはそんな難しいことではない。なのに彼は言葉を濁す。何か具合の悪いことでもあるんだと私は思った。那岐さん曰く、運動部で何かがあるとかないとか言っていたのだし。

「とにかく、冬期休暇中の活動計画に関しては容認できません。何ですかこれ? 冬休み二週間のうちで休みは三が日だけ。大晦日とその前の日も丸一日部活があるのはおかしいでしょ。休暇中の課題をこなすつもりがあるんですかって文句が言いたいぐらいです。この計画はダメ、やり直し」

 飯田は、そう言われることを半ば承知していたようだ。後頭部を掻いて、重いため息をはいていた。

「やっぱそうだよな」

 ふむ、この感じだと飯田は少なくとも計画に無理があることを承知していた。それは反対を意味しているといってもいい。

 では誰がこんな無理を提案するのだろうか。よほどの脳筋野郎でなくてはしないだろう。

 此処はアスリート養成学校じゃないんだ。

「あと、部活動を日曜日にもすると言っているようだが、これも却下。ただでさえ活動時間が長い現状を生徒会は快く思っていない。これ以上の延長は勉学に妨げる。だから、冬期計画書に関しては再考したうえで生徒会に提出してください」

 私は彼がすんなりと受け入れてくれるものだと思っていた。しかし思いのほかこの件に関しては食いついてきた。

「でもな、今から計画書の作成はさすがに時間が足りなくて」

「現在残っているデータから、活動時間を削ればいいだけでしょ。馬鹿言わないでください」

 私はそそくさと部室を出た。

 もう何? なんかややこしいんですけど。私ただの助っ人ですよ。ちょっと紙の束を運んだり、パソコンに文字を入力たりというくらいの。それが何かの間違いで会議の議事録を作り、こういう告知を行うようにまでなって。

 私は部室のドアにもたれかかった。

 飯田は馬鹿だけど、無理なことを考えるような奴じゃない。何ができて何ができないか位の事もちゃんとわかっている。一体何を。

 少し考えていると、中から声がした。

 よくないことと分かっているが、聞き耳を立てた。


「もうちょっとうまく説明せんか。最初から向こうが了承せんのは分かり切っていたことだろ」

「すみません。ただ、俺もこの計画は無理があるように感じます」

「余計な意見なぞいらんわ。部の計画はわしがたてる。文句は言わせんぞ」

「はい」


 私はドアにあてていた耳を離す。そしてその場をそっと後にした。

 


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