37話 いつの間にか寂しがり屋になっていた その2
37話 いつの間にか寂しがり屋になっていた その2
「加奈さんはどうしたんですか? 見当たらないですが」
「少し体調が優れないみたいで、今は寝ているみたい」
私はトーストを齧り、コーヒーを含む。穂波さんとこうして二人で朝食を摂るのは珍しい。啓二は、用事があって昨夜の夜行バスで都会に行ってしまった。
穂波さんも私のコーヒー、美味しいっていってくれた。
でも今朝見た夢のせいか。雄一郎さんに行ってもらった時は、もっと嬉しくて心が躍った。
「有紀ちゃん、嬉しそうね」
「はい、今日はいつもより素晴らしい朝です」
「そかそか。有紀ちゃんって料理が得意だったね。もしよかったら、私に何かお料理を教えてちょうだいな」
「そ、そんな滅相もない。穂波さんのほうがレパートリーは広いと思います」
「いやいや、そんなあ」
彼女はくすくすと笑っていた。
よかった。本当に……よかった。
私は心の内で安堵していた。おいしいコーヒーを淹れられたことに関しても、だけど……もっと、もっと気になっていたことが少し晴れて。
加奈さんも啓二もいない。
私は久しぶりに一人だけで学校へ行った。
教室へ行って、自分の席に座る。那岐ちゃんにおはようのあいさつをして、こちらにてお振ってくるクラスメイトに適当な返事をするだけ。
しつこく話しかけてくる啓二はいない。
私にやたらつっかかてきた加奈さんもいない。
妙な気分だ。これではまるで、私がリストカットして間もないころに戻ったような気分だ。私は朝の慣例通りに机に突っ伏して寝たふりをする。
こうしてみると、私はあの二人がいないとこうも変わってしまう。どうせ一日だけ。次の日にはまた元に戻っている。
鬱陶しい。
胸の内で毒づいていると、ある少年が声を掛けてきた。この無駄に元気な声は。
「どうしたどうした、二条? 調子でも悪いか」
「飯田君か。おはよう。君は相変わらず、元気だね。元気すぎてうるさく感じてしまうよ」
「これはまた、やけに棘のある言葉を飛ばしてきますなあ」
「加奈さんとのやり取りを見ていると、これくらいが十分だと思ったんだよ」
加奈さんの名前を出すと、飯田君は頭を抱える。
うーん、この反応はどう受け取ればいいの? 別にあの子を苦手にしているわけじゃあないでしょ。
ただ、面白い反応をしてくれる。こんなは反応をする彼は、クラスで最も接しやすい人物と言えるかな。
「橘は容赦がないんだよ。俺の角刈りを某有名マンガの主人公になぞらえるくらいだぜ」
「ああ、両津勘○ね。愛嬌があっていいと思うけど」
普通に角刈り名だけどつけられるあだ名じゃあないね。多分それに付随する彼の性質があるんだろう。
「もうすぐ始業だけど、戻らないの」
そういうと、彼は席へと戻っていった。
昼休み、私は屋上にいた。
昼食スポットといっても冷え切った外で食べる生徒はいない。屋上故に、強い風が時折吹いて私の髪を弄んでいく。
少し寂しい気分だった。
こうして一人で昼食を食べること自体がなくなっていた。私が放課後に、わざと教室の花瓶を割ってからだった。アイツは、なんだかんだと言って、私についてくる。そして仕方なく昼ごはんも一緒に食べて。
「はあ、参ったなあ。本当にまいった」
思わず独り言ちてしまった。
夜行バスに乗ってまで、どうしてそこに行く必要があったんだろう。彼は少し用事があるとか、都会で遠い場所だからバスで行くとか、そんなことしか言わない。
多分、私には言えないことなんだろう。例えどれだけ仲が良くなろうとも、踏み入ってはいけないところもある。
屋上の扉がギイギイなって開いた。
こうしていつもなら啓二が姿を現すんだ。今回はある少女だった。
「やほー、またこんな寒い場所で昼ごはん食べてるんだ」
「那岐ちゃん、またクラスメイトのお誘いすっぽかしたんじゃないでしょうね」
那岐ちゃんは苦笑した。
「いやいや、それはないよね」
「そっか」
私は座っている木製のお洒落なベンチに座るように促した。那岐ちゃんが座ると、私は弁当の蓋を開けてお箸を取り出す。
今日のお弁当も穂波さんが作ってくれた。
「お、有紀さんのお弁当は豪華ですなあ」
「そんな大仰な風に言わなくても。……でも穂波さんに作ってもらってるから、私が作ってたのよりずっと豪華!」
私はにっとわらう。
穂波さんのお弁当。そのラインナップは、まず当たり前に白米が半分、クリームコロッケが三つに唐揚げが二つ、えっと卵焼きが二つに、……玉ねぎと鶏肉にトマトの煮込み、……最後に湯がいたブロッコリーと人参。
お弁当を渡してもらった時には気付かなかった。
これって結構量が多いんじゃ。
「気合入ってるなあ、穂波さん」
穂波さんがお弁当を作っている様子が思い浮かぶ。うっすら浮かんだその様子に私は嬉しさを感じた。
「よかったね」




